女神の降臨
ミキストリアと祥子、七海の3人は、それぞれに決意を固め、新たな道に進もうとしていた。
そんなある日、夕食を終わって3人で始めようとしている計画についてミキストリアと祥子が話していると、リビングの隅に白く光が出現した。それに気づいた2人が目を向けると光は急に大きくなり、部屋を明るく照らした。
(この光は、まさかあの時と同じ……)
それはミキストリアが元の世界で最後に見た光とよく似ていたが、視界全てを覆うほどの大きさにはならないものの、飛ばされてきた時にも経験した事のない強い光になっていった。。
『ミキストリア、よく力をつけましたね。あなたの使命を果たす時が来ました』
(使命? いいえ、それよりも……)
隣で祥子が何か言っている声が聞こえるが、ミキストリアの意識は朦朧として、祥子の言葉の意味は掴めなかった。ミキストリアは気を失った。
〜〜〜
ミキストリアは、目を覚ますとソファーのようなものに寝ていたことに気づいた。
「ミキ、気づいたのね! 本当によかったわ!」
「祥子……」
そこは明るいのに真っ暗という不思議な空間であった。床も壁も、天井も黒で、黒すぎてそこに何もないように見えるのだった。祥子とミキストリア、ソファーだけがその空間に存在しているような、頼りない気持ちにさせられた。
「祥子、ここは一体……」
ミキストリアは、先に目覚めていたらしき祥子に声をかけた。祥子の元気そうな姿を見て少し安心した。祥子が何か言いかけたが、それより先に部屋の奥から声がした。
『ミキストリアは大丈夫だと言ったはずです』
(この声は、もしや女神様?)
ミキストリアが声の方を向く。
人の形の白い光がいた。輪郭から光が漏れて揺れている。ついさっきまではいなかったはずだった。これだけ白く光る人型に気づかないはずがない。
輪郭から漏れる光が増えた。漏れた光が大きく揺れる。その光は優しかったが、人を寄せ付けないものがあった。
「さあ、説明してもらうわよ」
祥子が喧嘩腰で言う。
『良いでしょう。わたくしはユグラドル、ミキストリアの世界では女神とされています』
「女神様……」
「その女神様があたしとミキをどうするつもりかしら」
不可思議なことがだ、白い光からは苛立つような、面白がるような、揶揄するような感情が伝わってくる気がした。
『ミキストリア、あなたには使命があります。それを果たすべく自分の世界に戻りなさい』
「使命、ですか?」
『それは追って明らかになるでしょう』
「待って、わたしはどうなるの!」
『桂木祥子、あなたは本来は自分の世界に残るはずでした。ですが、ミキストリアを助けた功績に免じて、選択の機会を授けましょう。行くか、残るか、選びなさい』
「行くに決まってるわ! でも条件がある」
『あなたは自分がそのような要求をできる立場だとでも?』
「ええ、あるわ。わたしは何の説明もなくお世話係にされたけど全うしたわ。報酬があってしかるべきよ」
『ほぅ、報酬と』
「そして、わたしはミキの恋人だわ。あっちに行ってもわたしが生きていけないとかだったら、ミキだって使命とやらに集中できないじゃない」
『これは異なことを。使命とは逆境に抗ってでも達成すべきこと』
「でも苦労が少ないほうが成功する率も上がるでしょ」
『まぁ、良いでしょう。条件を言ってみなさい』
「わたしはあっちの世界でもミキを助ける。そのためには知識が必要だわ。わたしの世界のネットにアクセスできるようにして欲しい」
『…… いいでしょう』
「あとは足手まといにならないだけの力が欲しい」
『加護をつけましょう』
「小じゃないやつにして」
『……』
「あと、あっちの言葉が聞いて読めて書けて喋れるのは当然よね?」
『そこまでです。時も来ました。行きなさい』
「ちょっと待って。まだ言いたいことが……。七海にだって知らせないと……」
