第8話 接戦!決死の決断
始まりの時が近づいている二回戦目、ディエーゴは目の前にいる敵を確かに捉え、いつでも魔法を出せるように戦闘態勢に入る。
しかし向こうの男は、弱そうな見た目をしているものの、悠然と彼を見つめていた。
ディエーゴはその立ち振る舞いに苛立ちを覚え、見えないように歯ぎしりをする。
「それでは、戦闘開始!」
審判の声が再び会場に響き渡る。
最初に攻撃を繰り出したのはディエーゴだった。
彼はためらうことなく爆破魔法を発動し、その魔法はまごうことなく男のほうに飛んで行く。
「...へッ!甘いな」
男は待ってましたと言わんばかりに杖を取り出し、魔法を発動した。
すると魔法の軌道は真反対へと方向を変え、ディエーゴに照準を変更した。
ドゴォン!
鼓膜を破るような音が、あたりに響き渡る。
「くそっ...!」
ディエーゴは自身の放った爆破魔法をもろに食らい、多大なるダメージを負ってしまった。
炭だらけの体になりながらも、彼は何とか立ち上がった。
しかし彼は両手を上げ、「降参だ」と言って降伏した。
「なんで一撃食らっただけでやめた。いくら僕のほうが優れていても、戦わなければならないのが魔法使いのあるべき姿じゃないのか?」
「まあそうかもな」
だが。と、ディエーゴは言葉を付け加える。
「でもあいにく、俺は利口なんだ」
それだけ言って、ディエーゴは戦場から去って行った。
「チっ...なんなんだアイツは」
勝ったという実感がわかない男は、歓声に包まれる中静かに舌打ちをした。
戦場から観客席へつながる一本道、そこでディエーゴとアルゼーヌは出会った。
アルゼーヌは彼を見つけると駆け寄り、問いただした。
「どうしてあそこで降参を?」
「何度も言わせるなよ。本当に勝てないと判断したのさ」
しかしその言葉には裏があった。
爆破魔法は無理をすれば会場を巻き込むほどの破壊力。
そんな火力を出してしまえば、試験は中止になる可能性があった。
「それに気を付けたほうがいいぞ。あいつらなかなかの実力を持ってる」
それじゃあな。とだけ言って、ディエーゴはアルゼーヌの前から姿を消していった。
戻ったら、多分ゼーラたちに怒られるんだろーな。
彼の背後を見て、アルゼーヌは覚悟を決め、強くこぶしを握り締めた。
!
戦いの中間である三回戦目。
アルゼーヌはここで勝たなければという強い責任感を抱き、杖を構えた。
そして対戦相手の大柄な男も、また杖を取り出し、互いに戦闘態勢へ移行した。
「それでは第三回戦目、はじめ!」
審判が合図をするが、どちらも微動だにしない。
お互い様子を探り合って、魔法を発動するタイミングをうかがっていた。
その静寂に耐えきれずに魔法を発動したのは、男だった。
「くらいやがれ!」
男は炎魔法を発動し、アルゼーヌを攻撃しようとした。
しかし、アルゼーヌは微動だにしない。
瞬間、男の眼前に炎魔法が迫る。
「なんだそれ...!?」
直後、大きな爆発音が会場に鳴り響いた。
その後、会場に煙が立ち込め始めた。
煙の中心には男が立っており、震えるからだを起こしながらゆっくりと杖を向ける。
今度こそ!そう言わんばかりに雷魔法を発動した。
しかし、今度もアルゼーヌに向けたはずの雷魔法は男の目の前にあった。
視界が弾け、またもや直撃してしまう。
メカニズムを理解できていない男は苛立ちを覚え、今度は最高出力の魔法でアルゼーヌを倒すことにした。
「雷魔法と炎魔法の融合魔法だ!こいつで終わりにしてやるぜぇ!」
男は自身の持つ魔力をすべて使い、その融合魔法をアルゼーヌへと向けて発射した。
しかし今度も、男の目の前には自身が放った魔法があり、またも自身の魔法に直撃した。
そして今度こそ、男は倒れた。
「交換は僕も十八番なんだ」
アルゼーヌの口には笑みが溢れていた。
「勝者アルゼーヌ・ロメオ選手!」
こうして、ダリアたちのチームは二本を先取し、ついに勝利まであと一歩のところまで来たのだった。
!
