父
『ただの家ってのも、刺激がなくていかんな。面白みに欠けるから、少しいたずらしてみるか?』
うちの家の不思議なところは、ベランダの両端がスチール柵じゃないところか。
それ以外は、至って普通だしな。
何をしよう。我が家の七不思議。なんていうのも、面白みがあっていいか?
とりあえず、家の周りと中に、楽しめそうな所がないか、探さないとな。
今日、部下の家にお邪魔した。
馬鹿みたいに飲んだ揚げ句、一人で帰れないくらいになったので、送っていったのだ。
酔い醒ましに、冷たいお茶を飲みながら、少し話をした。
屋内は禁煙だと言うので、ベランダに出てタバコを吸った。
そこで面白い文章を見付けた。
【非常の際には、ここを破って隣戸へ避難できます】
鉄筋作りの高層団地ってのは、面白いところだな。
『あの板、突き破るのに、どれくらい力がいるのだろう』
とうとうやってしまった……。
母さん怒るかなぁ? それよりも、みんなどんな反応をするだろう。
母さんは……、呆れるだけか。
お姉ちゃんは……、以外と冷めているからな。無反応かな?
アイツは……、頭が良いからな、無駄か……。
『なんだ。面白みの薄い家族だな。まあいいか、放置しておこう。俺達がもし、引っ越しをしたら、その後に入ってくる人が、ビックリするだろうし……』
ベランダの両端の壁に書かれた、【非常の際には、ここを破って隣戸へ避難できます】の文字を見て。
『ただ、そのビックリした人の顔を見れないのが、残念だな。また、違う事でも考えるか……』
本当に些細な、ちょっとしたコメディ?




