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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
4章 侯爵領編
49/135

シェヴァニーでの作戦会議

Fantagy Map Generator で作った地図を入れてみました


シェヴァニーまでは半日の距離だが、ミキストリアが予想した通り、たびたび魔物と遭遇した。魔物はほとんどオークで、ミキストリアは騎士や魔術師が戦闘を終えるたびに、オークを収納していった。火魔法の攻撃を受けて丸焦げになったものもあったが街道に放置することも出来ず、街道横に埋めるための穴を掘ろうとしていた騎士達を見てミキストリアが止めたのだった。最初は普通に驚いていた騎士や魔術師も、10回目の戦闘後、40匹を超えるオークを収納する頃には死んだ魚のような目でミキストリアを見ていた。


挿絵(By みてみん)


そんなこんなで、シェヴァニーの街に着いたのは陽も落ちる寸前になっていた。シェヴァニーは街の北から西にかけて王国最大の湖、キアイスナ湖に接しており、湖岸近くのマーケットプラザ、その後ろに控える侯爵家別邸を中心に広がる小さな町である。小隊一つは別邸に滞在し警護、残る小隊2つは街道沿いに野営しつつ警護することになった。街が小さいこと、このあたりで魔物を見かけることがめったにないことから外壁は作られていない。小型の魔物の侵入を防ぐ柵があるだけである。


ミキストリアは、冒険者ギルドに立ち寄り状態の良いオークを5匹出すと解体を依頼した。肉を別邸に100kg、2つの小隊にそれそれ50kgを届けてもらう。肉以外の部分と残りのオークは解体料金と手土産として渡した。



翌日エルウィンとバートから、この日は情報収集と作戦立案をすると聞いたミキストリアは、月組、星組の弟子たちと今後の方針を話し合うためにサロンに集まった。


「皆、昨日はよく寝れたかしら? 疲れていない?」

「侯爵家のベッドはさすがよね。ぐっすり寝られたわ」


祥子が戯けたように言ってみんなを笑わせた。それぞれの街で最高級の宿の最高級の部屋をあてがってもらってはいたが、侯爵家のものとは比べるまでもなかった。祥子の言葉に、子ども達も頷いた。


ミキストリアは笑顔でそれぞれの顔を見回した。


「そう。よかったわ。これから騎士と魔術師は、魔物が出る原因を探しておそらく森へ入ることになるわ。なので、皆はここで残って今までの練習の続きをしてね」

「「「「……はい」」」」


一緒に参加する力量がないのは自分でもわかるのか、残念そうにしながらの返事であった。


「祥子もね」

「え、ミキ! わたしは」

「祥子。これだけは譲れないですわ」


ミキストリアは祥子が反論するのはわかっていたので、祥子の台詞に被せて続けた。


「ここから先は街道もない森の中よ。戦う力がない祥子は、いえ、祥子に限ったことではなくて、戦い護る力がなければ入れない」

「くっ……」

「祥子には子ども達をお願いしたいのです。この街は知っての通り外壁がありませんわ。普段はそれで何でもなくても、この状況で屋敷の外に出るのは危険ですわ。星組は使用人や警護の騎士達をヒールして練習するのが良いでしょう。月組は引き続きサーチと収納ですわね。それと勉強。それを祥子にお願いしたいです」

「くぅ、わかったわよ。ミキはどうするの?」

「わたくしは魔術師。騎士と任務に参りますわ」

「ミキならそう言うと思ったけど。イージスの練習もしないとだろうから止めないけど、絶対無事に帰ってきてよね。約束して」

「ええ、約束しますわ」


ミキストリアは笑顔を向けた。もし万一、魔物が街に近づいてきた場合の対応なども踏まえて打合せをした。


その話が終わると、ミキストリアは騎士に先触れを頼み、騎士団の詰所の執務室へ団長を訪ねた。先触れを侍女でなく騎士に頼むのは任務の一環としての行動だからである。


「失礼します」

「ミキストリア様、おかけください」


ミキストリアが部屋に入ると、エルウィンとバートは立ち上がり、ミキストリアを招き入れて椅子を勧めた。


「ミキストリア様、作戦に参加するおつもりは変わりませんか?」

「ええ、お父様は回復だけとおっしゃっていましたが、お二人はわたくしの力をご存知ですから、必要なら回復以外も」

「そうおっしゃっていただけると助かります。バートとも話し合っておったのですが、ミキストリア様のサーチは強力なのでお願いしたいと考えておりました」

「ええ、問題ありませんわ」

「例の攻撃魔法については、前にも話した通り奥の手で考えてます」

「ええ、当面そうしていただくのがよろしいですわね」

「ありがとうございます。現状ですが、収集した情報を整理しますと街の西側の森の奥に何か原因になるようなものがあるようだと考えています」

「そうですか……」


ミキストリアはそう言うと左手を顎に当てて目線を落とし考え込んだ。


(確かに西側なのは間違いないですわ。ただ西だけかと言うとそうでもない……)


