第5話 特訓!強くなるために
日が暮れはじめ、各々の生徒が帰り始める頃に、ゼーラたちは人気のない場所に移動し、作戦会議を始めた。
内容はもちろん、第一次試験についての話だ。
「それじゃあ作戦を立てましょうか。まず、予選は私が出る。多くの魔法を使える私のほうが予選では勝ちやすいでしょう?」
彼女の問いかけに、全員が首を縦に振った。
全員の考えは一緒だった。
するとディエーゴが小さく笑い、口を開けた。
「全員一致ってわけだ。なら後は決勝戦の順番だ。俺が配置するならば...最初はゼーラ、そして次は俺、三番目にアルゼーヌ、四番目にヘルメス、そして最後にダリアだ」
「どうしてダリアが五番目なの?別にあの子なら問題ないわよ。それ―」
違う。
ディエーゴはゼーラの言葉を途中で遮り、彼の意見を言った。
「ダリアは俺たちの切り札であり、ジョーカーだ。それも、場をひっくり返せるような...」
アルゼーヌとヘルメスは不安そうな顔を浮かべているが、ゼーラとディエーゴは納得であった。
「ちょっと!どうして僕が三番目なんだ!いくら転移魔法でも無理だよ!」
話にひと段落がついた時、アルゼーヌが心の中にあったわだかまりをぶちまけた。
しかし一同はポカンとした様子で、首をかしげている。
そんななか、笑いながらディエーゴは答えた。
「だって、転移魔法なんだろ?やりようによっちゃあ勝てるだろ」
「なんでぇ!?」
はいはい、説明はあとでしてやるからな~。
ディエーゴはいたずらに笑って、アルゼーヌの話題をそらした。
「それで、後はヘルメスちゃんの魔法なんだけど、いい方法を思いついたんだー」
「ほぉ、それはいったいなんだ?」
彼女はフンッ。と鼻を鳴らした。
「 特 訓 よ !」
脳筋かよお前は。
ディエーゴは心の中で突っ込みを入れた。
しかし呪殺魔法を制御するにあたって、特訓以外でその魔法を制御する手段はなかった。
「それじゃあヘルメスちゃん、一緒に特訓しよっか。ディエーゴはアルゼーヌ君に説明しておいて―」
「あいよ」
「うん!」
ディエーゴとヘルメスはたがいに了承し、ダリア抜きの作戦会議はこれにて終了した。
!
「それで、お前は特訓するのか?」
ディエールに問われたが、ダリアの心の中ではもうすでに答えは決まっていた。
学園長が言っていた、『魔法は守る力でもあり、何かに立ち向かう力である』
その言葉が、その決断の決め手だった。
「過去、僕はゼーラを守れなかった。だから次こそはゼーラを...いや、みんなを守れるような、そんな勇者になりたい!」
ふっ、やっぱりそう来るよな...。
ディエールは心の中で笑い、戦闘態勢に入った。
「特訓内容は簡単だ。俺に一発でも当てれば今日は合格。当てられるまで、もちろんこの学園から出させないからな」
えー...それはちょっとやりすぎなのでは?
彼のスパルタ性に、ダリアは一歩たじろいだ。
その瞬間、彼の拳が眼前にまで迫り、確実にダリアを殺しにかかる。
一度よけるが、気が付けばまた彼の拳が視界を覆う。
僕と同タイプなのか...!?
その驚きとともに、浴びせられる何十もの拳を回避し、一度距離をとる。
たった少しの攻防なのに、ダリアの体にはいくつかかすり傷ができていた。
しかし真実、強化魔法を発動しているダリアと手加減をしているディエールの実力は、ほぼ同等に近かった。
疲弊するダリアを見て、ディエールはため息をつき、口を開ける。
「よく考え、学ぶんだ。この動きをすれば確実に負ける。ならどうするのか?このサイクルを延々と繰り返していくんだ。今のアドバイスを基にもう一度だ、こい」
ダリアは勢いよく飛びだし、ディエールに接近する。
そして標的を確かに見定め、確実にそこへ向けて一撃を放った。
しかし、ダリアの拳はいとも簡単に止められてしまう。
「いいパンチラインだ」
その言葉の次には、また同様のラッシュが待っていた。
先ほどと同様によけ続ける一方で、ダリアの脳内はディエールの行動パターンをインプットしていった。
次の一撃が入る直前、ダリアの体はその一撃を躱し、完全にディエールの間合いに入った。
いける...!
