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第21話 「理の鎖を超えて ―― 再び森へ」  

森の奥で魔族の影が目撃された――

 その報せは、朝の静けさを破って村をざわつかせた。


 討伐に向かおうとするルルの横顔は、勇者としての責任感と焦りが入り混じっていた。

「……また、誰かが傷つくかもしれない。前みたいに、見ているだけなんて嫌だ」


 理央は静かに頷く。

「行こう。俺も手伝う」


 ルルは一瞬、驚いた顔をした。

「……理央は、まだ“冒険者登録”もしてないのに?」

「そんなルール、関係ないだろ。命がかかってるんだ」


 その言葉に、ルルの胸が少しだけ軽くなった気がした。


 森へ向かう途中、ルルは理央にぽつりと語り始める。


「ヌマアってね、種族ごとに“上限”があるの。

 人族はレベル50まで、エルフは70、獣人は60。

 天使は……上限が存在しない」


 その声には悔しさが滲んでいた。


「だから、私たちはどれだけ努力しても、天使に勝てない。

 魔族との戦いだって、天使の“加護”なしじゃ通用しないの。

 ……勇者だって言われても、所詮は女神の理の中で動くだけ」


 理央は立ち止まった。

 森の風が二人の髪を揺らす。


「上限なんて、壊せばいい」

「え?」

「理で決められた限界なんて、女神が勝手に作った“ルール”だろ。

 なら、俺と一緒に超えよう。理の鎖をぶっ壊すんだ」


 ルルの胸の奥に、かすかに光がともった。

 “この人なら、本当にできるかもしれない”――そんな予感があった。


 その夜。

 ミアとセラフィーナ、リリスも加わって討伐隊が結成された。


「森の奥にいるのは、以前の熊型魔族と同種と思われます」

 ミアの地図の上には、赤く印がついていた。

「村に近づく前に倒す必要がある」


 セラフィーナが祈るように呟く。

「この戦い、あなたたちに光がありますように」


 理央は笑って剣を握った。

「光はもう、俺たちの中にあるから」


 夜明け前。

 森の入り口で、ルルは拳を握りしめた。

「理央、本当に大丈夫?」

「もちろん」


 その時、理央の目に奇妙なものが映った。

 ――ルルの身体に、薄い鎖のような光が巻きついている。


(……これが、理の枷か)


 理央は無意識に拳を握る。

 どこかで感じた、優しい祈りの光。

 あの夜、セラフィーナが語った「日本人に宿る祈りの力」が静かに共鳴した。


「ルル。もし限界を感じても、俺が壊す。

 鎖も、ルールも、全部だ」


 ルルは驚いたように目を見開いた。

 だが、すぐに笑みを浮かべる。

「……理央って、やっぱり変わってるね」

「逆張りだからな」


 二人は並んで森へと歩き出す。

 夜明けの光が、ゆっくりと木々を染めていった。


 ――そしてその先で、

 ルルが“限界”という名の鎖を打ち砕く瞬間が訪れる。

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