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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
3章 帰還編
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謁見


国王との謁見は、ユリウス・マルキウス侯爵の強い要望で、私的なお茶会の形式となった。祥子が慣れていないという理由である。


私的な会とする事で貴族の取り巻きを排除することはできたが、王家がこぞって参加することになった。


侯爵とフィリップにエスコートされたミキストリアと祥子が王城のサロンに案内されると、立ち会いを許されたカシウス公爵とヴァレリウス公爵に加えて、エリック王太子、カトリア王太子妃、アーサー第二王子、クロエ第二王子妃が待っていた。3公爵の残り1つ、ガルシア公爵の姿が無いとこに気付いたが、ミキストリアは深く気に留めなかった。これからの事で頭がいっぱいだったのであった。


予定時間前の到着であったが、侯爵は定型の遅参の詫びを言い、ミキストリアと祥子の紹介をした。ミキストリアは既にこれら王族の面々、両公爵とは面識があるが、帰ってきた旨の挨拶である。


それから間も無く、従者がドアを開けていった。


「国王陛下、王妃陛下、第二王妃様であらせられます」


全員が起立し頭を下げて待つ中、鷹揚な様子でテーブルに近づきながら国王は言った。


「皆も頭を上げよ。今日は私的な会である。堅苦しいことは抜きだ」


国王の後ろのに付いていた王妃、第二王妃がそれぞれ国王の左右に並んで座る。


「ミキストリア、久しいな。無事に戻ったと聞いて何よりである」

「久方ぶりでございます、国王陛下におかれましては……」

「いや良い、ミキストリア。堅苦しくて叶わぬ」

「お心のままに。両陛下、第二王妃様、祥子を紹介させていただきたく」

「うむ」

「わたくしの不在は異世界に飛ばされた故とは、父より報告差し上げた通りですが、その異世界で世話になったわたくしの恩人がこちらのショーコ カツラギです」

「両陛下、第二王妃様、初めてお目にかかります、ショーコ カツラギと申します。なんの偶然かわたくしもこちらに飛ばされましたが、こうして両陛下、第二王妃様にお目にかかれる事、身に余る光栄でございます」

「うむ。皆、まずは楽にするが良い」


ミキストリアたちは王太子夫妻、第二王太子夫妻が着席するのを待って席に着いた。女官たちがお茶を用意して回る。


「侯爵からの報告は目を通した。しかし異世界とはな。侯爵が腰を抜かしたというのも頷ける」

「お見苦しい限りで」

「4年も失っていた娘とあればな。そしてその今日の出立ちは見慣れぬな」

「はい、陛下。異世界では盛大なパーティの時のみドレスを着るそうですが、その際もこの様な広がらないデザインが多いそうでございます。今日は折角ですので、それに近いものを作らせて参りました」

「少し奇抜に過ぎるのではないかしら、ミキストリア?」

「王妃陛下、私的な会という事で異世界風をお見せする事を優先してしまいました。お目汚し、申し訳ございません」


王妃の軽い嫌がらせをミキストリアは受けてたった。そこにファッションには興味がなさげな様子で王太子が割り込む。


「それよりミキストリア、そなた、宮廷魔法師団を退団したそうだな。そなたの回復魔術師としての名は高いと聞く。復帰はせぬのか?」


王太子エリックは、王権継承の一環として、荒事の現場、具体的には、王都騎士団と宮廷魔法師団の統括を任されている。エリックは中立派、つまりは場合によっては力に訴える事を優先するということであり、宮廷魔法師団の戦力は大きくて困ることはない。また貿易派である侯爵家のミキストリアを取り込んで自分の駒として動かすという目論みもあるようであった。


ミキストリアが王都入場の前に単独で魔物退治をした話は、王太子の耳に入っていなかったか王太子は重要視しなかったのかミキストリアには判断つかなかったが、ただの回復魔術師として見られていただけというのは逆に都合が良かった。回復も攻撃もできるとあったら簡単には手放してもらえないだろうからである。


「王太子殿下、あちらの世界では鍛錬も実践もないままにおりましたので、まずは元の様に戻ることが第一と考えております。1年近くもありましたので復帰云々を考えるのはその後かと。それがこちらでは4年近いと知って驚きましたが」


