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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
3章 帰還編
31/135

王都への道


「そういえば、ミキは女神様に何かもらったの?」

「まだ確認しておりませんでしたわ」

「今のうちに見ておいた方がいいんじゃない? 街に着くと大騒ぎになるだろうし」

「そうですわね」


王都への街道を歩きながら祥子に言われて、ミキストリアはステータスを見た。



ミキストリア ユリウス・マルキウス

種族: 人族

年齢: 20 (=24=)

職業: なし

状態: 祥子の恋人

LV: 35

MLV: 46

HP: 748/748

MP: 1005/2052

腕力 70 / 体力 80

知力 140 / 精神 148

速度 70 / 器用 132

幸運 98

スキル:

 聖魔法 II、闇魔法 II、雷魔法

魔法多重起動

 術式改造

パッシブスキル

 魅了

 三角関数

属性:

 女神ユグラドルの導き(中)



「はい?」

「え、ミキ、どうかしたの?」

「ええ、ステータスがおかしなことに……」

「ステータスが?」

「ええ。いくつかおかしいのですが、年齢が20と24とあって24のほうは取り消し線で消してあるのです」

「取り消し線……」

「24? 24とは?」


ミキストリアは、険のある声で言った。自分のただならぬ声で、祥子が怯んだのには気づいていない。


「ほ、他にもおかしなところはあるの?」

「え、ええ、職業が無しになってます」

「え? ミキは宮廷魔法師団で働いていたのよね?」

「ええ。ですが、もう1年近くも不在でしたので、退団扱いなのかと」

「そうね、それはそういうこともあるわね」

「それに、侯爵家に関する内容もなくなってますわね……」

「謎過ぎるわね」

「魔法も、聖魔法 II と II が付いていますし」

「ふうん、それはパワーアップしたってことかしら。悪いことではなさそうね」

「他もいろいろおかしいのですわ」

「収納は大丈夫よね? さっきイージス使ってもらったけど、収納ないとイージスも効かなかったりするのかしら」


ミキストリアはハッとして収納の一覧を確認した。それはさらにミキストリアを驚かせた。


「え?」

「ミキ、まさか!」

「いえ、大丈夫です。あぁ、女神様。ありがたいですわ」

「どうしたの、ミキ」

「収納に両方入っていますわ」

「両方?」

「ええ、もともとこちらの世界で入れていたものと、あちらの世界で入れたものが両方とも」

「そうなのね」

「それに、『七海への手紙用便箋 ※チートアイテム』というものがありますわね」

「七海への手紙用便箋?」

「チートアイテムということですし、女神様が入れてくださったものでしょう」

「あ! もしかして、それに手紙書くと七海に届くってこと?」

「ええ、おそらくは」

「お願いは聞いてくれたってことね、ちょっと予想と違うけど」

「女神様ですから」

「まぁ、感謝はするわ」

「祥子……」


ミキストリアは、祥子の女神への容赦ない態度に呆れたが、収納が稼働すること、「片思い」「両片思い」「恋人」などのステータスのスクショが残っている事、七海に連絡が取れるかもしれない事などを知ったことで安心し、女神様に感謝していた。スクショが消えるなどは、ミキストリアにとっては考えたくもない、最悪の悪夢であった。収納には、2000枚弱のスクショが入っているのである。無くなったりしたら泣くに泣けない。



~~~



「凄い行列!」


王都の門に並ぶ行列を見て驚く祥子に、ミキストリアはちょっとしたドヤ顔で言った。


「わたくし達は別の列になるので、これほど並ばないはずですわ」


王都では、3つの区分で出入りを警備している。王族貴族用、騎士団や宮廷魔法師団、公認ギルドなど個人証を持つ者用、その他用である。


ミキストリアは宮廷魔法師団の遠征で王都を出たのが最後であり、その際には個人証を提示して記録に残している。その個人証を提示して入るのが常道であるが、ステータスの職業表示からすると退団扱いになっているらしきミキストリアが、この個人証を使えるのかどうか、ミキストリアにも判断はつかなかった。その場合でも侯爵令嬢として入ればよいのであるが、侯爵令嬢としての情報もステータスにない。ミキストリアは祥子を安心させるために言ったが、どうなるかの確証はなかった。内心はヒヤヒヤだった。


ミキストリアは、行列の横を進んでいく自分と祥子が奇異の目で見られていることに気づいた。


(無理もありませんですわね、この格好ですと。まぁ、闇属性いじめに比べればなんということもありませんわ)


