表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/36

第14話 「異世界転生程度では消えない 祈りの力」  

夜。教会の灯が揺れている。

 セラフィーナは理央の訓練を終えると、静かに祈りの姿勢を取った。

 理央はその横で、掌に浮かぶ淡い光を見つめていた。


 ――それは“聖光”のようでいて、まるで違っていた。

 女神の光が放つまばゆい輝きとは異なり、理央の光は静かで、優しい。

 主張せず、ただそこに在るだけ。

 それなのに、見つめるほど胸の奥が温かくなる。


「……理央さん、その光……」


 セラフィーナの声は震えていた。

 神官として何百回も“女神の聖光”を見てきた。

 だが今、目の前の光は、それとは比べものにならないほど“神聖”だった。


「あなたの光には、邪気も傲慢もありません。

 それなのに……私が今まで見たどんな聖なる光よりも、清らかに感じる」


 理央は首を傾げる。

「これが? 俺の力って、そんなすごいもんじゃねぇと思うけどな」


 セラフィーナはそっと微笑んだ。

「ええ、だからこそなのです。女神の光は“命じる光”。

 でもあなたの光は、“寄り添う光”。

 女神が与える光が上辺の輝きなら……あなたのそれは、魂そのものの祈りです」


 その夜、セラフィーナは理央を教会の奥へ案内した。

 古びた聖典庫の扉を開くと、封印された古書が並んでいる。

 その中の一冊を取り出し、彼に手渡す。


「これは、神官でも閲覧が許されない禁書の写本です。

 でも……あなたに関係がある気がして」


 理央が本を開くと、古代語でこう記されていた。


『女神の理は、祈りによって世界に根付く。

だが、祈りを拒む者ではなく、“祈らずとも他者を思う民”が現れた。

彼らの祈りは言葉を持たず、形を持たず、ただ優しさとして世界に残った。

その民を、理は捉えられなかった。』


「……これって」

「ええ。かつて、女神の理が届かなかった民族の記録です。

 その民は祈りを言葉にせず、神を讃えず、ただ人を想った。

 そしてその“想い”だけが、異界を越えて魂に刻まれたと書かれています」


 理央は静かに息をのんだ。

 胸の奥が、不思議なほどに温かく満たされていく。


「つまり、その“想い”が……俺たち日本人に残ってるってことか」


 セラフィーナはゆっくりとうなずく。

「女神の理は“祈り”を介して支配します。

 でもあなたたちの祈りは、支配のためではなく、共に在るための祈り。

 だから女神の理はあなたたちを縛れない。

 あなたたちの魂は、異世界転生程度では消えない“祈り”に包まれているのです」


 理央は空を見上げる。

 この世界の月は日本よりも少し青く、どこか懐かしい光をしていた。


「なるほどな。だから俺の光は、女神のやつと違うのか」

「ええ。あなたの中に宿るのは、“願い”ではなく、“想い”。

 それは女神の光よりも、ずっと――神聖です」


 セラフィーナの声には、わずかに涙が混じっていた。


「女神の光は命じ、従わせる。

 でも、あなたの光は寄り添い、包み込む。

 それこそが……本当の祈りなのかもしれません」


 理央は微笑んだ。

「……俺たち日本人って、結構すごいじゃん」

「ええ、本当に」


 そして理央はいつもの調子で肩をすくめる。

「けどまぁ、祈りがどうとか難しい話は置いといて――

 女神の理がそう来るなら、俺は逆張りするだけだ」


 その言葉に、セラフィーナは思わず笑ってしまった。

 笑いながら、心の奥でひとつの確信を得る。


 ――この少年の中に宿る光こそ、真に“神聖”なもの。

 それは、異世界転生などでは消えぬ、

 優しく、強く、静かなる“祈りの力”。

これは物語でなく、現実日本人には皆アノ人の祈りの力が宿ってます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