第4話 結成!これが僕たちのチームだ
朝になり、ダリアは昨日のように、ドアをくぐって自分の席に着く。
胸に、一つの疑問を抱いて。
明日話してくれるとディエール先生は言ってたけど、いつ話してくれるんだろうか...。
それだけが気がかりだった。
ガラリと扉を開けて、ダリアは自身の席に着く。
それに続くようにして、ディエールは扉を開けて教壇に立ち、話を始めた。
「一か月後に迫る第一次試験だが、内容がおおよそ決まった。今回は五対五の戦いで、トーナメント戦を行うつもりだ」
説明しながら、あたりを一瞥する。
「予選は代表者一人、決勝は五人全員で、向こうのチームと一対一で戦ってゆく。そして先に三回勝てば勝ち。といった形式だ。予選で三回以上負けたやつは不合格で、それ以外は合格。だが、このクラスの中でチームを組むのが前提だ。以上だ」
全員の目つきが変わった。
皆が思っていたこと、それは『強い奴とチームを組むこと』だった。
「それじゃあ、今からチームを組んでもらおうか」
当然自己紹介で強化魔法と口にしたダリアには、近づいてくる人はいなかった。
それとは対になるように、ゼーラの周りには人だかりができていた。
ゼーラは確かいろんな魔法が使えるんだっけ...Eクラスの中では、かなり重要な存在だよね。
しかし彼女は群がる生徒たちをかき分け、ダリアの前に来た。
ダリアは少しの間ポカンとし、ようやく口を開ける。
「どうして?」
「...やっぱりさ、私は君と一緒にいたいんだ。ほら...前は私が勝手に村から出て行っちゃったからさ」
「......ありがとう。やっぱりゼーラがいると心強いな」
ダリアは久方ぶりの安心感を覚えた。
確かあの時も守られてたっけ...なんて思いながら、ゼーラのほうを見つめた。
彼女は先ほど押し寄せてきた生徒たちのほうを振り返ると、やわらかい口調でこう返した。
「ごめんねー、私この子と一緒の村にいたことがあるから、この子と一緒になりたいんだよねー。それに、魔法だけで判断する人とは、私一緒になりたくないしねー」
ギュッ。と、ゼーラはダリアの腕に抱きつく。
しかし彼女の表情に、笑顔はなかった。
「ふーん、じゃあ俺たちはいいってわけだ」
静寂の中、一人の男が声を上げた。
体格はディエールよりも大柄ではあるが、やや身長が小さい。
だがその鋭い目つきと、胡坐をかくほどの強気な姿勢があれば、雰囲気は十分だった。
「やめようよ...別に—」
青年の隣にはもう一人の青年がいた。
垂れた目を必死に見開き、青年を制止しようとしている。
しかし、もう一人の青年は彼の制止を振り払った。
「いいだろ。どうせ俺たちをメンバーに入れてくれる奴はいない。なら、孤立してる奴らと組んだほうが合理的だろ」
馬鹿そうな見た目をしている割には、彼は狡猾であった。
本当は合理的だから...というのは嘘だ。これはあくまで勘だが、あいつはとんでもなくビッグになるような気がするんだ。
「いいけど、一応聞いておくね...目的は?」
「別に何もねぇよ。ただ俺たちは、この試験で脱落したくないだけさ」
しかしそれでもなお警戒を怠らないゼーラを見て、青年はため息をついた。
「改めて自己紹介させてもらう。俺の名前はディエーゴ・アレスタイン、得意魔法は爆破魔法だ...これで満足か?」
ディエーゴの説明を聞いて、ゼーラは他意はないことを理解した。
「わかった、私たちはあなたたちを歓迎する。それで、隣にいるのは...アルゼーヌ君だね?」
名前呼ばれたからか、アルゼーヌは小恥ずかしそうにしながら前に出た。
前に出てもなお話そうとしないアルゼーヌを見て、ディエーゴは彼の背中を強くたたいた。
「ぼ...僕の名前はアルゼーヌ・ロメオ。得意魔法は、て...転移魔法...です」
転移魔法に爆破魔法...転移はともかく、爆破魔法は強力だ。Eクラスの中でもいい戦力を手に入れられたといえるんじゃないだろうか?
