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封赦*葎札  作者: 一ノ瀬 水々
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切っ先を喰らうモノ

 木々の間を縫うように駆け抜けるシィン。その視線の先にヒーア村の集落が見えた。走ることでさらに心臓の鼓動が増していく。

「無事でいてくれ、バジョ」

 集落の裏側に辿り着くと、見知った人の姿を捉える。「ベルルおばさん!」と声をかけた。先ほど森の中ですれ違った小さな女の子二人組の母親だった。

「いったい何が」

「来てはだめッ!!」

「え?」

 突如目の前の女性の体に衝撃が走る。同時にピタリと動きが停止した。女性の表情が驚きと苦悶の入り混じったものから、無へと変わった。そしてドサッとその場に体が叩きつけられた。シィンの視線が女性の背中に移る。そこには、深々と突き刺ささる鋭利な刃物があった。的確に、背中側から心臓を一突きされたようだ。

 そのまま刃物から視線を上げると、こちらに歩いてくる足が見えた。さらに視線を上げてゆく。真っ白な袴に身を包んだ、美しい、しかしぞっとするほど冷たい眼をした若い男だった。

 男は無表情のまま女性の背中から刃物を抜いた。背中から血がブシュッと噴き出す。そしてその血を手の刃物に塗す様にしている。

 しばらくの間そうした後、突然男はその刃物を頭の上に持ち上げ、喰った。

「ェッ!!!?」

 シィンの頭では、まるで食事を済ませるかのように当然として行われた一連の行動のすべてが理解の範疇を超え過ぎていた。

 刃物を喰い尽くした男は、シィンに向かって掌を向けた。その掌には正方形で象られた傷?いや、刺青のような模様があった。ボウッとその模様を見つめていると、模様の中心からメキメキと刃物の切っ先が現れてきた。その刃の出来を確かめるかのように見つめる男。

(何だ、こいつは・・・)

 その時、男の袖から一枚の札がヒラリとこぼれ、男の目の前で円柱形に変形した。それを耳に当てた男は、シィンに背を向けて村の中心に向かって行ってしまった。

「・・・待てッ!」

 一呼吸おいて我に返ったシィンは、男を追跡するべく同じ方向に走る。



 時は少し遡り、ヒーア村の外れで仲良く農作業をするバジョたちに話は戻る。

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