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書店部の内部事情  作者: 片羽京介
第一章『幽霊は舞台で微笑む』
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いつもの水曜日(前編)




いつもの水曜日(前編)



午後の授業については特筆することもなく、先の全校放送事件を小ネタにされはしたものの、終始心中割と穏やかな五月の昼下がりであった。

いや、まあ副会長のとこには顔は出さなきゃなあとは思ってはいたが。


名前が出たということを気にしてなのか、奈留は玲菜に謝っていた。実に律儀だ。大人とはかくあるべき。


……。


…放課後、俺も生徒会副会長の元にいの一番に謝罪にすっ飛んで行ったのは言うまでもない。


規律正しく身の丈も整った本校の副会長からは、「書店部を取り仕切る者として言動には細心の注意を払え」という注意だけ賜るに留まった。


生徒会室を出る際に再度深々と頭を下げ、その場を後にする。


最近、書店部にかまけて学校生活が怠惰になりがちだった為、やはり締めるとこは締めようと

改めて思うのであった。


「ん、瀬名じゃないか」


そんな反省する気分でいた手前、急に声をかけられたのでちょっと反応が遅れてしまった。


「あ、会長どうもです」


目の前に立っていたのは、現生徒会長の三年生、剣崎静華けんざき しずか

先ほどの松方副会長を女性にしてフランクにした感じの方だ。


「その様子では、松方にしっかり注意されたようだな?」

「…自覚が足りなかったです」

「悪口よりかはマシさ。昼休みはアイツと生徒会室でたまたま放送を聞いていたが、むしろ秋篠との関係についての方が気になっていたようだぞ?」


…な、なんすかそれ。

昨今はナイフ持ってるだけで犯罪者扱いされるように、男が男に興味ある素振り見せるだけで同性愛者扱いされるんですよ。


ーーなどという歪んだ風潮を真っ直ぐな剣崎先輩に教える訳にもいかないので、安心しましたとだけ伝える。


先輩とは、彼女が生徒会長になる前から割と親しくしてもらっている。というのも、剣崎先輩は読書家であり、人文・社会関係の小難しい本をよくウチに注文しに来てくれるのだ。


「最近、棚のメンテナンスができていないだろう?オピニオン系のコーナーが左翼よりになっていたぞ?」

「う、すみません…」


その上、一部の大人向けコーナーの商品陳列をチェックしてくれている。大学側から定期的に指示はもらっているのだが、日々の忙しさの中で最近はおろそかにしがちである。


「店長になって間も無いから辛いとは思うが、勉強だと思って何でもやってみることだ。私の後任はお前だと思っているからな」


………。


「はい、ありがとうございます」


「うん。…それで、一応聞いておきたいのだが…」


??


その時、ちょうど生徒会室のドアが開き、松方副会長が顔を覗かせた。


「瀬名、まだいたのか。会長、附属第二よりお電話が」

「…む、わかった。話は次の機会にしよう、瀬名店長」

「了解です。失礼します」


剣崎先輩は足早に生徒会室へと入って行った。

何を聞きたかったのか気になりはしたが、次期生徒会長の話が出たことの方が重要だった。


「…よし、今回こそは順調だ」



以前話した俺の目標。

それは、この学校の生徒会長になることだ。

…理由は、たいしたことじゃない。学生なら学校のトップを目指すことは至極真っ当な目標だろ?


拳を力強く握りしめた後で、俺は放課後の「部活動」へと向かった。






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