ダリアは席を立ち、二人の元まで行くと、手を差し出した。
「僕の名前はダリア・メルデス。これからよろしくね」
「ああ。こちらこそよろしくな」
ダリアとディエーゴは熱い握手を交わし、正式に彼らはダリアたちのチームに加入することになった。
その後、ほかの生徒たちも各々チームを組み、やがて一人の少女だけが残った。
規律正しい黒髪に黄土色の瞳。
その容姿から、ダリアはある名前を思い出した。
「確かあの子は...ヘルメスだっけ」
そうダリアがつぶやいた時、ディエールは彼女に視線を飛ばした。
少女は不安そうな目で彼を見つめ、なんとかしてと言わんばかりに目で訴えた。
ディエールはため息をつくと、ダリアのほうを向いて言った。
「お前たち、ヘルメスをチームに入れてやってくれないか」
僕以外のチームメンバーが怪訝な表情をする。
彼女の得意魔法は呪殺魔法、呪い殺すことを主とした魔法であるがゆえに強力ではあるが、周りにも被害が出てしまうというデメリットがあった。
「安心しろ、周りに被害が出ないように、俺が何とかしてやる。だからお前たちにとっては、紛れもなく強力な戦力だ。まあただ、殺す以外であると助かるんだが...」
「ありがとうせんせー。じゃあヘルメスちゃん、おいでー」
まるで初めて飼い主の家に来た幼い猫のように、ヘルメスは歩を進め、ダリアたちのもとにまで来た。
しかしそれとは対照的に、窓側にあった植物が徐々に生気を失っていく。
「ヘルメス・ゴーンって言います」
「僕はダリア・メルデス。よろしくね」
ダリアは彼女の緊張を和らげようとして、朗らかな笑みを浮かべた。
それにつられて、彼女の口角がほんのり上がった。
「よし、ようやくチームが決まったな。それじゃあ授業を始めようか。まずは、魔法を知るうえで必ず知らなければならない歴史からだ」
こうして計7チームが結成され、ディエールによる授業がスタートした。
「今から1000年前、魔族と人間の戦争が終わり、世界は平和になった」
コンコンと、チョークを黒板に叩きながらディエールは教えていく。
「魔族との戦いで前線に立ち、そして最高戦力の魔王を打ち破った勇者エディタ・アドレとその一行はたたえられ、今でもシンボルとしてこの世界に愛されている。学園の噴水に置かれている像がいい例だ。そして―」
彼の授業は完璧であり、濃密かつ正確だった。
それはもうEクラスの教師なのかと疑うほどに、知識が豊富だった。
しかし、気が付けばダリアの瞼は重くなってゆき、彼の視界は真っ黒に染まった。
!
「お前に用がある。今から、とある場所についてきてもらう。もちろん、俺とお前の二人きりでだ」
一日の授業(睡眠)が終わって、荷物をまとめる。
軽い足取りでその場から去ろうとした時だった。
帰ろうとするダリアを、ディエールが止めた。
彼が真剣な顔つきで言うので、ダリアもすぐに事情を察した。
「わかりました。行きましょうか」
そうしてたどり着いた空間は質素で、あたりの壁は純白のペンキを塗ったのかと思うほどの白さだった。
「お前は冒頭から寝ていたが、俺が話していた戦争の話を覚えているか?」
「ええ、戦争が終わって、魔王を打ち取ったエディタ・アドレ。その人が、今もなお愛されているということは...」
ディエールははぁとため息をついた。
「お前、ほとんど聞いていないな...まあいい。1000年前、現在お前たちが使用している『魔法』だが、以前は別の呼ばれ方だった...なんだと思う?」
ディエールに問われてダリアはしばらくの間考えたが、『人知を超えた力』とか『なんかかっこよくてすげーやつ』とかしか思い浮かばなかった。
「すいません...わかんないです」
「まあそうだろうな」
じゃあ聞いてくるな!とダリアは心の中で叫ぶ。
「魔法の別称...それは『スキル』だ。まあ魔法とスキルは少し違うんだが...当時『スキル』は一人の人間につき一人までだと考えられていた」
はぁ。とディエールは息をつく
「不便だと思うが、案外バランスの取れたいい世界ではあった。だからこそ、今の世界が気に入らない者たちというのは存在する。そう言った奴らが集まってできた組織『ジーノルタス』。その一人と、昨日お前は戦った」
ジーノルタス、そういえばベリルが言ってたっけ『俺はジーノルタスを倒したことがある』って。
じゃあなおさら、あの時は運がよかったんだな。
「俺はあいつを気絶させただけで、とらえてはいない。学園長からの命令で、俺はジーノルタスとの接触を禁止されているんだ...」
ポリポリと、頭を掻く。
「まあ、お前を助けるために介入したが。さて話はここまでにしておいて、だ。おそらくジーノルタスはお前に目を付けただろう」
ジーノルタスに、僕は勝てるのだろうか?
そんな疑問が、不意にダリアの脳内に沸いた。
もちろん彼の回答はノーだった。
「おそらくあいつはまだ下っ端のほうだろう。それなのにあんなに苦戦をされてしまっては、お前はいつか命を落とすかもしれない」
それに。と、ディエールは言葉を付け足す。
「この学園はジーノルタスに侵食されつつある。学園と自分自身の両方を、お前は守りたいはずだ」
「だけど...どうすれば」
ダリア意識に沿うように、不意に言葉が漏れた。
ディエールはいたずらをした悪いことどものように笑って、自身の拳を強く握りしめる。
「簡単だ、俺がお前を鍛えればいい」
と。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
読者様には主人公が最強に成り上がっていく、そのさまを長い目で見守ってくれたらなと思います!
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