ふうりん柳 作者: 昼咲月見草 川沿いにずうっと並んでいる 風鈴柳が風に揺れ り、り、りん……と囁く午後の日の下 のんびり雲と優しい影と ぱらぱらめくれる本のページ 飛んでいった栞を拾ってくれた人 浅黒い肌と 逞しい腕と なぜだか甘い低い声 楽しげな調子が風鈴柳の葉擦れ鈴の音と重なって わたしの記憶に焼きついた 薔薇の木の下で秘密ごと ヤドリギの下で告白のキスを 風鈴柳の下では口を閉じて、目を閉じて 思い出のあの人を心に探す り、り、り、り、りん…… 風鈴柳の葉擦れの音は懐かしい人を誘い出す だから目を閉じ、口を閉じ そっと鈴の音に記憶を辿る それはきっと川沿いに並ぶ柳が誘う……