第9話 進化!これがダリアの真骨頂
防戦一方の試合を、ディエールは楽しそうに見ていた。
瞬きをしながら、まだかまだかとその時を待つ。
「あら、防戦一方のようね。これならモネの圧勝は間違いないわ...やっぱり教え子のすごさは教師のすごさってことよね?」
その戦いを見ながら、エーテルはディエールを嘲笑う。
「ぬかせ、どうせ今のうちだ...」
「負け惜しみね。あーあ、Eクラスになると下手な負け惜しみもできないのね」
エーテルが必要に以上に挑発するが、ディエールはただひたすらにダリアを見つめる。
苦戦するダリアの瞳には、まだ勝利への渇望があった。
ディエールはエーテルのほうを振り向き、フンと鼻を鳴らす。
「入学時に出されたクラスなんて、特に意味はない。大事なのは、その後どうするか...それを怠る奴は、とことん下に落ちる。それがこの学園の仕組みなんだ」
「まだ負け惜しみをするつもり?それで、何が言いたいわけ?」
苛立つエーテルを横目に、ディエールはダリアのほうを見つめた。
ディエールは笑みを浮かべた。
「俺が言うまでもない...あれを見てみるんだな」
そう言って、ディエールは彼女にダリアたちの戦いを見るよう促した。
エーテルが会場のほうに視線を落とした、その時だった。
ダリアはモネの攻撃をすんでのところで回避し始めていた。
!
ずっと攻撃を食らってきて、わかってきた。
ダリアはモネの攻撃を見ていくうちに、だんだんと似たような何かをつかみ始めていた。
目の前に移る光景が、森で木の実を採っていた光景と重なる。
目の前に来る木々を避けていくあの感触。
そして、今までディエールとの特訓で身についた、次に人が狙ってくる箇所。
それらが合わさって、どこに攻撃が来るのかがすべて見える。
いける...!次回避して、そこから一気に勝負をかける...!
モネの攻撃がダリアの前に来る。
ダリアが回避すると同時に、ヒュン。と、空振りの音が会場に響く。
「なんなのよ...」
さっきまで防戦一方だったじゃない...なのに、急に攻撃を回避し始めた...。普通ダメージを食らえば食らうほど、弱体化していくものでしょう?
モネは歯ぎしりをする。
偶然ではない。一発、二発、そして三発。全て攻撃を鮮やかに回避していく。
目の前にいる男は、確実に進化していた。
彼女の瞳は、絶望に満ちていた。
なのにどうして、目の前にいるコイツは強くなっていくの...?目の前にいるのは、れっきとした『生き物』でしょう...!?
不可侵の攻撃は、いつの間にかすべてダリアにかわされていた。
モネの懐に、ついにダリアがもぐりこむ。
その瞬間モネは敗北を確信し、脱力するようにフッと笑った。
「ああ...私は怪物を目覚めさせてしまったのね」
直後、拳が彼女を突き抜けるようにめり込む。
グラリと視界が歪んでいき、彼女はその場で気絶した。
「勝者、ダリア・メルデス選手!よってこの勝負、チーム『361』の勝利!」
え、僕たちのチーム名って『361』なの?
どよめきと歓声が入り混じる会場、そこでダリアはふと思った。
もちろん、名づけ親はディエーゴである。
観客席に戻ったダリア、彼の帰還とともに、ゼーラたちは彼を手厚く迎え入れた。
おめでとー!そう言って、ゼーラはダリアに抱き着いた。
「ちょっと、ゼーラ!?」
ダリアは赤面し、ゼーラを引き離そうとする。
しかしゼーラは魔法でも使っているのか、彼女はダリアの体から離れない。
「それにしても、よく勝てたよね」アルゼーヌが言う。
「まあね。けど、結構ぎりぎりだったんだ。魔力も結構削られたと思うし...もしかしたら、あともうちょっとでやられてたかも」
自信なく答えるダリア。
しかしその光景を見ていたディエーゴは、不満いっぱいの顔であった。
正直、俺はあいつに嫉妬してる。これからは仲間じゃなくて、俺はオマエをライバルとして見てやるよ。
「嘘つけ、限界だったらもっと苦戦するはずだろ。このディエーゴが保証するぜ」
「ん-まあ...なんかいけたんだよ。過去の経験があったから...みたいな?」
煮え切らない回答に、ディエーゴは納得できなかった。
「そういえば、どうしてチーム名を361にしたの?ディエーゴ」
「あ?もしかして気がついてなかったのか?」
へへ。と乾いた笑いをする。
「語呂だよ、語呂」
ダリアは考える。
アルファベット、音訓読み、思いついたものに当てはめてみる。
しかし、どれもピンとこない。
「鈍いな、お前」
ニヤリと、アルゼーヌが笑う。
わかったと言わんばかりの顔で、ダリアに耳打ちする。
