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第二章 第4話:人族居住区 ―― 枯れた祈りと、少女の涙

ミュナに案内され、理央とルルはガルザニアの裏路地へと足を踏み入れた。

城や中心部とはまるで別世界のように、空気が重く、湿っている。

活気がなく、家の扉は固く閉ざされ、窓越しに怯えた目がわずかに覗く。


「ここが……人族の住む場所……?」


ルルが思わず息を呑む。


荒れた道、壊れた柵、軒の下には泥水が溜まり、

小さな子どもが震えながらしゃがみこんでいる。


「こんな……ひどい……」


ミュナが小さく唇を噛みしめた。


「昔はね……こんな場所じゃなかったんだよ。

 人族も獣人も、みんな同じ街で暮らしてた。

 でも“理の修正”が始まって……」


説明を続けようとした瞬間、

近くの民家から女性の怒鳴り声。


「ミュナちゃん! 来ちゃダメ!!」

「獣人が来ると、私たち……また罰を受ける……!」


ミュナの顔が曇る。


「違うの……私は、そんなつもりじゃ……!」


理央は静かに前に出た。


「ミュナは俺たちの仲間だよ。

 人をいじめるために来たわけじゃない」


すると家の中から、小さな影が震えながら出てきた。


さっき助けた少女だ。


震える声で言う。


「……ミュナお姉ちゃん、いつも助けてくれた。

 石を投げるの、やめてって言ってくれた……」


ミュナの目が揺らいだ。


「……私はただ……元のガルザニアに戻ってほしいだけ……。

 差別なんて……間違ってるよ……」


その言葉に、

理央の胸に宿る“祈り”が静かに反応する。


(……ミュナの心、あったかい。

 日本人の精神性に近い……

 差別しない、弱い者を庇う優しさ。

 この国には……こういう“祈り”が消えていってる)


理央にははっきり見えた。

人族居住区全体に漂う“祈りの死”。

街中で見た黒いざらついた気配が、ここでは濃度を増している。


そして、ミュナの胸からほんの少しだけ

日本人の祈りと同質の光 が漏れていた。


(やっぱり……ミュナには“祈りの器”の素質がある)


ルルがミュナの肩に手を置く。


「ミュナ。あなたは強いよ。

 あなたの優しさは……正しい」


ミュナの瞳が揺れ、涙がこぼれた。


「でも……最近、怖いの。

 獣人たちが突然怒りっぽくなったり、

 暴走したり……

 まるで“何かに操られてる”みたいで……!」


操作──

理央は胸がざわりとした。


(獣人の怒りの波……

 これ、“理の修正”の影響じゃないのか……?

 王の鎖と同じ気配が、この街全体に……)


まるで黒い手が、ガルザニア全体に伸びているような圧迫感。


ミュナは必死に言う。


「お願い……助けてよ。

 王様も、昔みたいに笑わなくなった。

 胸を押さえたり、苦しそうにしたり……

 “あの日”からずっと……」


“あの日”

理央とルルは反応する。


「“理の修正”が起きた日……?」


ミュナが頷く。


「うん……あの日から、全部がおかしくなった……」


ミュナの耳が震える。


「だから、お願い……

 王様と、この国を……救って……!!」


その叫びが響いた瞬間、

人族の子どもたちが、怯えながらもミュナの周りへ集まってきた。


ミュナを、信じているから。


理央はふっと笑う。


「もちろん。

 任せてくれ。

 俺たちが……必ずこの国を救うよ」


ルルもうなずく。


「うん! 全力でやるよ!」


ミュナの目からぽろぽろと涙がこぼれた。


「ありがとう……ありがとう……!」


しかしその裏で、

理央の“祈りの感知”は別の波紋を捉えていた。


王の方角から……黒い衝動が微かに漏れ出している。


(まずい……

 王の破壊衝動、進んでる……!)



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