第13話 休息!戦争は最後に仕掛けるのがいいんだよ
「モネ...か。確かに俺のたーいせつな生徒だが、それがどうかしたのか?」
「とぼけるんじゃないわよ...」
カコン。とコップを置く。
彼女の目は、衝撃と確信に満ちていた。
「モネを殺したのは..あなたね?」
ディエールは動じない。
冷や汗もかかず、目を見開くこともなかった。
彼の表情は、いつも通りの腑抜け顔である。
「何を言ってるんだ?それ相応の証拠を見せてくれよ」
「それ相応の証拠があるから言ってるのよ...」
一つの書類を手に取り、机に置く。
書類には、『何者かがDクラスの生徒を殺害』とだけ書かれている。
しかし下に読み進めていくと、最後に『死体は残っているが血痕は残っていない』と書かれていた。
「私はそこそこの年をしているから、魔法は熟知しているつもりよ」
「......だからどうした?」
オリベルは目を伏せ、残念そうにしながらつぶやいた。
「正直、ここは防衛魔法で守られていて安全よ。それなのに殺害されるのは、内部...そして未知数なあなたが怪しいのよ」
「そうか。なら、俺も決定的な説を言ってやろう」
そして..。とディエールは言葉をつけたし、いたずらっ子のように笑う。
「もしあんたの勘違いだったら、なんでも俺の言うことを一度だけ聞いてもらうからな」
意外な賭け。
一世一代の大博打のような賭けに、オリベルは心底失望した。
はぁ。と思いため息をついて、いいわよ。とうなずく。
「魔法で守られているなら、『スキル』を使ってしまえばいい話だ」
「『スキル』?」
思いもしなかった言葉に、目を見開く。
「現代の魔力と昔の魔力は性質が違う。アンタは、昔の魔力を感知できないはずだ」
それに。とディエールは言葉を付け足す。
「あんたたちが恐れているジーノルタスは、スキルの時代の再来を渇望している。この意味が分かるよな..?」
ディエールに最後を言われずとも、理解していた。
ぐうの音も出ない、正論。
顎に手を置き、目を細める。
「つまり犯人はジーノルタス...私の勘違いだった。ということ?」
「まあ、そういうことだ。それに魔法を熟知しているんだろ?だったら血液だけを消す魔法なんて知らないはずだ」
はぁ。とため息をつく。
身内を疑ってしまったことに心から謝罪を籠め、手を合わせる。
「ごめんなさい。私の勘違いだったわ...」
「いいんだよ。疑いが晴れれば、問題はない...それに」
そうつぶやき、踵を返す。
重厚な扉を前にしてドアノブをつかんだ、その瞬間。
「賭けには勝ったからな...」
バタンッ。
ディエールは学園長室に漂う敗北臭を残し、その場を去って行った。
ただ一人、残された学園長。
斜陽が、やけに暑く感じた。
!
二次試験一日目。
満天の夜空が光り輝く星々を身に着けて、ダリアたちを見下ろす。
時刻は夜。
すっかりあたりは暗くなって、明かりがなければ方向感覚を見失うほどだ。
食料調達部隊が調達した魚を、焚火の周りに置いて果実をほおばる。
チームの雰囲気は上等だ。
ダリアたちはいつもの仲間と焚火を囲み、談笑していた。
「ダリア、あーん」
バッ。と、ゼーラは魚を突き出した。
「ありがとう」
串を手に取り、豪快に食べ進める。
いつもギリギリの生活というのもあり、口の中に広がる幸福が、ダリアの心をいやした。
反面、ゼーラは不機嫌そうに頬を膨らませていた。
今すぐにでも「そうじゃない!」といいそうだ。
「ヘルメス、君も食べる?」
元気がないヘルメス。
手元には、黒く果てた焼き魚が握り締められていた。
不器用だな。
そう思ったダリアは、スっ。とヘルメスの前に焼き魚を出す。
「ほら、あーん」
ヘルメスは顔を赤らめながら、小さく一口。
直後、両手を顔に覆うようにしてそっぽを向いた。
なんか小動物みたいで可愛いなぁ..。
かわいらしさに、ダリアの顔も熱を帯びる。
「あれ、ダリア君。なんで顔が赤いの?」
「いや...これは」
視線をそらし、頭をポリポリと掻く。
ディエーゴは眉をひそめた。
もう限界。そう言わんばかりに、本音を語り始める。
「お前さ、まじで二股だぞ!」
「ふ...二股ァ!?」
...いや、二股って何?強化魔法系の何か?
