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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
2章 修行編
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新魔法の開発


(七) 美味しいお酒ゲット。週末どう?




「このお酒はすっきりしていておいしいですわ」

「口にあってよかったよ。蒸留酒でワインやビールとは違う作り方なんだよ」

「そうなのですね」

「後で調べてみると面白いかもよ」

「ええ、そうしますわ」


祥子がうろんな目で七海を見ていたが、初めて飲む芋焼酎に気を取られているミキストリアはそれには気づかなかった。


「ミキちゃんとすこし話したくってね」


七海が祥子に目線を送ってそう言うのを見て、ミキストリアは何か引っかかるがそれが何かはわからなかった。


「わたくしと?」

「闇属性に魔法がないのはなんでなのか、気になったら寝れなくなっちゃって」

「まぁ」

「何を言うかと思えば……」

「わたくしも不思議ですし、残念でもあるのですが、ないのですわ」

「ないかぁ……。見つかって()()だけな気がするんだよね」

「見つかってない……」

「そう。この何もないような空間も空気があるじゃん? あ、空気って解る?」

「空気……ですか?」

「うん。えーっと、簡単に言うとね、息止めると苦しいじゃん?」

「ええ」

「それは空気を吸えないから」

「初めて聞きますわ、そのようなことは」

「うん、目に見えないからね。でも見えなくても色々なものがあるっていうのは、こっちでは解ってきててさ。それからすると闇属性も無いって本当かなって思っちゃってね」

「もしあったとしても、知られていないので使えないのですわ」

「それな……」

「わたしは、ミキが防御魔法を持っていないのが心配というか腹が立つわ」

「祥子?」

「だってこれから3人の計画を進めるとミキがどんどん目立つわけでしょ? ここには護衛も侯爵家の威光も無いし、守りが薄いなって」

「……」

「あ、ミキが悪いって言うんじゃ無いのよ。火とか他の普通の属性はみんな防御魔法を使えるのに、聖属性だと防御できないって不公平じゃない」

「それはわたしも同意見だなぁ」

「あったらどんなに良いことかと思いますわ」

「ミキちゃん、試してみたら」

「え?」

「聖属性はヒールがあるから大事にされてたんでしょ?」

「ええ」

「聖属性の本人も、護ってもらえるし、ヒール用にMP温存しなきゃだし、色々試せなかったんじゃ無いかな?」

「そう、かも、しれませんわね」


ミキストリアは思い出しながら言った。言われてみれば、宮廷魔法師団の研究部も火水風土の攻撃力を増すとか、聖属性のヒール効果の向上など改良が中心であった。あるかどうかもわからない新魔法の探求は、高位貴族の道楽、穀潰しのような位置付けであった。


「今はヒールがそんなに必要なわけでも無いし」

「そうですわね」


そう答えながらも、ミキストリアはそれほど乗り気ではなかった。聖、闇属性にウォール系の防御魔法がないというのは、常識以前の事実として体に染みついてしまっている。それはなかなか抜けなかった。


「まぁ属性が聖なのか闇なのかは置いておいても、ミキちゃんも防御魔法あったら良いなとは思うでしょう?」

「それはそうですわ?」

「なら色々やってみようよ」

「色々ですか……」


ミキストリアは、2人の言うことはわかるものの、やってみるというヒントも思いつかないのでなかなか前向きな気持ちになれなかった。それほど闇属性の、ハズレ扱いが酷かったということでもあった。


ミキストリアがそういうと、祥子と七海は顔を見合わせた後、いろいろな案を出してきた。ミキストリアは、次々と突拍子も無いことを言い合う2人をポカンとして見ているしかなかった。どれもこれもが、自分ができることとは到底思えないようなものばかりだったからである。


「色々テキトーな事言っちゃったけど」

「七海、あなた適当だったの?」

「いやほら、こういう時はハジけるくらいがちょうどなんだよ」

「本当かしら? でも最後のこの二つね、やっぱり」


そう言って祥子がまとめたのがこれであった。


「バリア」ー 自分をぐるっと囲って、それに触れたものを全部収納する


「ボイド」ー 自分をぐるっと囲って、エネルギーを中和する、なんだったらMPとして吸収


「それはどういうことでしょう?」


ミキストリアは途中で話についていけなくなっていたため、まとめが簡単すぎて理解できなかった。コップに入れた氷をカラカラと鳴らしながら七海が説明する。


攻撃は結局のところ多くが物理。剣とか矢とか石礫とか。これらは自分の周りに線を引いてその線から入ってくるものを問答無用で収納する、と。収納するには所有権の問題があるが、落ちている矢を拾うのと同じで問題ないはず。正当防衛でもあるから一時的に預かるってことでも問題ないはず。


