第18話 「なろう系で見たことあるやつ」
―神聖破壊魔法誕生―
「ねぇ理央、それ本当にやるの?」
朝の神殿裏庭。ミアが、半ば呆れ顔で理央を見ていた。
「うん。ちょっと思いついたんだよね。こう、“癒しすぎたら逆に壊れる”みたいな?」
「いや何その発想!?」
「なろう系で見た。」
「出たよそれ! あなたの“なろう系で見た”シリーズ!」
セラフィーナも困ったように微笑む。
「理央様、癒しの力は神聖なる加護。暴走など、あり得ませんわ」
「あり得ない? そう言われると、試したくなるなぁ」
ルルが木剣を肩に担ぎながら、ぼそっと呟いた。
「……また“理央の逆張り病”が始まった」
「つまりだな、癒しの力って“生命を修復する”わけでしょ?」
「うん」
「で、限界を超えたら、細胞とか無理やり再生しようとして――」
理央は地面に落ちた枯葉を拾い上げた。
「――過剰修復して、バグる」
「バグる!?」
「そう。
“オーバーフロー”。
数値が限界超えて逆転する、みたいな?」
ミアが額を押さえる。
「理央、それプログラムの話でしょ!? 魔法と一緒にすんな!」
「ま、見てなって」
理央が両手を合わせ、魔力を練る。
柔らかい光がふわりと立ち上がり、掌の上で揺れる。
「癒しの理、溢れろ――《オーバーフロー》」
光が爆ぜた。
瞬間、目の前の枯葉が白く光り、煙をあげて“蒸発”する。
「え?」
ミアが固まる。
セラフィーナが目を見開いた。
「……今、枯葉が……癒された、のではなく、消滅しました!?」
「でしょ? 理論上、癒しの限界超えると、生命情報が過負荷になって“バグる”んだよ」
「いやそんな軽いノリで理壊さないで!?」
ルルが剣を突き立てて笑う。
「ははっ……理央、また世界の理を軽くぶっ壊したな」
「いや、そんなつもりはなかったんだけどな~。ただ“なろうで見たことある”だけで」
「どんな読書体験してきたのよ……」
セラフィーナは額に手を当て、天を仰いだ。
「この方……祈りを軽々と超えておられる……女神の理とは一体……」
その日以降、神殿ではこんな噂が流れる。
「ヌマアの新人、癒しで物壊したらしい」
「癒しで!?」
「しかも“なろうで見た”って言ってた」
ヌマアの人々は口をそろえて言った。
「……やっぱ日本人ってすげぇな」
日本人って凄いんです。