田舎育ちには、恋愛用語の二股という言葉とは無縁であった。
「ディエーゴ、今食事中なんだけど...!」
突然の二股に、アルゼーヌは思わず食事を吹き出しそうになっていた。
軽蔑するような目で、ディエーゴを見つめる。
「悪かったよ...」
「ディエーゴ、そういう発言は控えてね?すっごく腹が立つから...」
ゼーラの表情は笑っていなかった。
「ヒッ...!わ、悪い」
他愛のない会話。
二次試験であるという事実を知っていてもなお、この時間がいとおしい。
このまま時間が止まってしまってもいいと、ダリアは思った。
「明後日...僕はうまくやれるかな?」
全員が食事を終えたタイミングで、アルゼーヌが話を切り出した。
神妙な空気が、あたりを支配する。
「この俺がついてるだろ。問題ない」
「僕だって、アルゼーヌと同じくらい重要な役割を担ってる。お互い様だよ」
フォローをするが、うまくいかない。
アルゼーヌの役割は、このメンバーの中でも重要すぎたのだ。
ダリアは余計に、空気が重くなるのを感じた。
「はぁ...夜ってのはだめだ」
空気を突き破る様に、ディエーゴは大声で言った。
全員の顔に?が浮かぶ。
ディエーゴは立ち上がり、アルゼーヌの肩をバンッ。と強くたたいた。
「夜は疲れてるから、よくない考えが湧き出てくる。今日は休め」
「うん...ありがとう、ディエーゴ」
アルゼーヌがテントに戻る。
もういい時間だろう。そう判断した女子二人組も、テントに戻った。
残されたのは、ディエーゴとダリアだった。
しばらくの静寂が訪れる。
パチっ。という音ともに、火の粉が舞う。
それが、会話の合図だった。
「ダリア...」
「ん?」
きょとんとするダリアに、ディエーゴは真剣なまなざしで告げる。
「このまま計画通りに行くと思うか?」
「...いいや、きっといかないと思う」
目の前で燃え上がる炎に見とれつつ、ダリアは言った。
「ディエーゴは明日に何かおこるって、言いたいんでしょ?」
「まあな。あいつらも同じ考えをするとは限らない。もしかしたら、こちらの考えを読んでいるかもしれない」
どちらにせよ...。とディエーゴは言葉を付け足す。
「警戒は怠るなよ。リーダー」
「わかってるよ」
覚悟はできている。
ダリアはその考えを伝えるように、ドンッ。と拳と拳をぶつけた。
「あと...一つだけ、お前に話しておきたいことがあるんだ」
はぁ。と、ディエーゴはため息をつく。
「ゼーラにずいぶんと好かれているけど、あいつとお前、どんな関係なんだ?」
「なにって...ただの幼馴染だよ。弱かった僕のそばにいてくれた、大切な人だ」
まぁ...。
付け足すように、ダリアは苦笑いを浮かべる。
「今はずいぶんと様子が違うけど...」
「そうか...」
ディエーゴは空を見上げ、夜空に散りばめられた星を見つめる。
そしてようやく本音を言う覚悟ができ、ダリアのほうを向く。
内に秘めた思いを、ダリアに告げる。
「俺、ゼーラが好きなんだ」
と。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
読者様には主人公が最強に成り上がっていく、そのさまを長い目で見守ってくれたらなと思います!
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