祥子が隣で叫ぶように言う声が聞こえたが、ユグラドルは眩く輝き始め、ミキストリアは目を開けていられなかった。目を瞑っていても眩しい。
(この眩しさは、あの時と……)
ミキストリアは再び意識を失った。
〜〜〜
次に目を覚ました時、ミキストリアは自分が木を背にして座っているのに気づいた。家で白い光を見たのは夕食後だったが、ここは陽がまだ高い。あれからどのくらい時間が経ったのかはミキストリアにはわからなかった。ここは森の端のようで、木の間から少し離れたところにある街道が見えた。その街道の先には忘れもしない王都の外壁が見えた。
「お、王都……。あ、祥子は?」
ミキストリアが当たりを見回すと、自分が日本で使っていたスニーカーが揃えて置いてあるのに気づいた。とりあえずそれを履き、立ち上がって周囲を見回した。2本先の木から洋服がはみ出していた。
「祥子!」
ミキストリアが駆けつけると、翔子も同じように木を背に座っており、近くには祥子のスニーカーがそろえてあった。
「祥子!」
ミキストリアがもう一度呼ぶが返事はなかった。ミキストリアは、焦り、ステータスを見た。
「<ステータス>」
桂木 祥子
種族: 人族(地球人)
年齢: 24
職業: 異世界人、ミキストリアのお世話係(更新)
状態: 失神、ミキストリアの恋人
LV: 12
MLV: 3
HP 139/139
MP 40/40
腕力 20 / 体力 22
知力 146 / 精神 170
速度 20 / 器用 50
幸運 120
スキル:
天魔法 ※チート
精神耐性 II
異世界言語理解(読む、聞く、話す、書く) ※チート
属性:
女神ユグラドルの加護(中)
(問題はないようですわね)
ミキストリアはとっさに祥子のスタータスを見てしまったことで、後ろめたい気にもなったが、祥子が怪我などの異常はない事で安心し、状態に「恋人」とあるのを見つけて顔が赤らむのを自覚する。
(無許可で見てしまいましたが、恋人ですし、失神中ですし、セーフですわ。それにしても天魔法とは聞いたこともありませんわ。どのようなチートなのでしょう? 異世界言語理解は祥子の要求通り。加護が中になってますわね。ふふふ)
ミキストリアは黒い部屋での出来事を思い出して微笑んだ。女神に向かってタメ口で話し、さらには小ではない加護を付けろと言い切る祥子も大概だが、それにまともに応じて中にする女神もなんというか親しみがわく、と思ったのである。
「ううぅ……」
祥子は目が覚めるようだった。
「祥子、大丈夫ですか?」
「ここは……? わたしたちはいったい……?」
「女神ユグラドルに飛ばされたのですわ、2人とも。ここが聖ユグラドシア王国ですわ」
「そうなんだ。無事に? 来れたのね。それにしても、あの女神、もっと言いたいこともあったのに」
「祥子、よろしかったのですが? こちらに来てしまって」
「うん、その点は気にしないで。望んで来たの。足手まといにならないように頑張る!」
「ふふふ。ようこそ、わたくしの世界へ、祥子。嬉しいですわ。
先ほど勝手にステータスを見ましたが、怪我もありませんでしたわ」
「そう、よかった。え? 見たの? どうだった?」
「天魔法というチートを頂いていますわ。詳しいことはわたくしにも。それと加護も中になっていますわ」
「そう。少なくとも約束は守って貰えたのね」
「そう女神を酷くいうものではありませんわ。こちらの世界では篤く信仰されておりますのよ」
「そうね、気を付けるわ。ミキは怪我とかないの?」
「大丈夫ですわ。それよりあそこに見えるのが王都ですわ。こちらに車はありませんから歩きましょう。靴はここに」
「靴? わたしたち部屋に居たよね? 靴はどうして?」
「女神様のお心遣いですわ」
「そ、そう。それは感謝しないとね」
「行きましょう」
ミキストリアは祥子を促して王都へ歩き出した。
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