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書店部の内部事情  作者: 片羽京介
間のお話「冬の蜃気楼」
97/103

嫌いなところだけさようなら


言い訳は完結させてからしますm(__)mm(__)

m

申し訳ないです

 以上が12月25日の夜に起きた事件の顛末だ。

 亜理亜の発言以降の説明がほぼ皆無なのは観測者たる俺もその当時かなり精神的に参っていたからだ。申し訳ない。

 まあアイスに誰も手をつけなかったあたり他の二人も同様だったのだろうけど。


「そういえばあのお酒ってどこから持ってきたの?」

「多分、悠里が警備の保安室の中にある冷蔵庫から拝借してきたんだと思う」

「……色々とどうなの、それ」


 そもそもいち大学生がどうやったら保安室の冷蔵庫中身など知ることができるんだ? 


「取り入るの上手いからね、悠里」

「……そして離れるのが苦手」


 秋篠さんが一人で笑い、一人でアンニュイな顔をしている。俺が会ったときには彼女はこんな人柄だったけど、ユーリンたちの話を聞くに、つい数年前までは180度別人格……だったらしい。俺なんかに踏み込む余地などないけど、実は凄く気になっている。


「それにしても、一番酒とか飲めないあの二人が5~6本も空けるもんだからビックリしたよ俺」

「根本的にはあの二人って似てるから」


 そう言った秋篠さんの顔は何やら影がかかっていて、負のオーラを惜しみ無くまとっていた。普段はユーリンに亜理亜その他の役者気質の奴等に隠れがちだが、この子も相当に非現実的な側面を持っている。そういうところに非常に惹かれてしまうたちなので、秋篠さんは一目置いている。

 ……さっきから気になっているとか一目置いているとか、遠回しな表現になってしまう諸々の事情はいつか話すことができればいいな。



「そうだね。そう思うよ」

「そう。二人は似ているから。次に合うときに私にどんな顔をするかで、全部分かるの」



 ……………………。


 普段から俺には汲み取れないことを口にする彼女だが、今の発言は分かるようで真意が読めない。秋篠さんの中で思うところはあるけれど、それは二人が付き合っていたことでも、それを隠していたことでもなくて、ユーリンが次にどんな顔をするかで彼女の中のその思いがどうなるか決まる。そんな感じ、なのかな。

 頭でっかちな探偵かぶれに見えて、その実ユーリンには途方もない許容性を見せる。この一点だけは秋篠奈留という少女の明確な本質だと思っているので、多分そういうことなのだと思うのだけど。



「そういえば円城さんは?」

「20分くらい前に着替えてランニングに」


 ええ………今でさえ薄暗いのに。昨日あれだけ日中忙しくて夜からはここの片付け&打ち上げで3時間も眠れていないだろうに。


「凄いな。ここのメンバーは」

「それを言うと和佐くんも」

「え?」

「なんでスマホ充電しないの?」


 ………。

 普段はろくに目も合わせてくれない彼女に、この時ばかりはじっと見つめられていた。

 俺がスマホの電源を切ったのは12月25日の午前7時。もう20時間以上つけていないことになる。俺は日中から誰かしらここのメンバーと一緒にいたから連絡を取り合う必要もなかった。だから電源を切っていることは誰にも話していない。


 それなのに彼女は、充電しないのか、と俺に問う。


 誰かと誰かが別れた話しか眼中にない彼女が、珍しく俺を見ている。


 


 ………クリスマスに別れるのは、珍しいことではない。

 身近で一件あれば、もう一件くらい起きることもあるだろう。


 最終的に秋篠さんも、そんな根拠も無い統計を元にして、俺に言葉を振ったのだろうか。


 ……興味はあるけど、やっぱり苦手だ。



「俺、今は書店部しか興味無いから」


 自分に言い聞かせるようだった。声ってこんなに反響するものなのか?


 薄暗い室内で俺は片付けを再開し、秋篠さんもそれに続いた。

 しかしその最中は獰猛な獣に常に見張られているようで、多分俺の疑心暗鬼なのだろうけど、やはりここの部員は何かズれている気がしてならなかった。

 もちろん俺もその一人だ。とりあえずスマホの電源は、ユーリンと面と向き合っているときに入れさせてもらうとしよう。



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