確信と同時に、強化魔法の出力が上昇する。
一撃が炸裂すると思った瞬間、ディエールのスピードが見違えるように変化した。
まるで瞬間移動のような移動を見せられると同時に、ダリアの頬には強烈な衝撃が走った。
それは彼が手加減を緩めた証拠でもあった。
ドカンッ!という音ともに、遠くに吹き飛ぶ。
仰向けになった体を起こし、ダリアは眉間にしわを寄せてディエールをにらんだ。
「先生、さすがにやりすぎですよ!」
「悪い...手加減というものをしてこなかったから、あまり慣れていないんだ」
へへ。と、ディエールは鼻を触りながら笑った。
「まあただ、訓練はこのくらいでいいだろう。今日は、お前の動きのくせを学ぶだけだったからな」
なんだか違和感があるけど...先生がいいならいいかな。
ダリアはそんな疑問を胸にしまい、その真っ白な空間から退出した。
真っ白な空間に一人残されたディエール、彼はダリアがいなくなるのを確認し、ふぅとため息をつく。
「とんでもねぇ野郎だ...まさか、一発見ただけで俺の攻撃のくせを見切るなんて」
ディエールは、別に手加減をすることに慣れていないわけではない。
むしろそういったことをするのは大の得意である。
しかしダリアのあの攻撃は、ディエールの手加減では対処できなかったのだ。
「本当に、いつもお前たちは俺を驚かせてくれるよな...」
ツーッ。と冷や汗が頬を伝っていく。
ディエールはぽつりとそうつぶやいて、ダリアの後を追うようにしてその空間から退出した。
!
夜も更けて、空は鮮やかな藍色で彩っている。
学園のあちらこちらでは、夜になると自動的に灯るろうそくが、あたりを照らしていた。
そんな時間に、特訓を終えたゼーラたちとダリアは出会った。
双方互いの存在に気が付くと、あっ。と驚いたような顔をする。
先に口を開いたのは、ゼーラだった。
「どーこいってたの。君がいない間に、もう決勝戦の順番決めちゃったわよー?」
「うそ...だけど多分、僕は五番目でしょ」
ダリアの発言に、ゼーラは思わず彼から視線をそらした。
「図星なんだね...まあわかってはいたけれども」
「そう気を落とすな。お前の真価は次の試験で発揮すればいい。今回は、俺たちに任せておけばいいってだけだ」
それもなんだか嫌なんだけどな...。
ダリアが心の中でそうつぶやいた時だった。
彼の視界の右端に、五つの人影が写る。
思わず右を向くと、そこには男4人女1人が仲良く、横一列に並んでこちらに迫ってきていた。
彼らの口もとはゆがんでおり、とてもいい印象ではなかった。
「あれ、君たちは...」
右端にいた細身の男が、ディエーゴの胸部にある木材で作られた文様を見ると、先ほどまで歪んでいた口元が、さらにゆがむ。
そんな男の胸部には、鉄___Dクラスの文様が彫られていた。
「なぁんだEクラスか~!こぉんな夜遅くになにしてたの~?まさか、特訓ごっこか?」
その言葉の後、男たちは笑った。
男がダリアたちを挑発していると、一人の女がそれを止めた。
「やめなさい。確かに雑魚を見下しているといい気分にはなるけれど、Eクラスなんかに挑発したところで、何も意味はないわ」
彼女の視界に、ダリアたちは映っていなかった。
「雑魚なんか相手にしてないで、早く帰るわよ」
女の指揮のもと、五人は不満と憤りをダリアたちの心に植え付けさせ、その場を去ろうとした。
しかし、ダリアは彼女たちを帰す気はなかった。
自分が馬鹿にされている分にはよかった。
しかし、彼女たちの努力を馬鹿にするのだけは、どうしても許せなかった。
気がつけばダリアは地面を強く踏み込み、その女を殴ろうとしていた。
憎たらしい紫の瞳目掛けて、拳を振るう。
直後、空気を切り裂くような音が響き渡る。
ダリアは衝撃波のような何かに吹き飛ばされた。
「ぐっ...!」
彼の体はゼーラたちの間をすり抜け、やがて地面に激突した。
「ちょっと!急に何するのよ!」
ゼーラは怒りをあらわにし、その女をにらみつける。
ただ彼女はゼーラとは違って冷静であり、いたってまっとうな意見を彼女に伝えた。
「先に攻撃を仕掛けてきたのはそっちで、私は正当防衛をしただけに過ぎないわ」
ゴミを見るように冷たく、目の前にいる弱者を見つめる。
「それなのに、あなたは私を悪者扱いするの?あなたは理解する力がないの?それとも、理解する脳さえないのかしら?」
ゼーラが何も言い返せずにいると、ディエーゴが彼女の前に立ち、代弁した。
「確かにお前は正当防衛をした。そこは認める。が、やりすぎだ。お前なら、軽い拘束魔法も使えるはずだ」
私はね...。
そう言って、女たち五人はゼーラたちの横を通り過ぎてゆく。
そしてディエーゴの横を女が通った瞬間、彼にささやいた。
「私は雑魚を見下し、痛めつけるのが趣味なのよ」
それだけを言い残して、五人はその場から去って行った。
チっ...胸糞わりぃ。
ディエーゴは悔しさを押しつぶすかのようにして、拳を強く握った。
その後ゼーラたちはダリアに駆け寄り、心配の声をかけた。
ダリアの体に支障はなかった。
その光景を、ディエールは隠れて見つめていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
読者様には主人公が最強に成り上がっていく、そのさまを長い目で見守ってくれたらなと思います!
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