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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
4章 侯爵領編
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ナクスチャーカの奇跡


ラーキリアは、人口17000人ほどの外壁で囲まれた街である。


流石に200人以上のミキストリア達一行全てが入れる宿はなく、いくつかに分散して宿を取った。ミキストリアは、団長達と同じ宿である。


食事はオーク肉を使ったものだった。ミキストリアが収納に入れて運んだオークを冒険者ギルドで解体してもらったものである。1匹はそのまま解体費用と手土産としてギルドに残し、残り2匹分を宿に配ってもらっていた。ミキストリア達だけでは消費しきれないのでその分は他で使っていいとしている。


月組、星組子ども達の世話を頼まれたサマンサが、皆をひき連れて食堂を出ていく。それを見送ったエルウィンがエールの入ったコップをテーブルに置いてミキストリアに目を向けた。


「さてミキストリア様、色々詳しく話していただきますよ」

「私も聞きたいことが多々ございます」


バートもワインの入ったコップを手に迫ってくる。


「え、ええ、どんなことが聞きたいのかしら」

「まずはロックバードに使った魔法ですね。あれは何ですか? 見たことも聞いたこともありません」

「そうです。それです」

「あ、あれね……」


ミキストリアは横に座っている祥子に視線を向けると、祥子は肩をすくめてエルウィンに向きなおる。


「エルウィン様、ミキがいなくなっていた間の話は聞いていると思いますが、それに関係したことなのです。どこまで話すかはミキの考え次第だと思いますが、この場で話すのは少なくとも賛成しません。明日の道中か、少なくとも人の耳のないところで話すのがよいのではないでしょうか」

「それはそうですな。ショーコ殿の言う通り、それは明日にしましょうか」


バートは納得したようだったが、エルウィンは引き下がらない。


「それでもいいのですが、あの攻撃魔法はいざというときには作戦の一部として考えてよろしいですかな?」

「それはかまいませんわ。ですが、まだ力加減がわかっていないのです。なので、あの程度の威力の物を1回と思っていただくほうがいいですわ。あの威力でどこまで通用するかということももわかっていませんし」

「なるほど」

「では当初の予定通り、中隊の戦力を基本にし、いざというときにミキストリア様を頼るということにしますか」

「それがいいでしょうな」

「ところで、ミキストリア様はサーチ魔法をずっと発動していたのですか?」

「移動中は子ども達の安全もありますし、念のためと広めにサーチしていましたわ」

「あの広範囲を……」

「今回は大人数ですし、小さな脅威は無視して広く大きなものだけを探すようにすればMP消費も少ないのですわ」

「サーチでそうそう器用な使い方はできないとおもうのですが」

「訓練あるのみですわね」

「……はぁ、精進いたします」


バートは少し落ち込んだようだった。


「今日のことはお館様にも報告しています。シェヴァニーの魔物も異常ですが、領都近くの街道で魔物が出たとあっては無視できません。領都に残った部隊を出して周辺を調査することになると思います」

「そうね、そうするほうがよろしいですわね」

「我々もこの先、似たようなことがあるかもしれません。気を引き締めていきましょう」

「ええ」


(これって祥子のいうフラグというものではありませんの?)


翌日も次の目的地であるナクスチャーカまで50km 近い行程があるため、早朝に出発した。朝食も移動中に取るのである。幸いなことに昼食後もミキストリアのサーチに魔物がかかるというようなことはなかった。道はナクスチャーカへ向けて降っているので街がよく見える。


この日も午後になって街道の左側の森からゴブリンが散発的に出てきたが、侯爵家の騎士と魔術師で対応したのだった。


エルウィンは、ここまで2日間速いペースで来れたことと、シェヴァニーからの追加の急報がないことから、アップル隊を先行させ、ブラボー隊、チェリー隊はナクスチャーカで2泊すると決めた。


