書店員、図書委員、文芸部員
コメントをくれた一木さんどうもです( ´ ▽ ` )ノ
サイトの方にコメさせて頂いたんで見てやってください。
「……あれ?」
明かりのない、真っ暗な部屋で目を覚ます。
ここがどこで、いつから眠っていたのか思い出せない。
「………」
えっと、何かあったよな。
パッと思いついたのは「秋篠ならいいお母さんになるんじゃないかな」とかいう寒いセリフだったが。
そうだ。それでアオイと二人して落ち込んで(ここ思い起こすと笑える)、一年生を先に返して……はっ!
「アイツら!」
ようやく覚醒した俺は、一目散に部室を抜け出し店内へ。
「あ、あれ?」
しかし、そこはすでに真っ暗で、ネットもかけられていた。
当然のようにレジも精算されており、明日の雑誌の場所空けや、返品する書籍の伝票処理なども終わっていた。
「んん?俺やったっけか?」
そんな気がしないでもない。何せ週に3〜4回行っている作業なので、閉店業務については習慣化してしまっているからな。
しかし、毎週金曜日に催してきたあのイベントだけは覚えていないはずがない。
あれは俺のライフポイントを犠牲にしたうえでの臨時収入だ。内容は見るに耐えないが、見返りも大きい。
とにかく、あの混沌とした時間だけは、とても流れ作業のようにこなすことは出来ない。
…仕入れた例の書籍たちは見当たらない。
「彼らが勝手に持っていったか?」
ありえなくもない。こちらとしてもクラスメートと一部の後輩以外は把握できていないからだ。
くそ、雰囲気作りにローブ着用なんか義務付けなければ良かった。
「…はあ。一応確認してみるか」
俺は店の電話機を使い、クラスメートに連絡をしてみることにした。
今日は何人集まったか知らないが、少なくともあの酒屋の加藤なら、間違いなくこの場に来ていただろう。
「あ、加藤? 瀬名だけどさ。今日って…」
「ヒッ……!」
ツー、ツー、ツー。
「…なんだ?」
彼の引きつった顔がありありと思い浮かぶ一幕だった。
いつもは豪放磊落な柔道部員である彼が、何をあんなに恐れている?
そこまで思案して、ふとカウンターに目をやったところ…。
「ん、なんか、貼ってあるか?」
薄暗くで気がつかなかったが、電源の落ちたレジジャーナルの画面に白い紙が貼り付けてあるようだ。
不審に思いながらも、彼らが残した伝言だと思ってそれを手に取る。
『生徒会の雑務で残っていたところ、偶然彼らを発見した。昼休みの件も冷めやらぬというのに何をしている?会長に知れれば失望することは間違いない。二度と過ちを犯すな。そしてこの事は金輪際口外するな
松方塔矢』
……。
…卒倒するかと思った。
松方副会長が学校に残っていた?
そしてこの場にいた怪しい集団を見つけ、そればかりかあの本の山を…?
「……最悪だ」
改めて、危険すぎる案件に手を染めていたことを自覚した。
生徒会長への道が途絶えていてもおかしくなかった。
いや、それどころか下手したら停学、退学だ。
「駄目だ。まともにならないと」
今までも時々思っていたが、実際に改善するまでには至っていなかった。
今後は規律に反することは控えよう。そう強く胸に刻みつける俺。
……。
この時、何故か脳裏にあの女の顔が浮かんだ。
何度か過去に同様の経験をした気がするが、この時の俺は心身ともに疲弊の極地であったため、そこまで思考する余裕はなかった。
……。
…。
明けて、土曜日。
半ドンながらも授業あり。
布団で全身を包んでうずくまるという、典型的な「怯えながら寝る」姿勢を解除する。
今日、熱あるかも…。
まあ登校したくない方便なのだが、授業も少なく部活も休みなので、別に休んでもいいんじゃないだろうか。
そんな悪魔の囁きを、松方副会長(俺の想像上の)が一蹴する。
『なりたくないのか?生徒会長に』
…言うかなぁ。ちょっと性格悪そうに聞こえる。
…く、駄目だ。起きて登校せねば!
別に生徒会長なんてまっとうな理由でなりたいわけじゃないんだけど、今となっては高校での俺の最終到達点に定められているんで否応なしに身体が動く。
昨日は第二高校の勢いに共鳴してやる気十分だったが、今日はもう最低限の動作に留めよう。
我ながら落差激しすぎだと思う。
……よーしマジで起きるんだ!
……。
…。
遅刻ギリギリの時間に校門を通過し、始業丁度と共に教室へ滑り込む。
「出た。瀬名店長の重役出勤だぞ!」
クラスメートのギャグにも苦笑いで通過して自分の席へと流れ込む。
途中、数人の生徒(深千代含む)の睨みつけるような視線を感じたが、生憎ダウナーの最下層を這い回る今の俺には何の興味も湧かなかった。
「大丈夫?何かあったの?」
後ろの席の奈留が気遣ってくれたが、それすらも生返事で返す。
うーん、流石にかつての自分を思い出さざるを得ない。
昔ちょっとしたことがあって、俺は割とマジで落ち込んでいたことがあった。
けれども、しばらくしてさらにそれを上回る大事が起こって、テンションが反転したのが昨日までの俺なのだ。
つまり、これこそ俺の真骨頂であり、未来永劫変わることのない魂の在り方なのだ。
…どうせそうなんだ。
……。
…。
「どうしたよユーリ?何だか朝からダラしないな」
一時間目の休み時間。机に突っ伏して我が半生を呪っていると、上から陽気な声が聞こえた。
「そんなんじゃあ本屋から客が遠のいていくぜ?ほら、いつものかけ声やってみろよ?」
「…らっしゃせー」
「お前それじゃあコンビニ店員だぞ。書店員ってのはもっとハートでぶつかっていくものだろう?」
…初耳だねそりゃ。
俺は仕方なく上半身を起こす。目の前には、奈留と塚越圭太が立っていた。
「書店員ってのはむしろ、ハートを秘匿して偽りの笑顔と腰痛と低賃金を武器に戦ってるんだよ」
「瀬名君が自虐ネタ言ってる…」
貴重な体験、とばかりに両腕をワキワキさせる奈留と、やれやれと両肩をすぼめる圭太。どちらも一年生の頃から同じクラスの見知った間柄だ。
「ユーリは人より繊細なんだな。そしてそのツンデレ妹みたいな顔のおかげで甘やかされて育ったから精神的にも未熟なんだ」
「すごい表現を使うなお前は」
言われても全く人物像が浮かんでこない。コイツは上司に状況説明するときポカンとされるタイプだわ。
とは言え、明るく話しかけてくるその感触は悪くない。世間には視線だけで「貴方が心の底から嫌い」と訴えてくる輩もいるというのに。世間、というかご近所さんとこの娘さんだが。
「昨日何かあった?」
奈留の発した言葉にビクッとしたのは、何故か俺と圭太であった。
「…別に」
「…あったんだ」
断言する奈留。昔はこんな人の心に踏み込んでくる奴ではなかったのだけど。
「ま、まあさ。ユーリが元気ないと俺らも心配しちゃうわけよ。今日は部活もないわけだし、放課後はどっか遊びに行こうぜ」
奈留はいの一番に同意し、結局、言葉を濁していた俺も参加することになった。
…多分、断っていたとしても連れ出されていただろう。奈留も含め、この二人はなかなか強引なところがある。
「しょうがねぇな…」
放課後、そんなことを呟きつつ教室からめんどくさそうにして出ると、偶然松方副会長が通りかかって、俺は一目散に逃げ出した。
続




