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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
1章 出会い編
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祥子の得た力とミキストリアの魔法

祥子の得た力とミキストリアの魔法



「それで、授かったという力は何かわかった?」

「恐らくこの『女神ユグラドルの加護(小)』でしょうか」

「女神の加護! すごい!! え、待って、小なの? 微妙……」

「……」

「で、加護をもらうとどんないいことがあるの?」

「わかりません」

「はい?」

「いつもはステータスにもっと詳細が出るのですが、そもそも表示される情報も少なく、詳細も出ないのですわ。こちらでの魔法は効果が下がっているのかもしれません」

「そうなのね、わかんないけど」

「それより祥子、あなた怪我をしていますわね?」

「え、怪我? していない、はずだけど。覚えてない。あ、でもちょっと体痛いかも?」

「ステータスに、ケガ(小)と出てましてよ。治しますわ。<ヒール>」

「え、え、あ、痛くなくなった、かも。それって回復魔法?」

「ええ、わたくしは回復魔術師ですので」

「なんかすごいわね。あ、魔法使ってくれてありがとう。と、ところで、さっき歳上とか言ってたけど、ミキストリアは幾つなのよ。大丈夫って言われて、ついお酒出しちゃったけど、まさか未成年ということはないわよね?」

「それは大丈夫ですわ。もう成人して19ですわ」

「それなら良かっ、良くなーい!

 こっちはお酒は20から! もうお酒はダメよ。20までは。まさかの10代とはね、びっくりだわよ」

「元の世界では成人していましたので問題ありませんわ。もう少しで20ですし」


祥子が暦に興味を示してきたので、元の世界では1週間6日、5週間で1ヶ月、12ヶ月あって新年を祝う日が年の最初に5日あって合計365日で一年と言うことを教える。ふんふんと話を聞いていた祥子は、


「じゃあ次の7月17日には、ミキストリアの、あ、もう長いからミキでいい? いいよね。ミキの誕生会をしましょう」


とあだ名をつけられた上、なぜか1人で盛り上がっていた。


「加護が何かっていうのはやっぱり気になるわね。魔法が弱くなってるって話してたけど、魔法が元のようになったら加護が何かもわかるの?」

「そのはずですわ」

「そっか。魔法ってそもそもどうなってるの? わたしにも使えたりするのかな?」


祥子は魔法にも興味津々だった。ミキストリアは少々うんざりしながらも説明した。


魔法は聖霊と契約することで使えるようになる。精霊は火、水、土、風、聖、闇の属性を持っており、契約した精霊の属性の魔法が使えるようになる。聖は少なく、闇は非常に珍しい。複数の精霊と契約して複数属性が使えるようになることもたまにある。ヒールは聖魔法。

これらの属性魔法の他に、無属性と言われる生活魔法があり、これはほぼ誰でも使えるようになる。ステータスも生活魔法の一つ。


本当のところは、精霊との契約は魔法の発動を助けてもらうことであり、精霊の助けなしで発動するだけのMPがあれば、その魔法は使えるのだった。ただ、契約なしに魔法を発動できた者は非常に稀で、例外的に発動した場合でも、この上ない幸運、あるいは気まぐれな精霊が追加で契約してくれた、と思われてそれ以上研究されることがなかった。実は生活魔法も属性魔法なのだが、多くは発動レベルが0、つまりほぼ誰にでも発動できるものだったので無属性と思われていたのだった。


「なるほど。ミキはヒールが使える、ってことは聖属性の精霊と契約したのね」

「え、ええ」

「え、どうしたの?」


(まぁ祥子はわたくしのお世話係ですし、話しても問題ありませんわね)


「聖霊との契約式は、一般的には5歳前後、魔法に強い家系の貴族は4歳前後でやるのです。わたくしは魔法適性が高いと生まれた時にわかったそうで、3歳になる前にやったのです」

「すごく早くない? でも契約はできたってことよね、ミキは魔法使えるんだし」

「ええ、出来ました。聖と闇の精霊と契約したのですわ」

「聖と闇! レア2つの複数契約ってすごいじゃない!!」


あまりに素直に褒められたのでミキストリアは逆に引いてしまう。聖と闇の組み合わせは良いものは思われていなかったからだ。ミキストリアはちょっと困ったような表情で続けた。


「え、ええ。複数契約は一般には貴重で重宝されるのですが、闇はそうでもないのです、特に聖と闇の組み合わせは」


複数の精霊との契約は、単純に考えても能力の幅が広がるので幸運とされた。特に、火水土風属性は、魔法の種類、なんとかボール(球を生成)、なんとかアロー(矢のように飛ばす)といったように共通部分も多いため習得もしやすく、状況による使い分けも可能になので非常に有効とされた。


聖属性はヒール系しか使えないが、命に関わることであり、それだけで貴重であり十分であった。一方で、闇属性は習得できる魔法がないと考えられていた。古いおとぎ話の中で巨大な威力の闇魔法を放ったというような記載があるが、これは眉唾、あるいは悪魔的な何か別の力によるものというように取られていた。闇の精霊と契約できる人も非常に少なく研究も進まなかったこともあり、ハズレ属性と見做されていたのだ。


さらにミキストリアにとって不運だったのは聖と闇の組み合わせになったことによって、ヒールによる回復も悪魔的な何かがあるのではないかといった不安を口にする人が、特に魔法に詳しくない人のなかに、少なからず居たことだった。ミキストリアが自分を活かす場として宮廷魔法師団を選んだのも、そこは魔法に詳しい者の集団で、闇属性を悪魔と結びつけて考えるようなことはほとんどなかったということも理由の一つであった。


「そっか、魔法って聞くと凄い、羨ま!ってすぐなっちゃうけど、いろいろ苦労もあるんだねー、ミキはよく頑張ったよ、えらい。

わたしなんて神様から加護をもらったっていうのに、どういう力なのかとか、使いみちとかサッパリなんだよ。

これから色々見つけていかないとだよ、ガンバロ〜」


(さっきまで全く知らなかった祥子に褒められてもこそばゆいですが、気分は悪くありませんわね。


そういえば祥子の加護は女神ユグラドル様からのもの。

わたくしも『導き』を頂いておりますわね、とはいえこれも詳細は不明ですが。となれば、あの白い光は女神ユグラドル様ご自身、少なくても関わっていらっしゃる、と。


力を、とお命じになりましたが、こちらへ来ることも『導き』の一部ということでしょうか。

でしたら、力をつけた暁には元の世界に戻れるということですわね。

ええ、そういうことにいたしましょう)


「ええ、精進いたしましょう」


方針を決めたことで腹も据わったミキストリアは、朗らかな笑顔で応えた。


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