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僕の息子は空を舞う

作者: 東府









 ―――――――僕の息子は空を舞う。比喩だとか例えとかじゃなくて、本当に。


 ああっ!? ちょっと待ってくれよ。本当だから! これマジだから! お願いだから席を立たないでくださいお願いします。…………ああ、そうそう。ステイステイ。うん、とりあえずは話を聞いてくれ。

 ……え? 嘘じゃないかって? おいおい、ただ一人の親友である君に僕が嘘をついたことなんてあったかい? うん、あったね。その節は本当に御免なさい。

 

 早く本題に入れ? ああ、そうだね。僕もそろそろ本題に入ろうと思っていたんだ。やっぱり僕と君は唯一無二の絆で結ばれている!! ……はい、話しますからその冷たい目をやめてください。


 …………僕には今年で六歳になる息子がいるんだよ。知ってた? 知ってますよね、はい。

 いやあ、やっぱり子供はかわいいね。自分の血を引いていると思うとさらに。

 うん? お前の血を引いてるだけで心配だ? そうだね、僕も心配だよ。成長したらこの世を揺るがすだろう大スターになると思うとね。この僕のように。


 まあそれは置いといて、昨日息子と遊んだんだ。この頃遊べていなかったから、それはもう存分にね。

 さて、やっぱ男の子だから、キャッチボールをしたんだ。うん、中々に才能があったよ。まあ僕の顔が光り輝きすぎたのか息子は僕の顔にばっかボールを投げていたけどね。


 ……いやだなあ。この僕が愛する息子からのボールを避けるはずがないだろう?

 勿論受け止めたよ。ああ、この世界の至宝とでも呼ぶべき僕の顔面でね。スピードもけっこう速かった。

 うん、痛かった。でも、不思議と僕は嫌じゃなかったんだ。それどころか、もっとやって欲しいぐらいだった。

 きっと息子の愛の賜物だろうね。

 変態? どこにいるんだい、この僕が捕まえて見せよう。………………え、なんで僕を指さしているんだい、君は。

 もしかして、僕のすぐ後ろにいたりする? するんだね!

 …………なんだ、見間違いかぁ。君が見間違えるなんて珍しいね。


 さて、続きだ。えっと、どこまで話したかな? ああ、キャッチボールまでだね。オーケー。

 

 僕達は、その後サッカーをしたんだ。息子がシュートをして、僕がそれを止める。

 中々に白熱した戦いだったよ。さすがは僕の息子と言うべきか、そのシュートと言ったら強烈でね。

 勿論才能溢れる僕は全部止めて見せたんだけど。

 そのボールはさ、ゴール手前で曲がるんだ。思いっきり、カク、とね。

 すごいだろう? 六歳にして回転を掛けられるなんて、さすが僕の息子、といったところだ。

 まあでも僕の方がすごいからね。直前でカーブするボールを僕は受け止めた。

 当然の如く――――――――――顔でね。

 我が息子の回転も、僕の顔の煌めきに比べたらなんてことなかった、というわけだ。

 シュートは全部吸い込まれたよ、僕の顔にね。


 それで、少し小腹も空いたから商店街に行ったんだ。

 どうやら感謝祭? だったようでね。息子はよくわからない、こう……名状しがたい生き物の着ぐるみに風船をもらっていたんだ。

 僕はその間、焼き鳥を買いに行っていた。

 ……なんで焼き鳥かって? おいしいからに決まってるじゃないか。ちなみに君は何が好き? へえ。皮か。さすがだね。チョイスに君らしさが出てるよ。

 僕? 僕はねぎまのねぎだけど。おいしいよね、あれ。


 ああ、それで、ここで事件が起きる。

 僕の差し出した焼き鳥を受け取ろうとして、ついつい息子は風船を手放しちゃったんだ。

 あ、と思ったときには既に遅かった。色とりどりの風船が、全て宙に飛び立ってしまった。

 僕は精一杯ジャンプして一つでも掴もうとしたけど―――――――なに?

 ああ、何個持ってたのかって? 何個だろうなあ、十個くらいはあったんじゃないかな。


 で、僕の懸命なジャンプも風船達には届かなかった。悔しかったよ。でも、それ以上に息子が泣いてしまうんじゃないかとドキドキした。

 そして横を見ると、息子がいない。

 焦ってまわりを見ても、見つけられない。

 でも、そこで気づいた。周りの人が呆気にとられた顔で上を見ているのを。

 もうわかっただろう。

 ――――――――――――息子が、宙に浮かんでいた。

 いや、浮かんでいた、という表現は正しくないね。

 飛んでいたんだ。鳥のように。

 舞っていたんだ。蝶のように。

 あのときは驚いた。それはもう、驚きまくりさ。もしかしたら、君が結婚したときと同じくらいにびっくりしたかもしれないね。

 息子は、自由自在に空を飛び回って、風船を集めた。そして何でもなかったかのように、僕の横に降り立った。

 焼き鳥を食べながらね。

 

 さて、信じてもらえた? うん、信じてないね、その目は。

 いやそりゃあこんな話信じられるわけないだろうけど信じて欲しい。

 うーん、でもどうしようか。多分息子を君に見せるのが手っ取り早いんだろうけど…………って痛あ!?


 ちょっと、何をするんだい。まったく、君は手を出すのが早すぎるんだ。

 もう少し我慢をして、てなんで上向いてるんだよ。

 すごいアホ面だぞ。…………………ん? 上を見ろって?

 ――――――おお、僕の息子じゃないか! もしかしてあれかな? 僕が恋しくて来ちゃったのかな?

 あれ、どこへ行くんだい。僕はここだよー!?


 へ? 羽? わあ、本当だ。やっぱり僕の息子は天使だったんだな!


 どうしたんだ、そんなに青ざめた顔で。

 ………………え? 僕の妻は誰だったかって?
















 「―――――さあね」











 診断でこのタイトルが出たので書きました。

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