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書店部の内部事情  作者: 片羽京介
間のお話「冬の蜃気楼」
95/103

五つのフレーバー

二ヶ月お暇を頂きましたm(__)m

完結まで書ききっていますので適宜推敲しながら投稿していきます。


あと少しだけお付き合い頂ければと





 目を覚ますと、俺は薄暗い部屋で横になっていた。

 そこはかなり広く、天井も高くて、何より頬が熱くなるほどの高い気温で満たされていた。


「……?」


 ここはどこだろう。美鈴の家でも瑠璃の家でもない。

 フロア奥で非常口の緑サインがやけに明るく発光している。何かの建物の中か?


「和佐くん?」

「あ……」


 広い部屋の隅で壁に寄りかかりながら本を読みふけっている同級生の秋篠さんに声をかけられ一気に昨日一日のことが思い出された。この新星大学神田キャンパス一号館、通称児童館に泊まったこと。そして……。


「うーわ、夢じゃなかったんだ」


 両手で顔を覆い、現実世知辛さに少し呻いた。

 それは、別に俺の失敗ではない。ただとても身近なことで、自分にも何かできたのではないかという後悔を凄まじいほどに感じている。


「二人のこと、か。まあそうだよね」


 俺の独り言に反応してくれた秋篠さんは、読んでいた本を閉じると、こちらにある書店部の私物であるこたつへと移動してきた。

 色々な意味で未だに制服姿の彼女はとこんな夜明け前に二人きりというのは不思議な気分になってくる。けれどもお互いの今の関心は別のところに。


「秋篠さんは気づいてた?」

「……」


 こちらが何を考えていたのか当ててみせた名探偵様に、当然主語は必要無い。

 とはいえいきなりの核心的質問には少し思案顔だ。


「……一応」



 …………。


 ……。そっかあ。



 俺は深くため息を吐いて、再び顔を覆った。何一つ気づけていなかった自分の鈍い感性にほとほと参っている。


 その二人の内、彼女とは同志として共に切磋琢磨しながら本屋を動かしてきた。

 そして彼とは、何かあれば一緒に行動したくなるようなウマの合う友人として、あるいはあいつが色々とボロボロだった時には道を正す兄として接してきた。

 とにかく色々な思いが二人にはある。なのに。


「なんで気づけなかったかなあ、俺」






 それは、ユーリンと亜理亜が二人してここに戻ってきて間もなくのことだった。


 俺と秋篠さん、それに本部勤務の円城さんを合わせてようやく書店部(一人はコンサルタント)五人が全員揃った。

 俺は満を持して事務所の冷凍庫にしまっていた44アイス六個セットを持ち出し、みんなで食べることを提案した。

 真冬に暖房ガンガンの室内で食べる仕事あがりのアイスほど最高なものは無いことを、当然全員が熟知していた。長い間外にいたらしい二人には少し早いかなとは思ったけれど、意外にも二人ともいつもより高めなテンションで迎え入れてくれた。


 ……この時点で少しおかしかったのだけれど、それも今日という本屋にとっての最繁忙期を終えたことによるランナーズハイ的なものだと思い、皆特に気にはしなかった。


 ユーリンはいつものポッピンシャワーというお子さま向けのフレーバーだと皆予想していたのですんなり収まったが、俺を含む四人はこの時期限定の四種のトッピングについてなかなか決断できずにいた。

 たまに横道に逸れつつアイス選択について議論しているうちにユーリンのポップなやつが溶け始めた(他の五つはまだドライアイス入りの箱の中)ため、一人だけ先に食べてもらうことにした。


 そんな中で、他の二人よりも比較的発言の少なかった秋篠さんが「年末ということで」という前置きと共に、こんな提案をした。



「抱えている秘密を暴露して一番インパクトの強かった人から選ぶっていうのはどうかな」




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