優しい天使
あるところに、笑顔を振りまく天使がいました。
天使は、誰にでも笑いかけました。
天使は、どんな時も笑っていました。
天使は、幸せでした。
ある日天使は、長い長い道の途中でたたずむ男を見つけました。
「あなたはなにをしているの?」
天使が問いかけます。
すると男はこう答えました。
「かなしんでいるのさ」
「なら、私の笑顔であなたの悲しみを少しでも忘れさせましょう」
そう言って笑いかけた天使に、男は激しく憤りました。
「何も知らないお前の笑顔を見ているといらだってくる! 二度とそんな顔を見せるな!」
しかし天使は笑顔を見せることをやめませんでした。なぜなら天使は笑顔を絶やすことができないのです。
それでも人並みな感情を持ち合わせている天使はひどく傷つき、そして悩みました。
どうしたら彼を救えるだろうか。
しかし天使は自ら答えを出すことができず、神様に相談しました。
神の出した答えは、とても簡単なものでした。
ある日天使は、幸せな気持ちで空を飛んでいました。先日のかなしんでいた男を、天使が立ち直らせることができたのです。
そして天使は長い長い道の途中でたたずむ別の男を見つけました。
「あなたはなにをしているの?」
天使が問いかけます。
すると男はこう答えました。
「かなしんでいるのさ」
「なら、私も共にあなたのかなしみを背負いましょう」
そう言った天使に、男は激しく憤りました。
「お前の辛気臭い顔を見ているとさらに不機嫌になる! 二度とそんな顔を見せるな!」
罵声を浴びせかける男に、天使は――
天使は幸せでした。
天使は本当に幸せだったのでしょうか。
この後天使がなにをしたのか、この話の続きは人それぞれだと思います。
この話を読んでくださり、ありがとうございました。