ミキストリアはこの1日を利用して、星組メンバーのリディ、レイチェル、メーシャ、アルベルタを連れて総主教会を訪れ、シスターと教会孤児院の子ども達にヒールをかけて回った。シスターも孤児達も大きな怪我も病気もなかったので、リディ達がヒールをかけた。ミキストリアは孤児2人にお願いして、街を案内してもらい、また、ミキストリアが来たことを触れ回ってもらった。


「ミキストリア様が来てくれたよー。重い病気、重い怪我の人はミキストリア様が治してくれるよー。今すぐ知らせてねー


近くの家から転がるように飛び出てきた女性が、祈るように手を握り締めてミキストリアを見上げた。


「ミ、ミキストリア様! 今の子どもが言ったことは本当でしょうか?」

「ええ、どなたか具合が悪いの?」

「うちの亭主がこの前、脚を魔物にやられて治んないんです、うっ、うぅ」

「まぁ、案内していただける?」

「え、ええ、こちらです」



「お前、急に外に出てどうした」

「お前さん、まずは挨拶をし! ミキストリア様だよ」

「ミキストリア様だって? え、あ、これは失礼しました。なんでまたミキストリア様が!?」

「ごきげんよう。ちょっと怪我を見せてくださいませ」

「え、またどうしてですか? 痛えぇ! 何しやがる!」


男は話がわからず戸惑っていたが、痺れを切らした妻が包帯を無理に外したことで悲鳴を上げた。暴れる男は妻と控えていたミキストリアの護衛に素早く押さえつけられた。


(魔物の爪で引き裂かれたようですね。体の内部は祥子の世界の図鑑で見たものと同じですわね。筋肉再生、神経修復、皮膚の再生で大丈夫そうですわね)


「リディ、レイチェル、メーシャ、アルベルタ。この方の怪我をよく見ましたね?」

「「「「はい」」」」

「では、<ヒール>」


ミキストリアが男の脚に手を翳してヒールを発動すると、白い光が男の脚を覆い、ゆっくりと消えていった。傷はきれいに治っていた。呆気にとられる夫婦を前に、ミキストリアは少ないMPで思った通りの回復ができたことに内心では大喜びであった。高性能版ヒールの初めての実践だった。ミキストリアは、まだ戸惑っている夫婦に笑顔を向けた。


「しばらくは栄養のあるものを食べるのがいいでしょう。無理も禁物ですわ。では、ごきげんよう」

「ミ、ミキストリア様、お待ちください!」

「?」

「どのようにお礼をしたらいいか……、あの、……」

「いいのよ、わたくしがしたくてしたことよ」


(初めてのこの魔法を使ったとは言えませんし)


「え、ですが」

「これからも侯爵領のために頑張ってくれればそれで良いのですわ」

「は、はい!! ありがとうございました、ミキストリア様!!」


最初のこの件がきっかけになり、大声で触れながら歩く孤児を追ってミキストリアが通りに入ると、通りの全ての家から人が出てミキストリアを呼んだり感謝の声を伝えたりするのだった。


ミキストリアは次々と通りを回り、100人ちかい怪我人、病人を治していった。リディ達のMPに余裕がある時に出くわした軽傷者は幸運にもヒールをかけてもらえたのだった。


このことはミキストリアと侯爵家の名声を大いに高めることになった。ミキストリアに治してもらった家族が、聖ミキストリアと呼び始めたのである。



ミキストリア ユリウス・マルキウス

種族: 人族

年齢: 20 (=24=)

職業:

聖人候補(ナクスチャーカ推薦)[new]

侯爵家魔法師団 魔法研究分隊 分隊長

状態: 祥子の同性パートナー

LV: 37 [up]

MLV: 48 [up]

HP: 784/784

MP: 2160/2160

腕力 72 / 体力 82

知力 146 / 精神 156

速度 72 / 器用 138

幸運 100

スキル:

 聖魔法 III [up]、闇魔法 II、雷魔法 II [up]

 魔法多重起動

 術式改造

パッシブスキル

 魅了

 三角関数

 人体構造 [new]

属性:

 女神ユグラドルの導き(中)


ミキストリアのステータスが変わっていた。



読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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