「361、つまりダリアって意味だよ」
「え?」
チラリとディエーゴの方を見る。
彼に顔は、明らかに赤面していた。
「ほ、ほら...あれだ。 3はABCのCだけどあえてDにして、6はなんか...『リ』って読めるだろ?それで1は五十音の最初の『ア』を意識してんだよ!」
「苦しいよ、ディエーゴ...」
「ウルセェ!」
牙を向けて、アルゼーヌに怒号を浴びせた。
しかし、彼は堪えるように腹を押さえて笑っていた。
「やあ、ダリア君」
鈴のような声が響く。
その正体はもちろんアローネだ。
彼女は呆然とするダリアの表情を見て、くすっと笑う。
そして周りにも聞こえるように大きな声で、ダリアに言った。
「一回戦突破おめでとう。これでようやく、私とあなたで戦えるね」
「ああ...はい。ですができれば、手加減してくれると嬉しいです...」
彼女はどうかなー。と言って、いたずらっぽく笑う。
あー...絶対手加減してくれない。どうしよう...僕、最悪死ぬかもしれない。
内心呆然としているダリアをよそに、アローネは風に髪を乗せて去ってしまった。
「どうしましょうか...次の対戦相手はAクラスですが、編成でも変えますか?」
ヘルメスが言う。
「ああ、そうだな。このディエーゴに言わせてみれば、最初にダリア、次にゼーラ、その次にアルゼーヌ。四番目は俺、そして最後はヘルメスでどうだ?」
「うん、僕もこれでいいとおもう。まあ、最初なのは少し緊張するけれど...」
初戦はやっぱり大事だもんな...できることなら最初に勝って士気を上げたいところだけど...。
ダリアの脳内に、アローネの姿が横切る。
たぶん無理だよなぁ...。
心の中で、すでにダリアは勝負をあきらめかけていた。
!
来る二戦目。
ダリアは目の前にいる敵に絶望しながら、静かに戦闘態勢に入る。
なんでよりにもよってアローネさんなんだ...!?
「おいおい、なんで最初があの人なんだよ!?」
ディエーゴの悲鳴に近い声がつんざく。
対戦相手のアローネは、杖を取り出して構えた。
「奇遇だね...私も君と一緒で『最初から本気で叩き潰す』のが大好きなんだ」
獲物を見つけた猛獣の目で、ダリアを見つめる。
静かな静寂がしばらく流れる。
しばらくして、審判がようやく開始の合図をした。
「はじめ!」という言葉とともに、ダリアは一瞬でアローネの懐に潜り込む。
ダリアは思い切りその拳をふるった。
瞬間、ダリアの体勢は崩れ、まるで磁石のようにくっつくようにして地面に伏せた。
重苦しさで、思わず呼吸を忘れそうになる。
「なんだ...?まさか、重力...?」
「ご名答だよ。これが私が得意とする魔法の一つの、重力魔法だ。まあただ、君ならすぐ重力魔法を抜けられるだろう?」
彼女の目には、ダリアの内に秘める可能性が見えていた。
しかし彼女の期待とは裏腹に、ダリアの体は先ほどの疲労によって限界を迎えつつあった。
ダリアはボロボロの体を何とか持ち上げる。
そして重苦しい空気の中、今一度構えをとった。
「さすがだね...じゃあ、これはどうかな?」
直後、数百を優に超える魔法陣が展開される。
重力魔法の次は炎、雷といった無数の基本魔法の連続だった。
パチン。と乾いた音が響き渡る。
それを合図に、ソレは放たれた。
ダリアは腕を交差させ、防御しようとする。
しかし魔法の量が多すぎるがゆえに、ダリアの腕だけでは足りなかった。
攻撃が止んで、舞った土煙の中からダリアが現れる。
しかし、彼の服はすでにぼろ布のようになっていた。
腕からは大量の血が流れ出ており、見ている観客は思わず目を背けた。
薄れゆく視界の中、ダリアは苦笑いを浮かべる。
「やっぱり強化魔法じゃ...勝てないのか。これが強化魔法の限界...なの?」
そんな中、無情にもアローネは次の魔法を発動させていた。
パチン。と、再び乾いた音が響き渡る。
その魔法は放たれてダリアに直撃した。
くっそぉ...もっと力を...いや、遠距離にも対応できる何かが欲しい...!
ダリアはついに気を失った。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
読者様には主人公が最強に成り上がっていく、そのさまを長い目で見守ってくれたらなと思います!
何かおかしな点があれば報告してください!通知が来たら爆速で書き直しますので(笑)
☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします!!




