第14話 焦燥!二日目
「えええぇぇぇ!?」
意外な言葉に、ダリアは素っ頓狂な声を上げる。
目を見開くダリアを、ディエーゴは落ち着かせようとした。
そんな彼の顔は、炎のように赤くなっていた。
「落ち着け...そんな大声で言うなよ。聞かれるだろ...」
「ごめん、つい驚いちゃって...」
ダリアは目をそらし、乾いた笑いをしてみせた。
「それにしても、なんでゼーラを?」
「......」
プイ。と顔を背け、頭をポリポリと掻く。
「それは...まあ......。 理由なんてどうでもいいだろ!」
まあ、それもそうか。
ダリアは心の中でうなずいた。
しかし心が沈むような、そんな感覚をダリアは覚えた。
「応援してるよ、ディエーゴ」
下を向いて目を細める。
ダリアの顔には、張り付けたような笑顔があった。
「ああ...ありがとうな」
直後、ガタン。と、組み立てられた木材が崩れ落ちる。
炎の勢いが弱まる。
さきほど感じていたぬくもりは、すでに寒さへと変わっていた。
「そろそろ、俺たちも寝るか」
「うん。それじゃあ、また明日」
満天の星空の下、少年たちは拳を交わし合う。
瞬間、流れ星が夜空を切り裂いた。
!
薄暗い瓦礫におおわれた、薄暗い場所。
あたりには鉄の匂いと、不気味な生温かさが立ち込めている。
彼がたどり着いたころには、すでに遅かった。
目を見開き、口を開ける。
足は震えを起こし、ヒューヒューと情けない声が漏れていた。
「あ......あぁ......」
目の前に広がる、赤一面の光景。
その中心には、一人の少年だった物が、仰向けに倒れていた。
人体の右半分は空洞になっており、骨しか残っていない。
あたりには、臓器と思われる肉塊が、ゆがんだ形をして散らばっていた。
「〇...〇〇〇......!」
現実を受け入れられない、弱い少年が悲痛に叫ぶ。
誰も答えない。
代わりに返事をするように、彼の目玉がビチャッ。という音を立てて落下した。
「う...うおぇっ...」
下から来る嫌悪感。
少年は嘔吐し、涙を流す。
体が空っぽになってしまいそうなほどに、吐き続けた。
吐しゃ物をうつろな目で眺める。
「仲間が二人死んで...。もう君しか...僕には君しか残っていなかったのに...」
両手を力なく地面につける。
その声には、懇願が混じっていた。
「僕は...どうすればいいんだよ」
ディエールは目を見開き、勢いよくベッドから起き上がった。
グッショリと汗をかいており、着心地の悪さに不快感を覚える。
荒々しい息をしながら、周囲を見渡す。
ソファに鏡。間違いなく、教員用の部屋だった。
「はぁ...嫌なもんを見ちまったな」
震える手で触ると両頬を強く叩く。
丁度、太陽が昇る。
二次試験二日目の合図だ。
「気を取り直すか」
頭をいつも以上に搔きつつ、最低限の身支度を済ませる。
ディエールは、二次試験の会場に向かった。
!
