第2話 到着!魔法学園ボード
「調子に乗りやがって...!」
ベリルはただ見つめるダリアに苛立ち、不意打ちを決行した。
結果、基本魔法の雷魔法は、いち早くダリアの心臓部を狙った。しかし、最小限の動きで難なく交わされてしまう。
「これが実力の差だ」
彼の声は、驚くほどに落ち着いていた。
しかし反面、脳内には、『ベリルを徹底的に殴打すること』しかない。
てめぇ...!そうベリルが言いかけたが、その前にダリアはベリルの顔面に一発。
ベリルの右ほほには、たんこぶ三個分の腫れができていた。
その後も、ダリアは何度も殴り続けた。
あたりに鈍い音が響き続ける。
会場全体からのどよめきは止まない。
そして最後に重たい一撃を与えられたベリルは、泡を吹いて気絶した。
「ベリル・ウェネル選手の敗北!勝者はダリア...ダリア・メルデス選手!」
審判の声のおかげで、ダリアの世界に音が戻る。
ハッとしつつ、冷たくベリルを見つめる。
目の前にいるベリルは白目を剥き、ぴくりとも動かない。
しかし幸いなことに、息はあった。
弱者をいたぶる趣味はダリアにはない。
目の前にいる天才を見下し、氷のように冷たい視線を送る。
その目に光はない。
「下衆が」
ダリアは最後の屈辱を与え、ベリルに背を向けてその場を去った。
弱者と思っていた相手にコテンパンにされる。しかも全員が見ている前で。
そんなこと、村一番の魔法使いを自称していたベリルにとって最大の屈辱であった。
ダリアが残した静寂が、長く続いた。
!
しばらくして、ダリアはようやくその足を止めた。
生い茂る木々と、あたりに咲き乱れている花たちが作り出した自然の香りを存分に嗅ぎ、落ち着きを取り戻す。
「ようやく足を止めてくれたか。これでやっと話ができるよ」
怒りをようやく沈めたところで、今度は背後から一人の老人が現れた。
長く伸ばした白髭をして、いかにもと言わんばかりのオールバック風の髪形をした老人。
正体は、この村の村長でありベリルの爺にあたる、ヴェネクローグ・ウェネルだった。
「さてお約束通り、君には賞金を与えようか。あとそれと、魔法学園ボードに行く義務も」
「え...」
ダリアは戸惑った。
なぜなら、魔法学園に行く義務という項目を確認していなかったからだ。
「見ていなかったのか?人としては最低限のスキルだとは思うが...まあいい、明日にはこの村を出て行け」
「ちょっと待ってください!」
踵を返そうとするヴェネローグを、ダリアは引き留めた。
「どうしたんだい?」
「どうして、明日なんですか?ずいぶんと早い出発ですが、何か意味があるんですか?」
彼はしばらく考えて、頭をかく。
「君に話す義務はない」
それじゃあ、今度こそ。そう言って、ヴェネローグは今度こそ踵を返し、ダリアの視界から消えた。
!
時間は夜、一つの家の治療室での出来事である。
ヴェネローグの目の前に、包帯を巻く一人の少年。
そう、ベリルである。
「なんで、俺じゃなくてあいつを選んだんですか」
開口一番、ベリルが尋ねたのは、やはりダリアのことであった。
嫉妬心と後悔に染まった彼の姿を見て、ヴェネローグは微笑を浮かべた。
「単純にお前が負けたから、というわけではない。もともと、私はお前には才能があると思っている。だからこそ、今の学園の状況はお前にとって成長のチャンスだった」
「なら、なおさらなぜ?」
ベリルが問うと、彼はベリルと同じように薄気味悪い笑みを浮かべていった。
「あいつは私も嫌いなのでね。ちょっとしたやり返しだよ...猿を見ていると気分が悪くなる」
これが、ダリア・メルデスが魔法学園ボードに入るまでの軌跡である。
!
