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第20話 「理に抗う剣が選んだもの」

―宿りし魂、それも理を逆さに笑う―


 夜。ルルとの模擬戦の最中。

 理央の新しい剣――デーモンコアの刃が、月光を浴びて淡く脈動していた。


「ねえ理央、その剣……なんか、呼吸してない?」

「気のせいじゃない?」

 軽く笑って構えた理央の腕に、ひやりとした風が巻きつく。

 まるで剣自身が呼吸するように、鉄が震えた。


「ルル、構えて」

「え、ちょっ……理央、それ――!」


 次の瞬間、剣が悲鳴を上げるように震え、紫黒の光が弾けた。

 地面が裂け、そこから影のような瘴気が立ちのぼる。


 ――形を持った闇。

 しなやかな肢体、長い髪、妖艶に笑う赤い瞳。


「ふふ……あぁ、やっと……解放されたのね」


 女の声。

 だが、そこに漂う気配は紛れもなく“魔族”だった。


「ルル、下がって」

「ちょっと! それ、魔族よ!?」

「うん、わかってる。初実戦、ってやつだ」


 理央が構えを取る。

 魔族の女は妖艶に微笑み、指を一つ鳴らした。

 足元の影が触手のように動き出し、理央の足を絡め取る。


「うふふ……デーモンコアを持つ者が、まさか人間とはね。愚かだわ」

「いや、愚かかどうかは……試してみないとね」


 理央が一瞬で踏み込み、影を断ち切る。

 ルルの身体強化と同時に、理央はリミットブレイクリンクを起動。

 全身が赤く光り、剣が共鳴するように唸った。


「リミットブレイク・リンク――第二段階!」


 剣が震える。

 そして刃から紫の閃光が放たれ、闇を裂いた。


 魔族の女が息を呑む。

「この力……女神の理の外……!? そんな、ありえない……!」


 理央が静かに呟く。

「“ありえない”をやるのが、俺の趣味なんだ」


 次の瞬間、光と闇がぶつかり合い、夜空を割る轟音が響く。

 戦いは一瞬だった。

 魔族は倒れ、刃の中へと光の粒となって吸い込まれていく。


 静寂。

 理央が剣を見下ろすと、刃の中に淡い光が灯っていた。

 そこから、かすかな声が聞こえた。


『……また、閉じ込められるの?』

「……いや、違う。お前が出たいなら、外に出ていい」


 その言葉に、光がふっと膨らんだ。

 そして――


 ぽんっ。


 煙の中から、小さな女の子が現れた。

 長い黒髪に、角がちょこんと生え、目はあの妖艶な魔族のまま。

 しかし身長は理央の腰くらいしかない。


「……な、なにこれ」

「ぴ……ピクシーサイズの魔族!?」とルルが目を丸くする。


 小さな魔族が頬をぷくっと膨らませた。

「こ、こんな姿イヤぁ……!」

「ごめん、出てくるときに理の干渉で縮んだんだと思う」

「なにその説明!?」


 理央は苦笑しながらしゃがみ込む。

「まあ、こういうのも悪くないでしょ?」

「むぅ……しょうがないわね。あたし、リオの使い魔になってあげる」

「え、なにその上から目線」

「だってあたし、元・魔族よ? 格が違うの」


 ルルが呆れながら笑う。

「……理央、また変なの拾ってきたね」

「うん。でも、理に抗う剣が選んだんだ。間違いではないと思う」


 新たな仲間――

 魔族の魂を宿す小さな使い魔、名は“リリス”。


 夜の静けさの中、理央の剣が柔らかく脈動していた。

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