ミキストリアは自分と祥子の服をチラッと見て思った。ミキストリアは白地に青い花のプリントの長袖ワンピース、祥子はアースカラーの長袖ワンピースにレギンスで、スタイリングもデザインも素材も全て異質であった。しかも2人とも手ぶらである。護衛はいない。驚かれ、噂されないわけがなかった。この行列に並ぶ人は、驚き、噂したものの、ミキストリアと祥子に悪意を向けたわけではなかった。悪意をもつほどまで、2人を理解できなかったというところであろう。長い行列待ちに、暇潰しに丁度いい話題を提供したようなものである。


ミキストリアは聖属性と闇属性を持ったことで一部の貴族からはいじめとも言える対応をされて来ていたため、悪意のない噂程度は全く気にしなかった。


「女神様には感謝するけど、この格好にスニーカーは合わないわね」


祥子も噂されていることに気づいたようで、自分とミキストリアを服装を見直すように眺めて言った。


「スニーカーでなかったら、ここまで歩くのも難儀しましてよ」

「そうね。こんなに歩くのも久しぶりよ」

「祥子、こちらですわ。最初は個人証を使ってみようと思っていますの。おそらく使えないとは思いますが、衛兵にも話がありますし」

「魔物のことね。うん、ミキに任せるわ」


そう言ってミキストリアは、個人証を使う列にならんだ。前には、商人らしき馬車が3台連なっていたが、確認は程なく終わり、馬車は門をくぐって行った。


ミキストリアと祥子が馬車から少し間を開けて進むと、その姿を見た衛兵が固まっていた。


ミキストリアはそんな衛兵に頓着しなかった。個人証を衛兵に差し出した。


「これを。それと隊長と話がしたい。魔物が出た」


ミキストリアは、宮廷魔法師団としての口調である。


宮廷魔法師団は、その性質から「上下あっても身分なし」とされている。組織として行動するため上司部下ということはあっても、貴族平民の区別はないということである。また報告や連絡は、迅速で簡潔、平易である必要があるので、貴族風の言い回しもしない。


ミキストリアのそんな口調を初めて聞いた祥子は一瞬驚き、何かに納得したような笑顔でミキストリアを見た。それを見たミキストリアは、ちょっとイラッとするような、照れ臭いような、妙な気分だった。ミキストリアが祥子に何か言い返そうとしたところで、衛兵が再起動し終わったようだった。


「あ、あぁ、確認する」


衛兵はミキストリアが差し出した個人証をノロノロと受け取った。まだ固まってしまった影響が残っているようだった。個人証を調べる魔道具が赤く光る。


「この個人証は無効のようだ。偽物ではないようだが……。ミキストリア ユリウス・マルキウス侯爵令嬢? 先輩、知ってますか?」


ミキストリアの個人証は、予想していた通り無効になっていた。個人証の確認を担当していた衛兵は個人証でミキストリアの名前を見ると、列の反対側で作業を見守っていた衛兵に聞いた。


「ミキストリア ユリウス・マルキウス侯爵令嬢? 何年か前に行方不明になった侯爵令嬢がいたと言うのは聞いた記憶がある。確か宮廷魔法師団の一員だったとか……」

「それが私だ。だが何年も前ではない、およそ1年前だ」

「いや。過去1年でそのような事件は起きていない。街道で行方不明になる侯爵令嬢などそうそうあるものではないわ」

「いや、だが……」

「まぁ、待て。この個人証は無効になってはいるが、本物のようだ。宮廷魔法師団の侯爵令嬢が行方不明という事件も記録を見れば時期もはっきりする。隊長に詳しく話してもらうぞ。ここは頼む。2人はこっちへ」


ミキストリアが言い返そうとするのを止めた先輩格の衛兵は、後輩衛兵に声をかけると、ミキストリアと祥子についてくるように促した。ミキストリアは、祥子と頷き合うと衛兵について歩き出した。


「ミキ、カッコ良かった」


祥子が小声で言う。


「祥子……。それよりも個人証が無効なのはともかく、あの事件が数年前とはおかしいですわ!」


ミキストリアは祥子の緊張感のなさに呆れるが、今はそれどころではなかった。


「そうね、おかしいわよね……。あ!」

「祥子?」

「さっき、ミキがステータス見て、歳が20と24って言ってたでしょう?」

「ま、まさか」

「24に取り消し線が引かれてたって」

「ええ、と言うことは4年……」

「想像でしかないけど、こっちでは4年経ってて記録的には24歳、実際には20と言うことなのかなって」

「そんなことが……」

「同い年ね」

「違いますわ!」

「静かに!」


ミキストリアは、祥子の同い年発言につい大きな声を出し、衛兵に怒られるのであった。


読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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