ミキストリアは王太子のフェイントも躱しつつ、ついでに話題も逸らした。


貿易派であるヴァレリウス公爵家の出身である第二王妃スザンヌがそれに乗った。


「あちらでの1年がこちらの4年とは驚きですこと。ミキストリア、それで何か不都合が起きたりするのですか?」


ミキストリアは思惑通りに話が逸れたことを内心感謝しながら、スザンヌに笑顔を向けた。


「スザンヌ第二王妃様、まだ日も浅いのでどのような影響があるのかは、わたくしにもわかっておりません。今のところの不都合と言えば、弟のダニエルが自分のほうが年上だと偉そうにしてくることだけですわ」


ミキストリアが冗談めかして言うと、場の雰囲気は少し緩んだものになった。


「ふむ、1年が4年とは面妖よの。して、ショーコ嬢、そなたの世界では魔法がなく、代わりに科学なるものがあると聞いた。それはどういうものなのだろうか?」


国王リチャードは、ミキストリアに限らずそもそも女性が荒事の現場で働くとは思っていなかったらしく、ミキストリアの復帰にはこだわらず、祥子に話を振る。


「はい、私の世界には魔法はありません、お話の、空想の物語の中ではよく出てくるのですが、現実にはありませんので、ミキストリアの魔法を初めて見たときには大変驚きました。

科学ですが、科学は物事の隠れた真実を探求し、利用する学問です。例えば、物質は全て「粒」でできているのですが、金と銀、鉄の粒は重さが違うというようなことです」

「ほほぅ、粒とな。それで何がわかるというのかな?」

「例えばですが」


祥子はエウレカで有名なアルキメデスの原理にまつわる話をした。もちろん、理解している範囲で簡単に、である。


「金と銀などそれぞれの金属の粒は重さが違います。純金に混ぜ物をすると当然重くなりますが、その混ぜ物を元と同じ重さに削っても大きさが違うのです。ですので、同じ重さでも大きさを計ることで純金なのか、混ぜ物がされているのかが分かるのです」


これはミキストリアと祥子が相談して選んだ話題である。王族にも身近な問題でもあるからだ。


「ほぅ。だが、大きさを計るのは容易ではないぞ?」

「はい、陛下。その通りでございます。器にぎりぎりまで水をいれて沈めるのです。水が器から零れますが、その零れた水を比べて同じ重さの純金を沈めた場合と同じであれば純金、多かったり少なかったりすれば何かが混ざっているということでございます」


サロンは静まり返った。


誰かがエウレカって言うかと思ってたんだけど、とは後にミキストリアが聞いた祥子の感想である。ミキストリアはそれを聞いても何のことか判らなかったのであるが。


「それは興味深い事であるな。あとで技官に詳しく話をしてもらえるか?」

「お心のままに」


そろそろ頃合いだった。ユリウス・マルキウス侯爵は、居住まいを正すと国王に言った。


「国王陛下。今のショーコ嬢の知識に関して、ご注進がございます」



~~~



「何とか、思った通りの方向になったな」


王宮からの帰りの馬車で、侯爵が胸をなでおろして言った。話が途中で政治向きになったため、第二王妃の声で女性陣は場を変えてファッションの話に興じていた。王妃は残って政治の話に加わるそぶりを見せたのだが、それを嫌った王太子の、流行に乗り遅れるかもしれないというやんわりとした拒絶で断念したのだった。


ミキストリアと祥子は、日本のファッションの様子を語り、場を盛り上げた。パンツルックがファッションとして取り入れられているというのは皆を驚かせた。これはすぐには受け入れられそうにはなかったが。


政治向きの話はヴァレリウス公爵とユリウス・マルキウス侯爵の筋書きの通りに決まった。侯爵は、新たな仲間を作る、今の派閥は関係ないし存続させると言ったのだが、実質的に、女神派を次の主流派として再構築する動きだった。そのことは国王にもカシウス公爵にも悟られていたが、国王は、王家からの人を受け入れる事を条件に侯爵の案を認めた。


まずまずは、順調な滑り出しと言えた。


読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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