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第1章 第6話 「魔力と理」  

翌朝。

 ルルの家の裏庭で、ミアは杖を軽く振り回していた。

 杖の先から淡い光の粒が舞い上がり、地面に複雑な魔法陣を描く。


「よーし、理央くん。今日は“魔力感知”からやるわよ!」


「……はい?」


 理央は困惑気味に首をかしげた。

 ミアの勢いに押されるようにして座らされ、彼女の指示通りに両手を膝に置く。


「目を閉じて、自分の中の“流れ”を感じてみて」


 理央は言われた通りに目を閉じた。

 静寂の中、風が頬を撫でる。

 遠くで鳥の声が聞こえる。

 だが――


「……何も感じない」


 ミアの眉がぴくりと動く。

 もう一度、魔法陣を調整し直す。


「えっと、今度はこっちの方式で……」


 再び淡い光が理央を包む。

 しかし、結果は同じだった。


「うそ……。普通は、魔力がほんの少しでも流れていれば、反応するのに……」


「やっぱり、俺には魔法って向いてないんじゃ?」


「うーん……向いてないというより、“対象外”ね」

 ミアは腕を組み、理央をじっと見た。


(理の外にいる。

 彼の中には“流れ”が存在しない。

 なのに、世界の法則に拒絶されても存在できている……)


 研究者気質のミアの目が、一気に輝いた。

「面白い! 絶対、何かある!」


「なんか実験動物みたいに言うな……」

 理央がため息をつくと、ルルが苦笑しながら口を挟んだ。


「ミア、その辺でいい加減にしてあげて。理央、今日は剣の訓練もしない?」


「お、やるか!」


 そうして三人は、再び模擬戦の準備を始めた。


「ねえ、ミア。私の“身体強化魔法”、まだ一段階残してるんだけど……」


「えっ、ルルそれ言ってなかったの? 勇者専用の“第二段階”だよ?」


 ミアは呆れたように笑う。

「普通の勇者はね、第一段階で筋力と反応速度を上げる。

 第二段階になると、神経反応そのものを“理で強制補正”できるの。

 つまり――身体が理を無視して動けるようになる」


「……え、それ、反則では?」

「勇者ってそういう職業だから」


 ミアの言葉に理央は乾いた笑いを漏らした。


「じゃあ、今日は第一段階で試してみようか」

 ルルが剣を構える。


 その瞬間、淡い金色の光がルルの体を包み込んだ。

 足元に小さな風が起こり、彼女の髪がふわりと舞う。


「……始めるよ!」


 次の瞬間、ルルの姿が消えた。


「――っ!」

 反射的に剣を構えた理央の視界の端で、光が閃いた。


 音もなく、背後を取られていた。

 木剣の光点が一瞬で三つ、理央の体を包む。


「……え、今なにが?」


 あっけにとられた理央を見て、ルルが笑う。

「“第一段階”の身体強化だよ。反射速度が二倍になるの」


 ミアが杖を軽く回しながら言う。

「魔法を知らない相手に勝つなんて無理よ、理央くん。

 この世界は“ことわり”で支配されてるんだから」


 理央は悔しそうに唇を噛んだ。

「……理、ね」


 心の中に、何か小さな火が灯る。

 理という言葉。

 それは、彼が無意識に拒絶してきた“ルール”そのものだった。


「だったら――その“理”ごと、ぶっ壊せばいいだけだろ」


 ルルとミアが目を丸くする。


「ミア、俺にも教えてくれ。魔法ってやつを」


 ミアは少し考え、にやりと笑った。

「いいわ。私、こういう“規格外”大好きだから」


 そして、彼女は杖を理央の胸元に当てた。

「ただし――本当に“理”を壊したら、この世界、どうなるかわからないわよ?」


「それ、試してみないと分かんねぇだろ?」


 理央の逆張りが、また世界の理を一つ、揺らした。

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