とはいえ空気や火は収納できないので、風魔法、火魔法での攻撃は防げない。なので魔法効果を無かったことにする、もしくは魔法効果を発現されているMPを中和する、できればそのMPを貰っちゃう。


「魔法効果の中和? MPを貰う?」


ミキストリアは混乱した。


「わからないわよね、ミキ。わたしも言っててわからないもの」

「まぁ、バリア、収納するって方は試せるんじゃない? ものを決めてそれを収納するのと違って、境界線を決めて収納するって事だけど収納には違いないわけだし」

「そうですわね。それなら試せそうですわね」

「その間に、ミキちゃんがイメージできそうな話でも考えてみるよ」

「七海さん、お礼の言葉もありませんわ」

「良いって、わたしとミキちゃんの間だし」

「何それ、七海、どういうことよ」


ミキストリアは出口のない迷路にいるような気分であったが、七海の親身な言葉と、祥子がそれにめくじらを立てているのをみて笑みが漏れる。


「ふふふ。やってみることにしますわ」



翌日からミキストリアは、バリア魔法の習得に向けて訓練を始めた。収納魔法を使いこなし、その応用でもある爆撃魔法ボンバーまで体得したミキストリアであれば簡単にできるのではないかと祥子と七海は思っていたし、ミキストリア自身も同じように考えていた。だからこそ前向きに取り組んでいたのだが、実際にやってみると簡単では無かった。逆に最高難易度であった。


そもそも収納魔法はものを収納するのであり、境界線を設定してもその境界線にものが入ってきたと認識することが必要であった。テーブルの上にものを置き、一瞬でもそれを見れば、テーブル上のものとして全てを一度に収納することはできる。それぞれ個々のものを認識しなくても。ただし一瞬でも見て認識することが必要であった。


これは、目で追えない速さの矢、後ろからくる攻撃に対応できないということであった。土魔法アースウォールで周囲を囲うような防御と比べても見劣りがした。


「盲点だったね」

「もっと簡単かと勝手に思ってたわ」

「……」


ミキストリアは自信を無くしていた。期待に応えられないのが辛かった。


「ミキちゃんが悪いんじゃないよ。そんな落ち込まない」

「そうよ、ミキ。そもそもそんな魔法はないのかもだし」

「前代未聞なのは間違いないしね」

「……」

「もう一捻り必要ってことだよね」

「一捻りねぇ…」

「一捻りですか……」

「ミキちゃん、目で見なくても、ものがあるのがわかる魔法とか、あったりしない?」

「あ!」

「え、祥子?」

「ショーコ?」

「サーチ!」

「あ!」

「え?」

「引越しするときに、やり残したものがないかって言ったら、ミキがサーチ魔法で調べてくれたことがあって」

「おお、いいじゃん」

「やってみますわ」


ミキストリアは目を瞑ると、祥子に何かものを持って来てもらった。ミキストリアはサーチでそれを見つけるとそのまま収納した。


「「おおー」」

「できましたわ」

「さすがミキちゃん。さすみき」

「すごいよ、ミキ。でも七海は変に略さないで」

「「ふふふ」」


ミキストリアは特訓を開始した。星飛○馬を真似て壁にゴムボールを投げ、跳ね返ってくるボールをサーチして収納する練習だった。目を瞑って紙飛行機を投げ、サーチして収納するのも良い練習になった。


七海が悪ノリし、先端が吸盤になっている矢を打ち出すおもちゃを買い、祥子と2人で打ってくるその矢をサーチ、収納する練習もした。


床に座り、50本のヘアピンを収納から天井に空中放出し、落ちてくるところをサーチ、収納するのも良い練習になった。


サーチ魔法自体も、ものを詳細に特定する必要はなく、境界を超えて来たものがそこにあるという認識だけで良いことに気づいたミキストリアは、サーチをその目的に特化したものに進化させた。最初の魔法の詠唱によってサーチが常時発動し、異物を発見し次第収納を自動発動するような連携魔法になったのである。


「ミキちゃん、凄いよ」

「急に上手くなったわね」

「もうなんかバリアって感じじゃなくなったね。サーチだし。イージス?」


物理防御魔法「イージス」の誕生である。魔物討伐任務の経験もあるミキストリアは、これがまだ完成ではなく、実戦投入にはさらなる訓練が必要なことを認識していたが、現状、他人に知られずにそれをやるのは難しくもあった。イージス魔法の完成はしばらく先だった。


読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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