あっという間に日が昇り、ダリアはヴェネローグの転移魔法で、ついに魔法学園ボードについた。
学園の周りは村よりも豪華であり、壮大であった。
あたりには浮いている孤島がいくつかあり、そこからは滝のように水が流れ落ちている。
そしてなによりも、敷地が広かった。
今まで村だけで生活してきた彼にとって、この光景は異常であり、壮麗であった。
ふとヴェネローグの声が脳裏をよぎる。
「おっと、そうだったそうだった。これから学園長と話をするんだったけか」
ヴェネローグに言われたとおりに道を曲がり、時にはまっすぐ進んだ。
しばらくして、ダリアは一つの扉の前に行きついた。
茶色の大きな扉。取っ手には他と違って赤色の塗装が施されている。
間違いない。ここが学園長室だ。
覚悟を決めて、ダリアはその扉を開けた。
すると目の前には、一人の幼女が立っていた。
太陽の逆光によって黄金に見える髪の毛に、長いまつげ。
そこから放たれた青色の眼光は、まるで小さな人形かとダリアに思わせてしまうほどだった。
彼女はダリアを視認すると、手に取っていた紅茶のカップをゆっくりと置いた。
「きみが、ヴェネローグの言っていた少年ね?」
「え..ええ。そうです。どうも理事長さん、僕はダリア・メルデスって言います」
それにしても、この歳で理事長って。どれほどの才能の持ち主なんだろうか...。
そう疑問に思っていると、理事長ことオリベル・テルディーナは鋭い視線をダリアに送った。
「お前、今私に対して幼いとか思っただろう」
「え?いや...そんなことはないですよ?」
しまった...!つい声が裏返ってしまった!
ダリアは嘘を言うとき、声が裏返る癖があった。
オリベルは彼の言葉を聞くとはぁとため息をついて、また一口紅茶を飲んだ。
「うそをつかなくてもいいわ。それにしても、もう少しましにうそをつけないのかしら?...まあいいわ、私はこう見えてあなたよりも年上なの。だから、あなたの無礼な態度は、今回だけ見逃してあげる。だけど次はないと思いなさい」
彼女の目には、内なる怒りが隠れている。
何度言われようと、やはりいらだつものに苛立つのは本能であった。
「それで、あなたは魔法についてどう思う?」
オリベルからの質問に、ダリアは即座に答える。
迷いなんてない。
だからこそ自信満々に、そして胸を張って答えた。
「魔法は守るためにあるべきです。だから僕は、守るためにこの魔法を使いたい...あの子のためにも」
拳を強く握る。
そこには強固で揺るがない信念のようなものがあった。
その答えを聞くと、彼女は少し目を見開き、そして優雅に笑った。
「そう...あなたはほかのみんなとは違って、優しいのね。だけれど、優しさだけじゃあこの学園ではやっていけないのよ。魔法は...」
オリベルの話を聞き終えて、ダリアは心の底から納得した。
「今日からここに住むことになったのでしょう?なら一日早く、学園が提供している
施設に行くといいわ。一年生はまだだろうから、少し探検しておきなさい」
そういって、彼女はダリアに鍵を渡した。
金に輝く鍵には、はっきりと『150』と彫られていた。
「それと、あなたが入るクラスなのだけれど、ベリル・ウェネルで入学手続きが済んでしまっているの。突然この学園に入るわけだから、あなたが入るクラスはEクラスになるわ。それに...」
ニヤリと悪い笑みを浮かべる。
「身体強化魔法しか使えないんですもの、そんな生徒をエリートが集うAクラスに入れるわけにはいかないわ」
この学園の中で一番下のEクラス。
Eクラスに入るだろうとヴェネローグに言われていたダリアは、そう驚くこともなく、彼女の言葉を受け入れた。
僕が欲しかったのは賞金であって、この学園で生活することじゃないからな...。
「わかりました」
「ほかに用はないわ。もしなにかあれば、いつでも私に聞いてきていいからね」
その言葉を最後に、ダリアとオリベルの会話は終わった。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
読者様には主人公が最強に成り上がっていく、そのさまを長い目で見守ってくれたらなと思います!
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