兄との話2
「攻撃魔法……」
マルティナが呟くように言った。
「大きな声を出してすまない。ミキストリアは、攻撃魔法のない聖属性とそもそも魔法がない闇属性だったよね。どこから攻撃魔法が出てくるのかな?」
「話すと長いのですが……」
「わたしから説明しましょうか?」
「祥子、お願い。簡単にでいいですわ」
「はい」
ミキストリアは助け舟を出した祥子に頼った。祥子と七海のアイディアを元にしたものがほとんどだったからである。
祥子は、簡単に、あちらの世界では魔法がないこと、ないからこそ空想上のものとして色々な魔法が考えられていること、その幾つかをミキストリアが試したことを話した。
「わたしも友人も調子に乗って勝手なことを言ってたのですが、ミキはそれを頑張って挑戦して、攻撃魔法といえる新魔法を身に付けたんです」
「それは、何重もの意味でミキストリアの恩人だね」
「ええ、お兄様、その通りですわ」
「そういえば、王都近くの街道に魔物が出て、衛兵が調査していると噂で聞いたが、まさかそれにも関係しているのかな」
「ええ、わたくしたちですわ」
「いえ、わたしは何もしてません。全て、ミキが対処しました」
「祥子のアドバイス通りにしたらうまく行ったのですわ」
「どんな魔法を使ったか教えてもらえるかい?」
「防御魔法のイージスと攻撃魔法のライトニングですわ」
ミキストリアはイージスとライトニングを簡単に説明した。
「いやいや、開いた口が塞がらないとは、こういうことだね。複合魔法に新属性とはね」
「お義父様が聞いたら腰を抜かしそうですわね」
マルティナが聞いた話の衝撃を和らげたいとばかりに冗談めかして言った。
「ははは、全くだよ。驚くなというのも無理な話だけどね。どう伝えるかはあとで考えよう。父上が来る前にこの話を聞けてよかったよ」
「本当に……」
「お兄様」
「何かな?」
「祥子のことはどうお考えですの?」
「今までの話でそれが一番頭が痛いことだね。ショーコ嬢の希望をまずは聞こう」
「わたしはミキの助けになるために来ました。そのためなら微力を尽くしますが、ミキのためにならないことはお断りするつもりです」
「良くわかった。それは非常にありがたいが難問でもある。それはわかってくれ」
「はい」
「王への報告は必要だ。おそらく謁見を命じられるだろう」
「そうですわね」
フィリップの言葉にマルティナも同意した。
「その後、王都にいれば自由は利かない。王国にまだ慣れないとか、王都に慣れないなどの理由をつけて領地に引っ込むのがいいだろうね」
「それがいいと思いますわ」
「それでお願いします」
「2人は厳重に守る必要があるから、ヴァレリウス公爵家とマリウス辺境伯家の力も借りよう。そうすれば細かい報告も要らなくなる。どうせ手のものを入れてくるだろうしね。ヴァレリウス公爵家に身を寄せるというようなことも考えられるしね。この方向で父上とも相談しよう」
「ありがとうございます」
「お手数をおかけします」
祥子がそのようにいうと、フィリップはひらひらと手を振って返した。
「いや、これはショーコ嬢への感謝でもある。それに2人の行いが女神の導きだというならバックアップは当然だよ」
「侯爵家のためにも、ですわね」
ミキストリアの明け透けな台詞にフィリップは眉を顰めた。
「ミキストリア、わかりきった事を一々口にするのは感心しないな。無粋だぞ?」
その後フィリップは、祥子のためにミキストリアと同額の予算をつけたと伝えて祥子を慌てさせた。
「大変ありがたいですが、そこまでしていただくわけには行きません」
「ショーコ嬢も、あちらでミキストリアにお金を融通してくれたというじゃないか。同じことをしているのだよ」
「ですが、金額も大きすぎます!」
「祥子、あの時のわたしの気持ちがようやくわかったようね」
「ミキ! あれとこれとは違うでしょう!?」
「ははは。多いというなら必要なだけ使えば良いのではないかな? 残りは必要になるときのために残せばいい。そういえば、そろそろ仕立て屋と宝石屋が来る頃だ。先程も話が出たが、王との謁見は避けられないし、どこかでヴァレリウス公爵家やマリウス辺境伯への紹介も必要だ。それを踏まえてドレスと普段着を用意するのがいいかな」
「わかりましたわ」
「ドレス……」
「祥子、わたくしも一緒だからそんなふうに思わないで」
王や公爵、辺境伯との会合を実感したのか、魂を飛ばしたかのような表情になった祥子をミキストリアは必死に宥めた。
「ショーコ嬢は、異世界風なデザインにするのもよろしいですわね」
「はぁ……」
マルティナが助け舟を出したが祥子は魂が抜けたままのようだった。
仕立て屋と宝石屋との祥子は心ここに在らずと言った様子で、ミキストリアは心配もしたが、自分があちらでも同じような状況だったのを思い出し、祥子の分のドレスと普段着を決めて行った。マルティナの助け舟に乗ってドレスは異世界風にマーメイドラインとAライン、細身のプリンセスラインとした。仕立て屋との話に同席した侍女長初めて多くの侍女と仕立て屋の主が眉を顰めたが、仕立て屋の若いデザイナーはミキストリアの斬新な発想に驚愕し、狂喜して賛成したのでミキストリアはそのまま押し切った。
「お嬢様!! この様な斬新な素晴らしいデザインは見たことがありません。わたくしデザイナーとしての発想がまだまだだったと思い知りました!」
「そ、そう、ではこれでお願いね。あ、コルセットは緩くするからそのつもりで作って頂戴」
「緩くでよろしいのですか?」
「それでも素敵な仕上がりにするのがあなたのお仕事ですわよ」
「は、はい、承知しました」
「このプリンセスラインは、わたくしたちが着た後なら他で使ってもいいわ。残り2つは、しばらくの間は同じデザインを持ってきた人以外はダメよ」
「承知いたしました」
ミキストリアは侍女にも手伝ってもらい普段着とするワンピースを頼んで行った。
「これが普段着……。立派なドレスだわ」
それを見た祥子がつぶやいたが、取り合う人はいなかった。
(わたくしもユニク〇やザ〇では傍からはこのようになっていたということですわ。あの時の祥子のようにテキパキと決めてしまいましょう)
ミキストリアも、なるべく簡素にただし貧相にならない様にと、侍女にいうのが精一杯だった。
ドレスにあう宝石を選ぶときも、祥子は抜け殻のようだった。多数の宝石が並ぶのは日本のブティックでも同じである。違うのは、宝石屋とミキストリア、侍女が次々と宝石を取り上げ、祥子に合わせてみては感想を言い、そのうちの半数近くを「お買い上げ」のトレーに乗せていくことだった。
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