「ミキストリア様、どうかされましたか?」


ミキストリアは視線を上げ、エルウィンとバートを順に見た。


「エルウィン団長、バート団長、確かに魔物は西から来ていますが、それだけではないとも思うのです」

「ミキストリア様は何か情報をお持ちですかな?」

「周囲10mをサーチできる能力があれば、力の使い方を変えることで300m先をサーチできるのです。うまくすればもっと」

「なんですって!!」

「そんな話は聞いたこともないですぞ」

「あちらの世界、祥子がいた世界ですが、いろいろな学問が進んでいるのです。その一つが算術で、それによると身の回り10mの範囲の面積は、幅1mの長い四角にすると300m程の長さになるという計算ができるのだそうです」

「な、なんと……」

「つまり、サーチを身の回りではなく、狭い幅で遠くまでサーチするのです。そうすれば例えばですが300m先までわかるのです」

「それがミキストリア様のサーチの秘密ですか……」

「円陣を2列縦隊にすれば同じ人数で広い範囲に人を送り込めるということと同じというのはわかりますが」


魔術師であるバートは納得がいったようだった。エルウィンはまだ食いついてくる。


「ですが、ミキストリア様、300m先とは驚きですが、逆に1m幅でしかわからない、ということですよね」

「エルウィン、その通りだが、何もサーチを一回で終わる必要もなかろう。探す方向を変えてサーチすればよいのだ」

「お、おう、そうだな」

「ええ、サーチ中にこう、ぐるっと方向を変えるのでもいいのですわ」


ミキストリアは右手を左前に伸ばし、右に振るようにしながら言った。


「あ、そういうこともできたら便利ですな……」


バートはサーチ発動中に向きを変えるところまでは思いついていなかったようだった。バートをはじめ身の回りを円でサーチすることに慣れている魔術師はサーチに指向性を持たせるという発想がないのでやむを得ない。


「お気づきと思いますが、幅1mで300m、10㎝でやれば3km先がわかるということです」

「ミキストリア様はそこまでやってらっしゃるので?」

「いえ、私は50cmほどにしています。あまり幅を狭くすると感度が悪くなりますし、わたくしも計算通りの距離にまでサーチを伸ばすのはまだできないのですわ」

「な、なるほど……」

「その方法で調べたところ、西側の湖岸沿いにも魔物が多数いるのですが、それよりも南西に多くの魔物がいるようです」

「数はわかりますか?」

「遠すぎて沢山いるということまでしか」

「いえ、西だけでないことがわかっただけでも大助かりです」


目線を落として考え込んでいたエルウィンが顔を上げた。


「中隊を率いてきましたが、全部を投入するわけにはいきません」

「ああ、そうだな」

「いざというときのために小隊を1つ街に残します」

「すると討伐に行くのは小隊2つ、騎士と魔術師で136だ」

「ちょっとこころもとない数ではありますな」

「それに、わたくしたちが南西に向かうことで、魔物が押し出されて街道に出てしまう可能性もあります」

「ミキストリア様のおっしゃる通りだ」

「はい、ですので、お館様にご報告し、大隊の残りである、中隊をあと2つ送ってもらうことにします」


エルウィンは机の上に置いた侯爵領の地図を棒で指しながら続けた。


「1つの中隊はナクスチャーカからシェヴァニーにかけての街道を警備、押し出された魔物に対応。もう1中隊はナクスチャーカから北西方向に魔物を追う形で進撃し、シェヴァニーから西南へ向かう我々と途中合流する」

「我々の出発は中隊の出発を待つのか?」

「いや、我々は準備ができ次第、明日にでも出よう。魔物が予想よりも少なければ、押し出される魔物も残る小隊や街の冒険者でなんとかなるだろう。予想よりも多ければ一旦シェヴァニーないし、ナクスチャーカに戻り、街道で各個撃破しつつ討伐に必要な部隊の準備をして再戦だ」



読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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