そして大事な一戦となる四戦目。
大事な試合になってしまったと、ヘルメスは観衆の視線に恐怖しながらも戦場に降り立った。
そんな彼女の目の前にいるのはまたしても男。
しかも、体系はヘルメスよりもいい。
「それでは第四試合、開始!」
審判の合図とともに、ヘルメスは肺の中いっぱいに空気を取り入れる。
大きな声で、呪殺魔法を発動した。
「ほ、骨なんか折れちゃえーーー!!」
大きく響き渡った声だったが、その声には何の魔力も込められていなかった。
魔法は不発に終わった。
原因は、ただのヘルメスによる躊躇いであった。
「へっ、呪殺魔法って聞いたから内心驚いてたが、まさか不発とは思てなかったぜ!食らいな!」
男は土魔法で落とし穴を作成し、ヘルメスを落とし穴にはめた。
そして何をするのかと思えば、風魔法でヘルメスを観客席に戻してしまったのだった。
呆然とする一同に、男はヘルメスを見つめて言った。
「弱者をいたぶる趣味はない...これで俺の勝ちだ。そうだろ、審判?」
男は振り向き、審判をにらむ。
審判はしばらく考えた末に、男を勝者とみなした。
この勝負はダリアたちにとっては屈辱的であり、納得のいかない勝負であった。
!
二対二、互いにあと一本取れば勝利の第五戦目。
勝負を決める一線であるということを自覚していたダリアだったが、特に緊張はしていなかった。
この雰囲気、なんだか村の時と一緒だな。
なんて思いながらも、ダリアは目の前にいる女性を前に、戦闘態勢に入った。
目の前の女性、モネはただ卑しく笑ってダリアを心から見下していた。
その光景を、ディエーゴたちやディエールが見守る。
「あいつにヤなとさせちまったかな」ディエーゴが言う。
「正直、強化魔法じゃ勝てる見込みはゼロに近いかも...」アルゼーヌが言った。
「みんな落ち着いて!あいつがこんなところで負けるわけないよ!」
ゼーラは暗くなった一同の気分を上げるように、大きな声で明るく言った。
「そうですよ、ダリア君はあなたたちが思っているよりもずっと強いですから!」
それもそうかもな。ディエーゴはそう言って、ダリアの戦闘が始まるまで、固唾をのんで待っていた。
そうしてしばらくの静寂が流れ、審判の合図が下りる。
「それでは第五試合、はじめ!」
瞬間、ダリアは思い切り地面を踏んでモネに接近する。
パチン。と乾いた音が響き渡る。
直後、見えない何かがダリアの腹部を貫いた。
まるで鈍器に殴られたかのような、そんな痛みだった。
「もう少し考えて動いたらどう?単調すぎて面白くないわね」
そう嘲笑うと、再び指を鳴らす。
一撃一撃が見えないというのもあり、すべての攻撃がダリアに命中する。
「おいおい、ありゃーないぜ...」
ディエーゴは必死にモネの攻撃を耐えるダリアを見ながら、そう言葉を漏らした。
そんなディエーゴを見て、アルゼーヌは首をかしげる。
「何がやばいの?」
「見てわかんないのか...あいつは、Bクラス以上の実力者とも渡り合えるほどの強さだってこと...」
アルゼーヌは目を見開く。
確かな動揺が、そこにはあった。
「なんだって...!?それじゃあダリアは...」
ああ..。
ディエーゴは冷汗をかき、目を見開きながら言った。
「負ける...それも、もっともみじめな負け方をな...」
ディエーゴが絶望している間にも、ダリアの魔力は削られていく。
強化魔法を使用した状態であっても、モネの使う見えない攻撃は凶悪であった。
いったい...どうしたらいいんだ。
ダリアは心の中で、ぽつりと弱音を吐いていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
読者様には主人公が最強に成り上がっていく、そのさまを長い目で見守ってくれたらなと思います!
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