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猟師、仏を射ること  作者: 小山 優
2/5

彼が目指す。彼も目指す。

 若い猟師は、その場に座り込んだ。

 一晩中、狸の姿を追い続け、足はそろそろ限界だった。

 途中、逃げ遅れた何匹かを仕留めたが、肝心の一匹を見つけていない。

「…………族長の子供」

 族長は、群れの中の一番妖力が強い狸が選ばれる。無論、それは遺伝していくものだ。

 つまり、逃げ出したあの一匹を仕留めなければ何をしても意味がないし、あれを仕留めさえすれば他はなんでもいい。

 族長、と浮かんで思い出すのは、

「…………師匠」

 自分の祖父にあたる、狩りの師匠だった。

――あのクソ爺…………。

 修行で散々に痛め付けられ、恨みもしたが、それでも大事な祖父だ。

 だが、彼とはあれきり会っていない。

 もし、戦いに勝ったのなら、すぐに狸の追撃に加わり、自分と合流するはずだし、そうしなくとも何かしらの連絡をくれるはずだ。それがないということは――

「あのクソ爺…………」

 可能性の低いことは考えるな、そう教わってきた。だが、

「絶対生きてろよ」

 希望を託すように呟く。

 そう願い、自分は自分の仕事をしなければ、と顔をあげる。

 顔をあげて、遥か遠く、山の上の寺を見つけた。家族で檀家になっている、ゆかりのある寺だ。

――狸を探す間に寄っていくか。妖怪退治の何か良い案をもらえるかもしれない。

 まっすぐいけば一日の距離だが、狸を探しながらだと三日、長くて一週間掛かるだろう。山小屋に寄って装備も整えたい。

――狩る。

 絶対に。

――仲間のために。

 仇討ちのために、祖父のために。

――子供達のために。

 未来のために。

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