第二章 第11話:森を揺らす四脚 ―― 守護獣魔ゲンブ、目覚める
世界樹へと続く古森。
獣王国でも“近づいてはならぬ”と語られる禁域。
空気は湿り、
地面からは微弱な魔力が脈動している。
ルル
「……空気が重い。
世界樹の魔力って、こんなに濃かったっけ?」
ミュナ
「違う……これは、魔力じゃない……
もっと、ぐしゃっと歪んでる……」
リリス
「その通りですわ。
これは“自然の魔力”じゃなくて──
女神が世界樹に押しつけた“理の汚染” ですわね。」
理央
「だから森の魔物が強化されてたのか……」
そんな会話をした直後──
地面が揺れた。
いや、“世界”が揺れた。
ゴゴゴゴゴ……ッ!
ルル
「地震……!? いや違う……!」
森の奥から、
巨大なシルエットが姿を現した。
それは──
大地と根を引きずる、四脚の巨獣。
巨大な甲羅は
世界樹の根と苔と魔力で覆われ、
その身には黒い“理の鎖”がぐるぐると巻き付いている。
赤黒い瞳が森を睥睨し、
口からは濁った息が漏れる。
ミュナ
「……あれは……
伝承で聞いた……世界樹の守護獣……」
理央
「守護獣魔ゲンブ……
本来は世界樹の守り神……だよな?」
リリス
「ええ、そうですわ。
本来なら“世界の調和”を象徴する大亀。
いまは……女神の理に吸いつぶされた“堕落形態”です。」
ゲンブの赤い瞳が、
侵入者である三人にゆっくり向けられた。
「……グゥゥ……アアァァア……!」
その声は、
森そのものが悲鳴を上げているようだった。
◆ ミュナ、ビーストアーマー初実戦へ
ミュナは拳を握る。
ミュナ
「……守護獣なのに……苦しんでる……!」
理央
「ミュナ、いけるか!?」
ミュナは深呼吸し、リリスを見た。
ミュナ
「リリスちゃん……力を貸して。」
リリス
「当然ですわ。
ミュナ、いきますよ──共鳴!」
赤い魔力紋がミュナの体に浮かび、
リリスが光となって合体する。
ミュナの瞳が鋭く光り、
獣人本来の戦闘能力が爆発的に上昇。
ミュナ
「……大丈夫です。
ぜったい……守護獣さんを、元に戻します!」
◆ 守護獣魔ゲンブ、咆哮とともに地を揺らす
ドォォン!!
ゲンブが前脚を振り下ろすだけで、
地面が波のように盛り上がる。
ルル
「理央! こういう攻撃はあたしが行く!」
身体強化第二段階を発動し、
ルルがゲンブの攻撃の衝撃を軽く受け流す。
同時にミュナが地を蹴る。
ミュナ
「跳べる……!
速い……!!」
樹上を連続で跳び移り、
ゲンブの背中へ回り込む。
リリス(共鳴中)
「ミュナ、そのまま! 甲羅の左側に理の集中点がありますわ!」
ミュナ
「はいっ!」
拳に魔力が込められる。
「獣装・双爪撃ッ!!」
甲羅にひびが入るが──
バチンッ!!
黒い理の鎖が反撃するように弾き返す。
ミュナ
「くっ……! 強い……!」
理央
「ゲンブの殻……理の鎖が守ってる……!」
ルル
「このままじゃ……こっちが削られちゃう!」
◆ 理央の分析 ―― 祝福の光の核が背中にある
理央
「ゲンブの甲羅の内側……
“理の種の核”が埋まってる……!」
リリス
『その通りですわご主人!
女神の理、その源がゲンブの背中に“乗っている”のです!』
ルル
「つまり……そこを壊せば守護獣を戻せる!」
ミュナ
「私が行きます!」
理央
「ミュナ、サポートする!
《身体強化魔法・重ね掛け》ッ!」
ミュナの身体能力がさらに上昇。
リリス
『来ますわよミュナ!
これがあなたの“正しい獣人の進化”ですわ!』
◆ 連撃――ビーストアーマーの真価
ミュナ
「いきます!!」
樹上を駆け抜ける。
その速度は風のようで、
ルルと理央の目が追いきれないほどだった。
ルル
「速すぎっ……!」
ミュナはゲンブの甲羅へ拳を叩き込む。
ガァンッッ!!!
ひびが広がる。
ゲンブ
「グオォォォォ!!」
反撃で地面から“根の波動”が飛ぶが、
ミュナは空気の流れを読んで紙一重で回避する。
リリス
『次ですわミュナ! もう一撃、行けますわ!!』
ミュナ
「はい!!」
◆ 理央のトドメの準備
理央
(ミュナがひびを作る……
なら俺がいける……!)
手を天へかざす。
理央
「理を……逆流しろ……
《過強化神聖魔法》!」
白い光が拳に集まる。
ルル
「理央、いけ!!」
ミュナ
「理央さん!! 今です!!」
◆ 三人の連携 ―― 守護獣の鎖を断つ
ミュナが跳び退き、
そこへ理央が飛び込む。
理央
「世界樹の守護獣を……守らせてもらう!!」
《過強化神聖魔法》
直撃ッ!!
白光が甲羅のひびを弾けさせ、
黒い“理の鎖”がバチバチと切れ飛ぶ。
ゲンブ
「グ……オォォォ……!」
巨大な体が震え、
赤黒い目が徐々に自然の緑へ戻っていく。
やがて──
ドサァン……
ゲンブは静かに倒れ、
森に穏やかな風が吹き抜ける。
ミュナ
「……やりました……!」
ルル
「すごいよミュナ! 超かっこよかった!!」
リリス(ミュナの中から)
『ふふ──これがミュナの実力ですわ!』
理央はゲンブの頭に手を置き、祈った。
理央
「戻ってきてくれて、ありがとう」
ゲンブはうめくように息を返し、
その瞳には確かな“感謝”の光が宿っていた。




