ダンジョン発見報告
バートとミキストリアが領都に戻った翌日、バートとミキストリアは侯爵の執務室にいた。
「バート、大義であったな。コレのお守りも大変であったろう?」
「お館様、ミキストリア様には助けられっぱなし、教わりっぱなしで、大変だなどとんでもありません。逆に討伐がこれほどスムーズで楽なのかとエルウィンとも話しておりました」
「ふむ、そうか? まぁ遠征のことは昨晩ミキストリアからざっと聞いたが、バートからも聞こう」
(団長が話をしている間は久しぶりにゆっくりお茶を楽しめそうですわ)
のんきにお茶を口にしていたミキストリアだったが、バートがロックバードの話をいきなり始めたところでむせてしまう。
「ケホッ、コホッ、た、大変失礼しました」
「ミキストリア? ロックバードの話は昨晩は無かったな? 回復だけをするのではなかったかな?」
「いえ、お父様、それは……」
「お館様、お言葉ですがミキストリア様のお陰で誰一人負傷もなく遠征を続けることができたのです。エルウィンともどもミキストリア様には感謝しております」
バートはローレンスに向かって頭を下げた。
「バート、そなたまでそれか? しかも、ロックバードと遭遇したとは早馬にあったが、ミキストリアが倒したとは、初耳だな」
「はっ、その責は私とエルウィンが」
「まぁ良い。ダンジョン発見と確保の功と比べれば、責などないに等しいからな」
「有難きご厚情感謝いたします」
バートはもう一度頭を下げた。
「良い良い。してダンジョンだ。そなたとエルウィンの見立てではどうか?」
「はっ。遭遇した魔物からすると浅い階層はゴブリン、オーク、リザードマンなど、数にもよりますが準備さえして居れば比較的組みしやすい相手で、騎士魔術師や冒険者などが鍛錬したり、日々の糧を得るのに良いのではないかと想像します」
「うむ、入ってみなければわからぬが、それが一番硬い線だな」
「はい。件のロックバードもあの付近での目撃例は過去になくダンジョン産である可能性もあるのかと」
「そうであるな。となると……」
「ええ、最初の階層ボスはロックバードかもしれません」
「手強いな」
「はい」
「それを瞬殺とは大概であるが……」
ローレンスが呆れた顔を向けてくる。ミキストリアは視線を外してお茶を口にした。
「お館様、ダンジョンの扱いはどうなりますでしょうか?」
「それについては国王への報告は出した。占有せず、正しく扱うという条件で我が家管理となるはずだ。場合によっては我が家である程度間引きする必要があるが、冒険者への開放と運用は冒険者ギルドに任せることになる」
「そうなりますと早急に街と街道が必要ですな。街道はナカスチャーカから伸ばすのが良いと存じます」
「隣のラヴラ侯爵領への道も作ることになろうな……」
「そうですな……」
「お父様、ダンジョンからナカスチャーカ、領都、そして王都まではなるべく早く石造りの街道にすべきかと」
「土魔法でということだな?」
「はい。今の土魔法を研究している花組がやり方の基本的な部分を考えますので実際の敷設は、魔法LVの高い人にやってもらうのが効率的ですわ」
「生産ギルドかのう」
「お館様、魔法師団を臨時に再編して土魔法専門部隊を作り主導させましょう。生産ギルドだけでなく、冒険者ギルドや商人ギルドにも声をかけてみては? 新しい仕事ですし、やりたい者が出てくるかもしれません」
「うむ、それはいい考えであるな」
「お館様。もう一つは、魔法師団の増強です」
「うむ」
「サーチと収納が闇属性であると聞いて、ひっくり返りそうになりました」
「うむ、そなたの気持ちはよくわかるぞ」
「はい、これを使わない手はありません。闇属性が使える人材を早急に確保し、訓練方法を定め、魔法師団で有効活用すべきと。これについてもミキストリア様が案をお持ちです」
「ミキストリア、どういうものか?」
「魔法師団の付属の魔法学校を立ち上げたらと思っています」
「付属?」
「魔法師団に入らない人も教育するのです。そのために魔法師団への入団を強制しない付属の学校とするのです。
魔法師団を目指し、実際に勤務するものは費用は免除。魔法師団を目指さない者、目指したが実際には勤務しない者は費用を取るのです」
「なるほど、悪くない話だの。どうだバート?」
「悪くないと思います。懸念を言うなら魔法師団に入らぬものに教えてしまっても良いのかという事ですね」
「今回ミキストリアは派手に暴れたのであろう?」
「お父様! 暴れてなど!」
「ロックバード以外にも、冒険者ギルドでオークとリザードマンをつごう15匹ほど出しましたな」
バートが遠い目をする。いやあれば団長も同意してのことでしょう、とミキストリアは喉まで出かかった。
「それよ。人の口に戸は立てられん。しかもミキストリアの新しい魔法は強力だ。それを学ぶ方法があるとなれば、侯爵家でその秘密を独占するのは危険すぎるのだ。王家はむろん、主要な貴族には教えざるを得ん」
「御意」
「まぁ他家には魔法学校がうまくいってからでよかろうがな。王家からは人を出すと言ってくるかもしれん」
「あり得ますな」
「それにバートよ、魔法師団に入らぬ気で学校に来た若者を勧誘するのはそなたの仕事ぞ? 魔法師団を大いに売り込んでその気にさせれば良いのだ」
「は、はい。そうですな」
バート団長、仕事増えましたわね、とのんきに考えながらミキストリアは紅茶を口にした。少し冷えてきていた。隅で控えていた侍女に目線を送るとちょうどお湯の手配を終えていたところであった。我が家の使用人は相変わらず優秀ですわ、とミキストリアは密かに感心した。
「うむ。街に街道、魔法学校。聖と闇、土を集める、と。ダンジョンの定期的な間引きもせねばな。うむ、ミキストリアが帰ってきてからやることが一気に増えたものよな」
ローレンスが笑いを含んだ声で言う。
「お父様、全てわたくしのせいにしないでくださいませ」
「わははは。ミキストリア、仕事が増えて領地が栄える。いいこと尽くめよ。誇って良いぞ」
「なぜかそうは聞こえないのですわ」
ダンジョン発見を機に、ミキストリアのやることも一気に広がっていくのであった。
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