養親の条件
「改めて、みんなよろしくね。この4人で新しい家族ですわ」
ミキストリアはサロンに4人で落ち着くと明るく言った。祥子がサラとヒラリーを覗き込むようにして言った。
「2人とも遠くから着いたばっかりで疲れているでしょう?」
「はい。でもミキストリア様とショーコ様にお会いできるのを楽しみにしてました。姉妹ができるというのは聞いてなかったのでびっくりしてますけど……」
ミキストリアは笑って言った。
「サラ、お母さんって呼んでくれる? わたくしと祥子はあなたのお母さんなのですから」
「はい、わかりました、ミキストリアおかあさま」
祥子も笑っていた。
「わたしたちに子どもができるという話も急に決まったの。なので、ルーカス様もサラにお話する機会がなかったんだと思うわ。2人で仲良くしてくれるとうれしいわ」
「「はい」」
ミキストリアはサラとヒラリーを交互に見るようにして言った。
「後で、2人のお部屋に皆で行きましょう。準備はできているわ。今日の晩餐はごちそうよ。でも、大きい大人たちと一緒だと緊張しちゃうでしょ? なので今日はサラとヒラリーで一緒に食べてね。公爵家から来たミリアムも辺境伯家から来たハナもいるから安心よね。2人でいろいろお話するといいわ」
「明日からはなるべく一緒に食べるようにするわ」
「「はい」」
「それから、もうすぐわたくしの弟のダニエルの婚儀の式があるの」
「はい、聞いています」
「そう、偉いわね。2人にとっても叔父、叔母になるからよろしくね」
「「はい」」
サラ付きになったと侍女のリリアンがサロンに入ってきて目配せしてくる。祥子がミキストリアを見て、サラとヒラリーにむかって言う。
「お部屋の準備ができたようよ。まずはヒラリーの部屋から行ってみる?」
「お部屋も落ち着いたら可愛い感じに内装を変えたりするのもいいわね」
ミキストリアはそう言うと立ち上がってサラとヒラリーを案内するために祥子とサロンを出た。サラとヒラリーを案内しつつ、夕食の後に会いにくるけど遅くなるから先に寝てても構わないと伝え、それぞれの侍女に後を頼んだ。
〜〜〜
「おお、ミキストリア。子どもたちはどうかね?」
「お父様、先ほど部屋に案内して、今ごろは2人で楽しく食事していると思いますわ。長旅で疲れているはずですから早く休むように伝えましたわ」
「一緒に食べなくてよかったのかい?」
「ルーカス様、朝ともしかしたら昼も一緒にするかもしれませんが、これからいくらでも一緒に食べる機会はありますわ」
「そうか。よろしく頼むよ、ミキストリア、ショーコ嬢」
「もちろんですわ、ねぇ、祥子」
「はい。ルーカス様、今回は本当にありがとうございました」
「いやいや、こちらとしても助かっているからそうかしこまらないでくれ。養子という形だが、サラは私とエリーザの孫だ。サラを通じてだが、君たち2人は私達にとっても子どもになる。そういう風に考えてほしい」
「もったいないお言葉ですわ、ルーカス様」
「ルーカス様、ルキウス様。ミキストリアやショーコにもいろいろと聞きたいことがあるのではないかしら?」
「ソフィア、全くその通りだよ」
「ルーカス、腰を抜かさないようにな」
「ローレンス様、父はもう馬車で一回腰を抜かしているのでもう大丈夫かと」
「おいおいルキウス、その話はここでしなくてもいいだろう?」
「いえいえ、これでミキストリアもショーコ嬢も遠慮なく話せるというものですよ。なあミキストリア」
ミキストリアと祥子は王都の侯爵邸でした話をもう一度し、ヴァレリウス公爵家の人々を驚かせるのだった。
「いやはや、予め聞いていても驚きの話だな、ミキストリア、ショーコ嬢」
「父上、魔法師団に、いや公爵家では魔術師団ですが、そこに付属で魔法学校を建てるのはいいですね。ローレンス様、こちらでも始めさせてください」
「もちろんだよ、ルキウス君」
「ありがとうございます。もっとも教える先生を育てるのが先ですけどね。ミキストリア、何かいいアイディアはあるのかい?」
「わたくし達も試行錯誤なのです。今は子どもを教えていますが、属性持ちの大人が揃ったら、その方たちが学んでいく過程でいろいろな工夫をまとめるのがいいかとは思っていますわ」
「なるほど。そこに一緒にウチの人間が混ざった方が話が早いが、構わないかい?」
