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凶吉  作者: 夜桜ユウト
4/5

━本季章━3、飽和して昇華して尚夏と冬

うっす

よさです


前と比べて早い投稿。

僕でなきゃ見逃しちゃうねへへへ()

3、飽和して昇華して尚夏と冬


なんだここは。

夢か。

夢ならさっさと覚めてくれ。

僕には"やるべきことが"ある。

"助けないといけない子"がいる。

お前らなんかに構ってる暇はないんだ。








………………

黒と赤











「?!げホッ…カハッ………ゲホッ……」

これはまずい。

埃の気団を吸い込んだ。

なんとかして外に出したい。

そうは言っても、目に見えない小さな埃は次第に擬似的な痰へと変貌し、喉の奥に蔓延りついて離さない。

咳払いを何度しても、違和感はそのままそこに居座っていた。

「ゔゔんっ、水、水飲まないと」

今気づいたが、僕は布団に包まっていたらしいな。

昨日は何時に寝たのだろう。

昨夜何してたっけ。

そして今は何時だ。

平常な自分だったら、枕元にいつものスマホが置いてある筈だ。

昔のたからばこの中を探るように、布団を退けながら対象を模索する。

あった。

水色に乱反射する表面上。

最近ハマった指紋認証で待受に飛び級で進む。

上から下まで右親指でゆっくり滑らせた。

2020/6/12。

12:26。

休日か。

「………」

もう昼かよ。

声にはしなかった。

無駄なことはしたくない。

それに、喉に埃の塊が詰まってるのだから声出したくない。

と、自分で後付の考えを押し付けて立ち上がる。

幸い、部屋は狭いので台所は目の前にある。

冷蔵庫の一番上の扉を開き、容器に入れておいた麦茶をコップに注ぐ。

埃を体の中に流し込むのは気が引けたが、然程影響なんてないだろうと楽観視して胃に注いだ。

なんとなく楽になった感覚がする。

プラスチックでできた百均のコップを、流しの上に、半ば投げるように置き去った。

ひたすらに目を擦る。

何時に寝たのかは知る由もないが、日が真上で猛威を振るうようになるまで寝ていたのだから、睡眠時間は確保できている筈なのだが。

電気をつける。

眩しい。

一気に視界の明度が高くなり、細かった目がもっと鋭利になる。

「おはよう…………音。」

自分でも、なんでこの言葉を言ったのかわからなかった。

音………

まあいい。

朝飯は……いいか。

最近、朝の食欲がない。

食べたとしても、カロリーメイトとかそこらの応急措置的な食物しか摂取しない。

何故かそれ以外の物を腹に入れると、弾かれるようにそれを嘔吐する。

中学の3年のときからずっとそうだ。

だから、何も食べない。

机の上に置いてあったソイジョイの青りんご味を口に咥えながら、カーテンと窓を開け、空気の大循環を起こす。

ついでながら、外の景色を傍観した。

「…………あ、新名さん……」

茶色い服を来た人。

僕と同じで、なにか"わけあり"の人だ。

しんみょう。

新名直人。

同じこの家に住む中学生の男の子。

同じ家、と言うと語弊があるかもしれない。

ここは、互いに互いの事情を知らない"わけあり"の人たちが住んでいる。

シェアハウスなんて大層なものではないが、世間の目にはそう映っているらしい。

それはそれで無駄な説明をする時間が省けて助かる。

その子の背中を見送りながら、網戸を開けて狭いベランダに出る。

ガラガラっ、と。

その音に反応したのか、彼もこちらに振り返った。

「あ、長谷さん。おはようございます!」

「おはよう。今日はどっか行くの?」

僕は、二階に住んでいる人間だから、外の人と話すのに大きな声は必要ない。

彼もそこまで声を張るのが得意ではなさそうだし、ちょうどいいだろう。

二階、というだけでこの家の人たちとはよく話せる。

「隣のコンビニまで行こうと思って。」

「え、そこのローソンじゃだめなん?」

彼の目標地点の逆を指差す。

と言うのも、すぐそこにコンビニがある。

彼が行こうとしているコンビニは少しだけ遠い。

「あー昨日言ったでしょ?あの牛乳瓶のコンビニ、ZONe取り扱ってないんですよ。」

「おっと、そうか。」

「買ってきましょうか?」

「あ、まじ?お金後でいい?」

「いやいや、いいですよ金なんて。然程使うわけでもあるまいし。」

ZONeは、彼が好きなアーティストが楽曲提供したとかなんとか。

僕は中学の『あのとき』から音楽を聞いていない。

最近の個人的流行りは、どちらかというと音楽よりツイッターだ。

「え、なんか悪いな。今度サイゼリヤ連れてくよ。」

「超高級イタリアンですね!言いましたよ?」

「お、おう笑」

不意に笑ってしまった。

彼は言葉が面白い。

彼と話してると楽しい。

「じゃあ行ってきます。」

