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冬夕焼

作者: parker

 夕方のそらはしゃぼん玉なんだよ。

 今見ているのはきっと大きなしゃぼん玉の中にいる時と同じ景色なんだよ。

 太陽は黄色の吹き出し口。だからそこから輝きはやってくるんだ。

 輝きは水平線をぐるりと虹色のグラデーションに染めて、それが雲にあたって新しい虹色を生み出すんだ。

 

 それを眺めてぷっかぷっかと飛ばしてみよう。

 しゃぼん玉は一つまた一つと溶けていく。

 しゃぼん玉が消えてしまうのはきっとこのそらと一緒になるからなんだよ。

 だからたとえ消えてしまっても、ちっとも悲しいことではないんだ。

 そしていつか、この大きなしゃぼん玉もそらに飛んでいくに違いないんだ。

 

 ぷっかぷっかとしていると5時のチャイムを聞いて、空に溶けた名残(なごり)を大きく吸い込むと虹と寒さが一段と眼と鼻に沁みた。

 赤くなった鼻をすすると、とうとう太陽までも赤くなって吹くのをやめてしまった。

 きっと赤くなるのは吹き疲れてしまったからなんだ。だから夕闇の向こうで休んでいるに違いないんだ。

 

 仕方がないから帰ろうとするんだけれども、口先に残る苦さに後ろ髪を引かれる想いがするんだ。

 でも残像に目をまためかせながら歩いていくと街灯はそれを見て、大急ぎで()いて行くんだ。

 それが面白くて、歩みは自然と早くなるんだよ。


 ――レディースアンドジェントルマン。

 街灯はスポットライトなんだよ。きっと太陽もどこかで見ているに違いないんだ。

 そんな街灯にストローを掲げて透かして見ると黄色のギザギザが太陽みたいに見えるんだ。

 紛い物だけれども今だけは自分だけのもので、とても綺麗なんだよ。

 だからしゃぼん玉の代わりに白い息を吹いた。

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