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第15話 「理を繋ぐ発想」  

昼下がり。ミアの魔法練習場。

 理央は杖を握りながら、詠唱と魔力の動きを繰り返していた。

 この一か月で無詠唱の練習も安定してきたが、今日は新しい魔法を教わる日だ。


「今日教えるのは――《リミッター解除リミットブレイク》」

 ミアが両手を胸の前で組み、柔らかく微笑んだ。

「身体能力を一時的に底上げする補助魔法だよ」


 詠唱と共に、淡い蒼光が彼女の体を包む。

 空気がわずかに震え、足元の石畳が軋む。

 魔力が全身を走り抜けた瞬間――彼女の動きが目に見えない速度に変わった。


「……すげぇな」

 理央が感嘆の声を漏らす。


 しかし次の瞬間、ミアの表情が歪む。

 光が消えると同時に、彼女は片膝をつき、息を荒げた。


「これが、リミッター解除の代償。

 筋肉が微細に損傷して、体が反動で悲鳴を上げるの」


 理央は腕を組み、真剣な目でミアを見つめる。

「なるほど……それでも、戦闘中に使えば相当強くなれるな」


「……そうなんだけどね」

 ミアは苦笑しながら首を振る。

「この魔法、本当は戦士のためにあるの。

 けど、皮肉なことに――戦士は使えない」


「え?」


「“リミットブレイク”は上級魔法使いしか扱えない。

 でも、魔法使いの身体は脆いし、魔力出力も肉体補強には向かない。

 逆に、戦士は魔力操作の適性が低くて発動自体できないの」


 ミアは拳を握り、俯いた。

「女神様は“人に合った理を与えた”って言うけど、

 あたしには――“戦士にこの魔法を使わせたくなかった”ようにしか見えない」


 理央は無言でその言葉を聞いていた。

 ミアの声には、長年“理に支配されてきた者”の苦味がにじんでいた。


「……ミア、お前、理ってのを信じてるのか?」


「うん。信じてる。

 だって、女神様の理があるから、魔力も魔法も安定して存在できるんだよ。

 理が壊れたら、この世界の魔法は崩壊する」


 ミアの瞳は真っ直ぐだった。

 それは信仰でもあり、恐怖でもある。


「でもな」

 理央が静かに口を開いた。

「“理があるから存在できる”なら、“理を超えても存在できる”かもしれないだろ?」


「は……?」


「女神が“安全のために制限した”なら、

 それは“自由を奪った”ってことでもある。

 だったら――俺が代わりに自由にしてやるよ」


 ミアの眉が跳ね上がる。

「……理央くん、それ、軽々しく言っちゃいけないことだよ。

 理を超えるなんて、神への反逆だよ」


「反逆? 違うね」

 理央は口の端を上げた。

「修正だよ。“不便な世界”を、“ちゃんと使える世界”に直すだけ」


 その夜。

 理央は回復魔法の練習をしていた。

 掌に淡い光を生み、その魔力を筋肉の繊維へと流し込む。

 そのまま《リミットブレイク》の構造を重ねる――


「リミットブレイク、ヒール・リンク」


 瞬間、蒼白の光が爆ぜた。

 理央の体が軽くなり、血流が早まる。

 反動が、来ない。


 回復の流れが損傷を即座に修復している。

 理央の口元が静かに笑みに変わった。


「なるほどな。反動を“癒しで上書き”すれば……理は成り立たない、か」


 翌朝。ミアの前で再現実験。

 理央はミアの肩に触れ、呟く。


「《リミットブレイク・リンク》」


 蒼光がミアを包み、彼女の動きが軽くなった。

 そして――痛みが来ない。


「……え、これ……私にかけたの? 理央くん、そんなの、ありえない……!」


「“魔法使いは回復を使えない”って言ってたな。

 でも、俺はどっちも使えた。つまり、それは理の制約だ。

 なら、壊せばいいだけだろ?」


 ミアは震える声で呟く。

「そんなの……危険だよ。女神様の怒りを買うかもしれない」


 理央は首を横に振った。

「怒るなら勝手に怒れ。俺は誰かを壊すためじゃなく――

 “理を繋いで、救うため”に使うんだ」


 ルルがふっと笑う。

「理央、あんた本当に……逆張りの塊ね」


「おう。だって“できない”って言われたら、やりたくなるんだよ」

日本人こそ組み合わせの天才だと思ってます。

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