ミキストリアは、チラッとローレンスを見て笑顔で微かに頷くのを確認した。
「もちろん何の問題もありませんわ」
ルーカスが2秒ほど宙を見上げた後、ローレンスに向いて言う。
「うちから人送るのもいいが、マリウス辺境伯、デキウス侯爵に、ランバート侯爵家も黙ってはいないのではないか? ファビウス辺境伯も大人を送り込みたがるだろう」
「いっそ、ミキストリア様に全てお願いしてしまうのが良いのではないかしら?」
「エリーゼ? 何を言い出すんだい?」
「あなた、ローレンス様、よくよく考えてみると、各家に小さな魔法学校を作っても新しい発見は少ないのではないですか? それにミキストリア様のところで何か新しい成果が出た時に、また各家の教員が学び直しですわ」
「それは仕方ないことではないかな?」
「ですので、教員も生徒もミキストリア様の元で一緒に学び、研究し、成果を次の学びにつなげていくのです」
「しかし学校の卒業生は魔法師団に入るという縛りがあるぞ」
「ええ、そこは少し変えていただいて、それぞれの出身元の魔法師団に入るでもいいことにするのです」
「うーむ、その手もあるか」
ルーカスの懸念は全てエリーゼは考え済みの様であった。
「全員がウチの魔法師団に入ったりすると、各家は拙くありませんか?」
「フィリップ、それは出身元と違う家の魔法師団に入ったら授業料免除なしで良いと思うよ」
「なるほど、ルキウス、それもありか。ウチの出身者がどこかにいく懸念も減るな」
「ははは、ミキストリアの魔法を見て、それでも離れていくやつがいるとは思えんが、まぁそう言うことだ。逆にウチは年2回くらい領地に帰る旅費も負担して、卒業後に戻って来なかったらその旅費も返済させるようにしよう。全員ここに残られても困るからな」
「ミキ、なんか話が大きくなってきたけど、あなた大丈夫?」
祥子が小声で聞いてきた。ミキストリアは安心させるように祥子の手を握った。
ミキストリアは、ルキウス、ルーカスを順に見やると言った。
「ルーカス様、ルキウス様、一つお約束していただきたいことがございます」
「なんだね、ミキストリア」
ルーカスが笑顔で言うが目はやはり笑っていない。何を言い出すのか警戒していらっしゃるのかとミキストリアは思った。でも、言いたい事を言う、そう決めていた。
「サラもヒラリーも大きくなったら付属魔法学校に入れますし、その前からもできるかぎり伸ばしていきたいと思っております」
「ああ、ぜひそうしてくれ」
「サラは闇属性だけですが、もしかしたらわたくしよりも優秀な魔術師になるかもしれません。そうなっても帰ってこいと言わないでいただきたいのです」
「……」
「ルーカス様、ルキウス様がそう思ってはいないのは承知しておりますが、闇属性だからと養子に出され、優秀な魔術師に育ったから戻ってこいと言うような、まるで意志のない道具のような扱いはしたくないのです」
サロンは静まり返っていた。
「サラが自発的に公爵家に戻る事を希望するのでしたら構いません。もしくは、公爵家のお仕事をサラ ユリウス・マルキウスとしてお引き受けするとしたいのですわ」
ルキウスが難しい顔を向けてくる。
「もしどうしても公爵家に返して欲しいと言うようなことがあったら?」
「ルキウス!」
グレータが咎めるように言う。
「もしお約束いただけないようなら、魔術師としてではなく、人としての幸せを与えますわ」
「わははは。ミキストリア、そう怖い顔をするもんじゃないよ。今のは冗談だ。サラにもしそのような才能があるなら是非にも伸ばしてほしい。そして侯爵家のサラとして、ウチに手を貸してくれれば良いさ。それでいいですよね、父上」
「ああ、初めからそのつもりだ。ルキウス、今のはお前が悪い」
「ミキストリア、冗談が過ぎた」
「いえ、その点がはっきりすればよろしいのですわ。
お兄様、これはヒラリーにも当てはまりますわ。ファビウス辺境伯家にもよろしくお伝えくださいね」
「ああ、よくわかった。責任を持って伝えるよ」
「ありがとうございます、これできちんと指導できますわ」
「ミキストリア? 節度は守ってね、まだ3歳4歳よ」
グレータが冗談で場を和ませたのだった。
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