神位
かなり遅くなりました!
相変わらず急展開。
あれから1ヶ月が過ぎた。私は魔法の制御を習得し、今は第二段階目に入っていた。
「……、10秒。……、8秒。……、11秒。」
「はぁ。はぁ。」
「シャンお姉ちゃん、大丈夫?」
「う、うん……。」
今やっているのは魔法をより早く行使するための修行。魔法の行使にはイメージが重要なのは間違いないが、その度に1から10までイメージしてたのでは実戦には使えない。動物狩りが限界だろう。
やっぱり魔法に慣れてないから時間がかかるんだろうって、ディーンは言ってたけど多分違う。今思えば、私は元の世界でも仕事とかは遅かった。ものは違うけど、頭の中でイメージをして行動するという所は似てると思う。つまりは要領が悪いってことになる。いや、ちょっと違うかな。今回の時間の計測開始は腕を前に出してからだから、当然、それまでにイメージを固めておけばタイムは早くなるけど、実戦には使えないのでそれはしない。
「ねぇ、シャンお姉ちゃん。もしかして、真面目な人?」
「え?どうだろう。そんなことはないと思うけど、人並みじゃないかな?」
「うーん。例えば庭の掃き掃除をしてって言われたら落ち葉一枚も残さないとか。」
「そんなことは……、ない……。」
「本当に?」
「うっ……。」
流石に落ち葉一枚も残さないというほどではないけど、まぁうん。つまりはそういうことだよね。
「えーと、これはあくまで私の場合なんだけど、私は魔法を使うとき結果だけを想像してるよ。」
「結果だけ?」
「うん。例えば何かを燃やすってしたときに、炎の温度は何度で、規模はどれくらいでって細く考えるよりも、その何かが既に燃えてるところを想像するっていう感じ。で、分かるかな?」
「えっとつまり、さっきの掃除の話に例えると……。箒とかを使って綺麗にしていく様子よりも、既に綺麗になった庭を想像するっていうこと?」
「そう!そういうこと!」
なるほど。それはありかも。
「もう一回試してみてもいい?」
「うん!」
私は手を前に出し、標的を凍らせることではなく、凍っている場面をイメージする。
ピシッッ
明らかに今までにはなかった手応え。これはキタかな?
「記録は…、2秒!」
「できたー……」
「お疲れ!」
「うん。ありがとう!イズちゃんのおかげだね!」
「えへへ。」
まぁこの2秒っていうのはディーンが設定した最低限のタイムなんだけど。それでも今までほぼ進歩がなかったのに比べれば上々だと思う。
「さて、じゃあ帰ろうか。今日はもう休みたい。」
「うん。」
私たちは少しの休憩を終え帰宅した。
「ただいま。」
「ただいまー。ってあれ?お客さん?」
ディーンが扉の前で話している所を見たイズちゃんが真っ先に尋ねる。
「あぁ2人ともちょうどよかった。この方は"神位"魔王。」
「え……?"神位"の……方……?」
"神位"。そういえば前に話に出てたけど、結局確認することはなかったな。
「妾は"神位"の魔王、ティヴィロ。ティヴィロ=グルノテーンじゃ。」
「よろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いいたします。」
なんか、いかにもそれっぽい。
「それで、あの。要件というのは……」
「ん?あぁそうじゃ。お主じゃ、お主。」
そう言ってティヴィロさんは私を指さす。ん?私?なんで?
「なんじゃ、その反応は。まさか心当たりがないと申すのか?」
「えっと、その……。はい。」
だって、ねぇ。顔見知りならまだしも、初対面だしね。
「それならば仕方あるまい。説明するとしよう。実はの、先月にここらで超級の魔力反応が確認されたのじゃ。この辺りは一応妾の統括ということになっておって、あとで他の奴らから問われても面倒じゃから調べに来たのじゃ。」
「あれ?それって……」
「多分、シャンが初めて使った魔法だな。」
「と、いうわけじゃ。」
なるほど。でも、なんで見ただけでそれが私って分かったんだろう。第一印象ならディーンの方が強そうに見えると思うんだけど。
「なんで分かるの?みたいな顔をしておるが、ある程度の者なら一瞬でわかるぞ。お主からは魔力が垂れ流しになっておるからの。」
「垂れ……流し…?」
私はディーンとイズちゃんに視線を向ける。けど、2人ともピンとは来ていない。
「ふむ。実際に目にする方が早い。妾の視界を共有しよう。」
「……え?」
私は困惑した。目の前には白というか水色というか、そんな感じの煙が映る。ディーンたちを見ると、色は違うけど同じように煙みたいなのは出ている。けど、明らかにこの目の前のやつはおかしいくらいに濃い気がする。
「今見えてるそれが魔力というやつじゃ。言っておくが、そこの2人は別に魔力を抑えているわけではないぞ?まぁ妾はかなり抑えておるがの。」
なるほど。確かにこれは分かる。
「納得してもらえたようで何よりじゃ。さて、ここからは提案なんじゃが。お主、"神位"になる気はあるか?」
「へ?」
私が混乱する中、何故かディーンとイズちゃんは納得したような反応をしている。
「何を迷う必要がある?お主は"神位"に足る力を持つのじゃ。」
「いや、そう言われましても……」
「ふむ、ならばこうしよう。妾に勝つことができれば"神位"にならなくともよい。だが、妾に負ければ"神位"になってもらう。」
パチンッ
ティヴィロさんが指を鳴らすと、私とティヴィロさんを囲う結界が張られた。って、え?
「ちょっと待ってください。」
「勝負はもう始まっておる。フルバースト。」
明らかに今まで目にしてきた魔法とは物が違う。ぱっと見だけでも炎に水に雷。あとはうっすら氷みたいなのも。それらを一つに束ねたビームは、私の心臓を貫いた。
ティヴィロさん、強引すぎませんか???