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異世界ヒーラー世界を治す  作者: 桂木祥子
2章 修行編
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七海の訪問


「ミキ、ちょっと相談なんだけど……」


夕食後、祥子とミキストリアがまったりしていると、祥子が切り出した。


「今度、七海を家に呼ぼうと思うのよ」

「?」

「あ、七海っていうのは、例のお高いシャンパングラスをくれた人」

「あぁ、あの素晴らしいグラスの……」


ミキストリアもそのグラスのことはよく覚えている。今も収納に入れているし、何より、ステータス情報を収納するという前代未聞のスクショ魔法のきっかけになった。あれには感謝してもしきれない気持ちである。


「そう。で、相談っていうのはどこまでミキの事を話すかって事なの」

「……」


ミキストリアは少し首を傾げて、祥子の話の続きを待った。


「七海は、今、腕を怪我しているらしくて困ってるのよ。

 助けてあげたいって思うんだけど、ミキにお願いすれば治ると思うんだけど、そんな事をミキに頼んでいいのかどうかも悩むし、そもそもそうなると、七海にもミキの魔法のことを話すことになるでしょう? それはしていいことなのかって悩んでて……」


この件をずっと思い悩んでいたらしく、祥子は一気に心情を口に出した。


ミキストリアは、祥子が七海を大事にしていることを知り、心がざわめくのを意識せざるを得なかった。一方で、同じように自分を大事にしていることもわかり嬉しくなる。今は、自分が大事に思われているということでミキストリアは満足した。


「祥子の大事なかたは、わたくしにとっても大事ですわ。祥子の思うようになさって」

「いいの?」


祥子はミキストリアがそう言うだろうと予想していたようだったが、念を押してきた。


「ええ。わたくしも恩がありますし」

「え、恩?」

「あ、いえ、こちらのことで……」

「ふーん、よくかわんないけど、まあいいわ。じゃあ家に呼んで話するね」

「ええ」

「多分色々と聞かれるだろうから、ミキが答えたいことだけ答えればいいよ。全部話す必要ないから」

「わかりましたわ」

「ありがとう、ミキ。凄い助かる」


ミキストリアは、祥子に感謝されるのが何よりも嬉しかった。



〜〜〜



「じゃあ、迎えに行ってくるね。ミキはグラスだけ出しておいて……、いや、目の前で出してもらって驚かそう」


七海がくる当日、様々な準備を済ませた後、祥子が悪い笑顔で言った。


「箱のまま収納しているので、一旦出して、収納し直しておきますわ」

「あはは。お願いね。じゃ行ってくる」


祥子を見送ると、ミキストリアはシャンパングラスが入っている箱を収納から取り出した。慎重にグラス3つを箱から出すと、その箱は収納に戻す。グラスを洗って綺麗に磨き上げると、収納に入れた。


(このようなことは使用人に全てやってもらっていましたが、誰かのためにとやるのは悪くありませんわね)


祥子との二人暮らしは戸惑うこともまだ多くあったが、いろいろな事を自分でやる経験は、ミキストリアに多様な視点と価値観を与えていた。



「ただいまー」

「お邪魔しまーす」


玄関が開く音と共に2人の声が聞こえてきた。ミキストリアは玄関ホールに行き2人を出迎えた。


「いらっしゃいませ」


ミキストリアは、戻ってきた祥子が顔を赤くしており、微妙に自分から目を逸らすことに気がついたが、まずは来客への対応が先だった。


「あー、あなたがミキちゃんね。初めまして。わたしは天野七海。七海って呼んでね」


七海はミキストリアの事をある程度聞いているのか、いきなり軽いノリだった。七海はミキストリアにとって、こっちの世界に来てからまともに話す2人目である。いきなりの七海のフランクっぷりにミキストリアは戸惑った。


「ミキストリアですわ。お見知りおきくださいませ」


祥子に、家名は名乗らない方がいいとアドバイスを受けていたのでミキストリアは名前だけを名乗った。挨拶は軽く、とも言われていたが、戸惑いもあって侯爵令嬢の素も出てしまう。


「ふふふ、話聞いてたけど、ミキちゃん、面白いね、いいよ!」

「はいはい、2人とも中に入って」

「この家に来るのも何年振りかな。いい家よね」


リビングのソファーに落ち着いたところで、祥子が切り出した。


「七海、いろいろ話はあるんだけど、まず、わたしとあなたは一生の親友ってことでいい?」


祥子は真っ赤な顔をしていた。


「シ、ショーコ、なに急にそんな恥ずかしいこと言いだすのよ」


七海も恥ずかしいのか顔を赤らめていた。


「七海、大事なことなの。わたしだって恥ずかしいんだから、ちゃんと答えて」

「え、ええ、うん。ショーコとは一生の親友だと思ってる」

「ふーぅ、ありがとう。さすがに声に出すと恥ずかしいわね」

「恥ずかしいどころじゃないわよ、いったいどういうことなの?」

「ミキ、お願い」

「ええ、<ヒール>」


ミキストリアは、祥子の合図で七海にヒールをかけた。七海は右腕を折ったためにギプスをし三角巾で吊っている。ミキストリアには怪我の具合がわからないのが骨折と聞いているので、骨の修復、痛んでいるかもしれない筋肉組織や血管の修復、神経回路も元通りに、と今まで得た知識をフル活用している。さらに倍のMPも使った。過剰だという自覚はミキストリアにもあったが、足らないよりはいい。


「え、ミキちゃん、今なんて言ったの?」


祥子が代わりに答えた。


「七海、腕の具合はどう?」

「どうって、この前折っちゃったばっかりで、まだちょっと痛くて、ショーコが無理にでも来いっていうから来たけど、ん? あれ? 痛くない?」

「ふふふ、ミキに治してもらったのよ」

「治す? 治すってなに? え? どういうこと?」

「お茶もまだ出していなかったわね。暑いから冷たいもの持ってくるわ」

「……」


「はい、どうぞ。わたしはお昼の準備するから2人で話してて。いろいろ聞きたいでしょ、七海は」


冷たいジャスミン茶を持ってきた祥子は、そういうとキッチンへ戻っていった。


「七海さん、腕はどうでしょう?」


呆然として固まる七海に、ミキストリアは質問した。


「腕? 腕はなんか痛くなくなった。指も普通に動くし、動かしても痛くないし。ねぇ、これってどういうこと? 教えてくれるよね?」

「ええ、もちろんですわ。実はわたくし、魔法が使えまして」

「はぁ? 魔法ぅ?」

「ええ。そもそも……」



~~~



「お昼出来たよー。こっち来てー。まずは()()()()()に乾杯しましょうか」


昼食を準備し終わった祥子がダイニングで2人を呼んだ。友情と健康の部分を強調して言う。テーブルにはシャンパンが用意してある。グラスはない。


「ミキ、お願い」

「ええ」


ミキストリアは収納から3つのシャンパングラスを直接テーブルに出した。


「え? なに? 今のどうして? え?」

「魔法ですわ」

「さ、乾杯よ」


ミキストリアはシャンパンを楽しんだ。


読んだいただき、ありがとうございます。評価、感想おまちしてます。

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