表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猟師、仏を射ること  作者: 小山 優
4/5

彼らの交わる運命は

 深夜。

 狸の妖術か、それとも自然現象なのか。大嵐の中、猟師は、谷の底を目指していた。

――和尚の目を盗んで出てきたが、多分…………。

 底に到達し、そこにいたのは、

――生きてやがるな。

『…………なんで、なんで攻撃した……!?』

腹から血を流し、朦朧として、しかし生きている狸がいた。

「理由が要るのか? それとも、言ったら納得するのか?」

『黙れ!』

 狸はユラユラと立ち上がり、だが目はしっかりと猟師を睨む。

『僕は……ただ和尚に恩を返したいだけだった! 父さんは、僕達を守るために、希望を守るために戦った! なのに何故僕らは殺されないといけない!?』

 狸の毛が逆立ち、目に血が走る。その姿には、「生命」を渇望する使命感があった。

 その狸を、猟師は睨み返して、

「なら、俺の師匠や兄弟子は、お前達の子供を守るなんて理由で殺されたのか?」

 狸の顔が歪む。

「お前が食べた小鳥には、未来がなかったのか? 芋虫が「子供を守るために」と言って歯向かってきたら、お前は食べるのを諦めるのか?」

 だけど、と言おうとした狸を、猟師が言葉を繋げて遮る。

「結局はお前らの希望なんて、お前らの自意識過剰以外の何物でもないんだよ。わかって――」

『それでも、父さんは僕らのために勇敢に戦ったんだ!』

 狸は自分でも気づいている。言っていることが支離滅裂になっていることが。

『なのにどうして――!?』

「――勇敢だったらジジイとアニキは帰ってくるのかよ!? 戦ったらあいつらの思いは遂げられんのかよ!」

 それは、酸性の雨だったのかも知れない。だが確かに、猟師の頬に塩辛い水が流れた。

『うるさいうるさいウルサイ!』

 狸が狂ったように叫び、その姿が巨大に、醜悪なものに変化していく。

 変化の妖術――その暴走だった。

「わかってる。俺達は引けない」

 猟師が腰から短剣を抜き、構える。狸は猟師の数倍の体格になり、今にも跳びかかろうとする。

「俺たちは解り得ない」

『殺ス!殺ス殺スコロス!』

 両者がそれぞれ叫び、躊躇と葛藤の一瞬の後、

「殺し合おうぜ」

『――――!』

戦いを、始めた。



本文

 夜明けて、血をとめて行きて見ければ、一町ばかり行きて、谷の底に大なる狸の、胸より尖り矢を射通されて、死にて伏せりけり。



訳文

 夜が明けて、血の跡をたどって行ってみると、一町ばかり行って谷の底に、大きな狸が胸に尖り矢を射通されて横になって死んでいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