「おう。頼んだ。」

互いに手を振り、僕は彼を見送った。

こうやって、誰かと何気ない会話をするようになったのも、ここへ連れてきてくれた彼のおかげだ。

彼も辛いことがあっただろうに。




カーテンを開けたまま網戸と窓を閉め、布団の上に倒れる。

枕に顔の重さを押し付けながら、頭の中で呟いた。

「………おと……………ひがし…ばた…………」

あの子は、今どこにいるんだ。

いや、いないのか。

でも、どこかにいるきがして。

いつも、彼女を探してる。





………………………………………………………………




中学生の頃の話だ。

僕は好きな子がいた。

名前は、『東畠音』

彼女と、もう一人、ある子といつも一緒に過ごしていた。

その子は、発達障害を持っていた。

いつもこの三人で、学校でも、放課後でもいつ何時でも一緒に遊んだ。


ただ


もう一人の子は、3年に上がる直前にこの世からいなくなった。

自殺。

頸動脈を切り、崖から飛び降りて死んだらしい。



………………………………………



らしい………?



違う。

この目で見た。

彼女と二人で、その光景を。

落ちていく、彼の勇姿を…………



………………………………………………………………


その後の話、

彼女は、僕に「好きだ」と言った。

僕は彼女が好きだったから、すぐに返事を言おうとした。

けど、その後にこう言った。

「もう、嫌なんだ。この世界。」


………………………………………………


クラスメイトの殆どは、もう一人の子が好きで、よく絡んでくれた。

でも、もう一人の子は、ある人物によっていじめられていた。

たった一人に。

クラスも、そいつが嫌いだった。

名前は………思い出したくもない。


それから、いじめられていたその子を、彼女が庇い怪我をした。

それを見て、その子は決心したそうだ。



………………………………………………………………



死ぬ前にこう言っていた。

「ぼくは

たのしかった

うれしかった

あんがと

じゃね」




………………………………………………………………


「うっ…おえっ…おぇ………あっ、かはっ…おぉぇ…」

だめだ。

これ以上思い出すな。

だめだ、だめだだめだだめだだめだだめだ思い出すな思い出すなだめだ思い出すな。


トイレに駆け込む。

「おぉぉえっ………」

何も入ってない胃の中から、ただただ液体を吐く。

ぐちゃぐちゃに絡まった記憶が、順序を履き違えて頭の中を走り回る。

気持ち悪い。

死にそう。

いや、死にたい。

どうせなら、彼女等と一緒の所で、彼女たちと一緒に、昔のように、遊びたい。


「はっ…はっ………はっはっ…………」

過呼吸になるのを実感し、心を落ち着かせようと努力する。

洗面台へ急ぎ、蛇口を捻って水を口の中に流し入れる。

そのまま、それを吐いた。

「ぶはぁっ!はぁ…はぁ……はぁ…」

少しだけ、気分が楽になった。

落ち着きはしたものの、このままだと気分どころか心もどうにかなりそうだ。

「………………もう、寝よう…」

寝れなくても、横になればいい。

スマホを触ってもいい。

何をしてもいいから、横たわらせてくれ。

トイレの中の吐瀉物を流し、洗面台も水で周りを掃除する。

洗面台の扉に体の全てを預けながら、布団に向かう。

その途中だ。


ピンポーン


チャイム………?

ああそうか、新名くんか。

そう思い、ドアに方向転換する。

そのまま鍵を開け、部屋の空気と共に扉をお仕開けた。

「新名くん、早かっ

「よう、やっぱここだったんだな。長谷。」


「あっ、ぁ、」


やばい。

まずい。

やばいやばいやばいやばいやばい



「話せるか?」

酷く悲しく、心が抜けたような目をしていた。

泣きそうな目をしていた。

傷ついたような目をしていた。



お前が、そんな目をするな。





「す、ざき」





お前が、

あいつらを

うっす

夜桜です


ご拝読ありです。

前回と比べて早い投稿ペース、

がんばりました()


さて、人物が増えてきましたね。

今のところ、凶吉に登場したキャラは大体6人くらいいるわけですけども。

はてさてどうなることやら僕にもわかりません(白目)

ただ、主人公がたくさんいるのは見てのとおりですね。


因みになんですが、ここに出てきた「長谷くん」は高校生ではなく、中卒でバイトして暮らしてる人間です。

この理由も後に。


そのくらいですかね。

今回は前回前々回と比べて長い文章でした。

読んでくれてありがとう。


それでは、次章まで、


しばらくっ!



〈真音は、「まのおと」と読みます。 夜桜〉


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