第11話 戦慄!始まりの予感
二人一組と言われて間もなく、戦争が始まった。
ギュっ。と、ダリアの制服の袖がつかまれる。
もちろん片方ではない、両方だ。
右はゼーラ、そして左はヘルメスだった。
両者共に睨み合うと、目と目の間で火花が散った。
「ちょっと...私はダリアとペアになるんだけど」
彼女の目に光はない。
代わりにあるのは、素人でもわかるすさまじい程の圧であった。
「いや...私は、その...ダリア君とじゃなきゃ、特訓できないので...」
圧に押されたヘルメスは、体を小さくした。
その光景を見て、ディエールははぁ。とため息をつく。
「よし、ならこうするか...俺とヘルメスがペアになろう。俺には、ヘルメスの魔法を相殺できる『術』があるんでな」
「じゃあ決まりね!ヘルメスちゃん、ディエールのところに行ってきなー」
邪魔者を排除するように、ゼーラはヘルメスに言った。
しかし彼女の表情は、紛れもなく満面の笑みであった。
頬を赤らめ、ゼーラはダリアの手をギュっ。と、優しくつかんだ。
「よろしくね、ダリア!」
「う、うん...よろしく」
その光景を、少しうらやましがるような目で見るものがいた。
ディエーゴである。
チっ...いいよな。あいつは誰からも好かれて。
そう言ってはいるが、彼もまたダリアを好いている人間の一人であった。
ディエールは横にいるヘルメスの肩に手を置き、二人一組になったことを確認した。
「さて、今回の試験だが...チームワークがこの試験の合否にかかわって来るだろう...」
ディエールは口角を上げる。
「そこでだ。まずは互いに弱点を共有し合い、そこでまたコンビネーションや独自の特訓といったように弱点を克服してもらう。いいな?」
ディエールの呼びかけに、この空間が揺れるほどの大きな返事が返る。
彼はにやりと笑い、それじゃあ始めろ。と一言だけ言った。
!
しばらくして、特訓が終わった。
全員の体力はすでに限界であり、ディエーゴの服は焦げ、ダリアは筋肉痛を伴った。
それ以外の者は皆魔力切れであり、ゼぇぜぇと肩で息をしていた。
「さて、それぞれの弱点は見つかったようだな。ディエーゴとアルゼーヌ、お前たちの弱点は何だ?」
「はい...僕の弱点は魔力が少ないこと、ディエーゴは爆破魔法を主体とした戦術以外が苦手なことです」
なるほどな。と言って、今度はダリアのほうを向く。
先ほどディエーゴたちを見ていた時と違って、彼に送る視線だけ、どこか特別なように見える。
それは彼への期待と願いが込められているようであった。
「それじゃあ、ダリアとゼーラはどうだった...といいたいところだが、ゼーラの弱点は正直わからなかっただろ...ダリア?」
「いえ...ゼーラは魔法の発動速度こそ早いですが、正直...」
ダリアは言葉に詰まる。
横にいる彼女の目の前で弱点...いわば悪い点を挙げるのは正直迷いがあった。
しかし、ゼーラは目を輝かせてダリアを見ていた。
彼女は、ダリアがちゃんと自分を見てくれていることに喜びを感じていた。
「一個一個の繋ぎが遅いんですよ...なんていうのかなぁ、ちょっと特殊なんですけど...」
「そうか...」
ディエールは目を見開く。
ゼーラの魔法に後隙は無い...こいつ、無意識に動体視力を強化しやがったな。
すぐに表情を元に戻し、ディエールは軽く笑った。
「それはいい発見だ...それで、お前自身の弱点はどうだった?」
「僕の弱点は、やはり遠距離かなと」
ダリアの脳裏に、以前の戦いがよぎった。
近距離戦に持ち込めずに、何もできないまま敗北したあの戦い。
あれが、どんなに経っても色あせない。
ディエールはその言葉を聞くと、ダリアに背を向けた。
「...俺からは何も言わん。少し自分で考えてみろ。そして、二次試験で見せてくれ...その答えをな」
ディエールはにやりと笑った。
初めての体験に驚きつつも、ふと、モネの姿も同時に思い出した。
今日の授業では、彼女の姿を見ていない。
「そういえば先生、モネはどうしたんですか?僕たち、昨日からモネの姿を見ていないんですが...」
ディエールは頭をかき、眉を顰める。
「俺に聞くな...すべて知っていると思ったら、大間違いだからな?」
はぁ、とわざとらしく息をつく。
「...まあただ、俺にもわからん。おそらくはダリアとの戦いで自信がなくなって、とか言ったような理由だろ。知りたきゃ学園長にでも聞くんだな」
彼は振り返らずに、コツコツとこの空間から去って行った。
!
あたりが見えない、闇に支配された空間。
一人の男が、質素な机に置かれているろうそくをつけた。
ボっ。と小さく音を立てて、あたりを照らした。
机を取り囲むようにソファに座り込む五人、彼らは机に置かれた地図を見て、唸る。
「やっぱりモネを殺されたのは痛手だったな...」
この集団、ジーノルタスの幹部の中のトップであるネルスが呟く。
その発言により、全員の視線がネルスに移る。
「何を言っているのかしら...別に彼女なんて、いてもいなくても同然でしょう?それに、私たちだけで十分じゃない」
女が自信満々気に言う。
先ほどのネルスの意見とは違って、ネルス以外はこの意見に賛成であった。
はぁ。とネルスがため息をつく。
「たしかにそれはそうだが...はぁ、まあいい。とりあえず今は、モネを殺した奴を捜索すること。そしてボードの襲撃に関する作戦会議が優先だ」
ネルスは地図のある一点に指をさす。
そこは第二次試験の会場の、孤島であった。
「勝負は終盤...三日間の最終日に襲撃を仕掛けるぞ。いいな?」
「いいわよ。だけど、モネを瞬殺したんでしょう?そいつだけは注意しておきたいわね」
モネはなかなかの実力者でもあった。
それ故に、五人の中には底知れぬ緊張感と恐怖心があった。
「よし、あとは問題ないな。潜入すれば、後はすきにすればいい。俺たちの目的は、あくまで魔法学園の生徒を殺害することだからな」
「好きにしてイイんだな?」
一人の少年が立ち上がる。
すらりとした体形であり、とても強そうには見えない。
しかし彼の目には復讐心と、その身を焦がすほどの過去の敗北が映っている。
ネルスはクスリと笑い、ああ。とだけ答える。
「そうか...なら、それでいい」
少年は答えだけ聞くとその場を去った。
あっけらかんとする周り、ネルスは彼の情報を少し明かした。
「まあみんな気を立てるな。あいつは復讐をするためだけにこの組織に入ったんだからな...仕方がないだろ」
「けれど、その復讐の対象がまさかボードにいるなんて、偶然ね。とはいっても、さすがにずっとフードをかぶっているのは、疑問だけれど」
なんで強い奴は癖が強いのか...。
ネルスは心の中でつぶやき、地図を今一度見つめる。
「そういえば、復讐の対象って誰なの?」
女が尋ねた。
ネルスはしばらく考えるそぶりを見せ、思いついたようにぽつりとその名前を呼んだ。
「確か...ダリア・メルデスだったかな」
と。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
読者様には主人公が最強に成り上がっていく、そのさまを長い目で見守ってくれたらなと思います!
何かおかしな点があれば報告してください!通知が来たら爆速で書き直しますので(笑)
☆☆☆☆☆やブックマークよろしくお願いします!!