時は朝。
生徒たちが起床し、それぞれ準備を始める。
最後には、ダリアたちとアローネが残った。
「今日も暇だね。ダリア君」
ハハハ。と乾いた笑いをしながらも、アローネはダリアに尋ねる。
「まあ...そうですね。ですが、一応気を付けてくださいね」
「ハハハ!もちろんだよ。君に言われるまでもない」
彼女は拠点の方向を見据え、にやりと笑う。
その眼には、勝利への確信があった。
ガサリ。
近くの茂みが音を立てた。
そしてそれと同時に遠くから、魔力の流れを感知する。
「近距離と遠距離の挟み撃ちか。私はこいつを,,,ダリア君たちは」
遠くにある無数の木々から一つを指さす。
「あっちを...頼む」
「わかりました...確か、あっちですよね?」
本来ならディエーゴかゼーラ。
しかしその二人を先置て、ダリアが先頭に立った。
ダリアはごそごそと自身の懐をあさり、一つの投擲物を取り出す。
ソレは端が角ばっており、手に簡単に収まってしまうほど小さい。
「それは...石?」
「アローネさん、見ていてください」
呆然とするアローネに構わず、勢いよく地面を踏む。
「これが、一次試験の課題...僕の、答えです」
先ほど言っていた木を見据る。
そして一発で、確実に――。
ヒュン。
そんな音とともに、木に潜んでいた生徒の杖がべキ゚ッ。と真っ二つ割れた。
「げっ...!杖を折られた!」
男は目を見開く。
魔法でも何でもない...ただの投擲物の飛来。
魔法を知らない原始人を相手にしているような、そんな気分に陥った。
男は豆粒程度のダリアのほうに視線を飛ばす。
「杖が折れちまったせいで、もう簡易魔法しか使えない...それに」
あいつからここまではかなりの距離があるはずだ...。
ペッ。と唾を吐く。
歯ぎしりをしながら、眉を顰めた。
「なんなんだよ...アイツ!?」
直後、大きな轟音があたりを突き破る。
その方向は、男の仲間がいた場所だった。
「がはっ...!」
地面にべったりと張り付く男を見下ろすアローネ。
彼女は退屈そうにしながら、男の近くでかがむ。
「それで、お仲間は?」
「...し..じらな...い」
へー。
そう言いながら、彼女は更にGを強くした。
プチプチと、筋肉の筋が切れていく音がする。
男には、徐々に『死』が歩み寄ってくる光景が見えた。
「わが...わがっだがら...全部話す!全部はなずがら!」
「協力ありがと」
男の了承を経て、彼女はついに拷問をやめた。
ホッ。と胸をなでおろし、男は語り始める。
「俺たちはあくまで偵察部隊...。リーダーのロベリーさんとルベリさんに命じられて、ここに来ました」
「ほう...あの双子か」
顎に手を置き、少し考えるそぶりをする。
「襲撃日は把握しているの...?」
「ええ...まあ」
にやりと、男が笑う。
それは、勝利を確信した笑みであった。
「俺たちがやられた直後に、襲撃する予定なんだよ」
目を見開く。
事態の危うさに気が付いたアローネは、男を置いてダリアたちのほうへ向かった。
「へへ...せいぜいあがいてみるんだな...」
動かない体で、男は嘲る様にして笑うのだった。
!
ダリアの投石。
その瞬間を、ディエールはその眼に焼き付けていた。
「まさか、ここまで上げてくるとはな...」
投石などは教えてはいない。
これは完全に、ダリアのオリジナル技であった。
それなのに...。
「それなのに...へっ。合格だ」
胡坐をかきながら、拠点から流れ出る無数の生徒を見つめる。
彼の表情は、紛れもなく笑顔だった。
「さてダリア...ここが登竜門だぞ」
無数の生徒たちの中央にいる、とある生徒を見つめて、目を細める。
彼のうちにある高揚感が、はじけるように湧き上がっていた。
!
「ダリア...お前スゲーな!」
一撃で沈めたその投石。
ディエーゴは目を見開き、嬉々としながらダリアを称賛した。
「へへ」
「ダーリアッ」
直後、全身がやわらかい感触に包まれる。
ゼーラが抱き着いてきていたのだ。
いつものように引き離そうとした...その時。
ディエーゴの告白が、脳裏をよぎった。
ドンッ。と、いつもよりも強く引き離す。
「え...ダリア、どうしちゃったの?」
目を見開くゼーラの顔を、見つめることはできなかった。
体をそらして、冷たく言い放った言葉。
それが余計に、彼女を傷つけた。
「離れて」
「......」
「ダリア君、それはよくないんじゃ...」
アルゼーヌが、ダリアに軽く忠告をする。
それをきっかけに、罪悪感がダリアを支配した。
「ゼーラ...ごめ――」
「大変だ!」
ダリアが謝ろうとした時、息を切らしながらアローネが走ってきた。
膝に手をついて深呼吸をする。
落ち着きをようやく取り戻し、アローネはダリアたちを見上げた。
「敵チームが、来るぞ...!」
と。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
読者様には主人公が最強に成り上がっていく、そのさまを長い目で見守ってくれたらなと思います!
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