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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
3章 帰還編
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初めての魔法


ミキストリアは祥子を伴って街道に出、王都に向かって歩き出した。


祥子はあらゆる事が珍しいのか、目についたものすべてを質問してくるが、ミキストリアはそれに応えるのが楽しかった。


「あ、そういえばさっきわたしに天魔法があるって言ってたよね」

「ええ、詳しくはわかりませんが、スキルがあることは見ましたわ」

「それってわたしは魔法が使えるってこと」

「ええ、MPもありましたし生活魔法は使えるかと」

「そうなのね! やってみるわ <ステータス>!」


「おー、これがステータスかぁ」

「見えましたか?」

「うん」


初めてステータスを見てワクワクする祥子を見てミキストリアは微笑ましくなった。2歳の自分を思い出したからである。


「え、ちょ、これ」


歩きながらステータスを見ていた祥子が驚いたような声を上げ、顔を赤くしているのを見てミキストリアは聞いた。


「何か?」

「え、あの、これは恥ずかしいなって」

「何がですの?」

「え、この状態って、恋人って」

「それのどこいけないのです?」


ミキストリアは照れと嘗ての「両片思い」を思い出したが、恥ずかしさを打ち消すように言った。


「い、いや、これは何も悪くない。うん」

「……」


ミキストリアはジト目で祥子を見た。


「で、でさ、ネットアクセスできるようにしてくれって言って、OKされたよね。無いんだけど?」

「それはわたくしも先程気づいたのですが……」

「靴まで用意してくれて、これを忘れるって言うのも変よね」

「そうですわね」

「となると、この天魔法ってやつか」

「その可能性が一番ですわね」

「なんかミキの苦労がわかったよ。あるかもって思ってても途方に暮れるのに、あるか無いかもわからない魔法の詠唱を探すとか無理」

「後でじっくり探しましょう。MPが足りなくて魔法が発動できないこともありますからMPを鍛えるのも必要ですわね」

「MPってどうすると鍛えられるの?」

「基本は色々な魔法を使うことですわ。それで魔法のレベル (MLV) が上がる時に最大MPが上がりますわ」

「わたしの場合は……」

「祥子はまず生活魔法のステータス、ライト、クリーンですわね。生活魔法はレベルが上がりにくいのですが、MLV 10程度まではあげられます」

「そっか。できる事から頑張る」

「色々試してみるのがいいですわ」

「そうね。じゃあ、<ネットアクセス>!」

「できまして?」


ネットにアクセスするなど発動しても他人には見えないだろうと、ミキストリアは思い、聞いたのだった。


「これじゃないみたい」

「じゃあ、<グー○ル>! <ビ○グ>! <ヤ○ー>! <検索>!」

「……」

「じゃあ、他には……。ん? ちょっと待って、何か嫌な予感が」

「どうかしまして?」

「なんかヤバいよ。なんだろう、すごく嫌な予感。あの前の木の辺りヤバい」

「え?」


街道は両側に2mほどの草地を挟んで林に囲まれており、祥子は15m程先を指して言った。その辺りは下草が茂っていた。


「あ、後ろにも!」


ミキストリアは祥子の声に驚いて振り向くが特に何かがいたというわけではないようだった。


「祥子?」


ミキストリアが祥子によく話を聞こうと声をかけた時、祥子が叫んだ。


「何か出て来た!」

「くっ、ゴブリン。それに、ゴブリンウォリアー……」

「あ、あれがゴブリン……」


前方の草むらから出て来たのはゴブリン3匹を引き連れたゴブリンウォリアーであった。ゴブリンは木の斧や木の剣、ゴブリンウォリアーは錆びた鉄製らしき剣を下げていた。


「う、後も」


ハッとした祥子の声でミキストリアは素早く振り返ると、後ろからは、同じようにゴブリン3匹を引き連れたゴブリンメイジが街道に出て来たところだった。ゴブリンメイジは杖を持っている。


ゴブリンは、1匹であれば冒険者の半人前であるDランクでも対処できる程度である。ただし今この群はゴブリンウォリアーとゴブリンメイジに統率されているため、合わせて8匹だが実質の戦力は15匹程度に上がっている。宮廷魔法師団でも前後に対応するために2人は必要であろう。


ミキストリアは自分の迂闊を悔やんだ。


(わたくしが、警戒すべきでしたのに。攻撃手段も防御もないこの状況では……)


ミキストリアは動転していた。元の世界に戻ったことで意識が、前の自分、回復魔術師の自分に戻ってしまっていたのだった。


「ミキ! 今はあなただけが頼りなの。力になれなくてごめん」

「祥子、ですが、わたくしは回復……」

「ミキ、イージス!」

「え? は?」

「実践のチャンスよ、ミキ! イージス!!」


祥子は、日本人の例に漏れず多くのゲームに触れて育ってきている。歴史オタクの流れで戦略系ゲームもやったが、それよりもPRGは良くやった。「竜の探索」、「最終的な幻想」などはよく遊んだ方だった。現実世界の数時間の間にゲーム内では宿屋でHP、MPを全回復させながら何十回と戦闘するなど珍しくもない。また、ミキストリアに付き合って、剣と魔法もののラノベも読んだ。フィールドで敵とエンカウントし、戦闘に入って剣と魔法とアイテムで戦い敵を倒す、という経験はゲームや物語の中ではあるものの祥子の方が実は何十倍と多かった。とっさの事態ではあったが祥子の頭脳は回っていたのだ。


ミキストリアは祥子が自分の腕を取り、励ますような強い瞳でミキストリアを見つめて言うのを聞いて我に返った。


「<イージス>!」


イージスの実戦初投入であった。


読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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