④フェイのいる生活
フェイを買ってから数日間の話です。
この物語を楽しんでいただければ幸いです!
フェイという奴隷を買ってきたワタル
ベッドが小さいので1つのベッドに二人で寝たのだが
朝起きるとベッドで寝ていたフェイは床で寝ていたのだった。
ベッドが狭いから落ちたのだろうか
それとも俺の寝相が悪かったのか
様々な理由を考えながらもフェイは美味しいご飯を作ってくれる
家事も頑張ってこなしてくれる。
おかげで俺は剣術と魔法の基礎を学び終える事ができた。
この世界のスキル登録というのは単純で
まずは基礎スキルを習得した後に
特定の行動をパターンを【スキル】としてセットするだけ
複雑なものをセットすることも可能だが、
本人の能力が足りていなければスキルとして発動はできないらしい
なので、これからは基礎スキルを組み合わせたりして
自分にとって必要なスキルをオリジナルで作り続けなければならないらしい。
例えば、基礎スキルの縦斬りに炎魔法を合わせる事で
炎属性の縦斬りにするといった形のスキルを設定する事は誰にでも可能だが
実際の戦闘で使用できるかどうかは本人の能力次第という感じだ
俺は一度冒険者ギルドへ戻り、Cランクのクエストを受注
その際に冒険者ギルドの受付から
「新人さんが調子乗ってCランクのクエストに行くと死にますからね!」
と強めに忠告をされたので
間違いなくDランクよりは敵が格段に強いということだろう。
敵の動きを実践の中で学びつつその中で必要なスキルを設定する事にした。
今回はクエストの討伐対象はゴーレムだ。
動きは遅いが、攻撃力がかなり高いようで
様子を見ながら攻撃の回避に専念してまずは回避を学んでいく
次に回避ができなかった時のために攻撃を受け流す方法を学ぶ
そしてゴーレムの動きに合わせて必要な動きの攻撃を
1つずつスキルとして登録していく
元々この世界で冒険者として生きていけるように育った者は
子供の頃から徐々にスキルを増やしていくのだが
そもそも俺は1からセットしている状態だからこそ
戦闘においてはスキルの引き出しがとにかく少ない。
しばらくは一人でCランクの魔物を相手に
魔物の攻撃を回避する知識を学びつつ、
相手に合わせた攻撃スキルをセットし続ける日が続いた
フェイを買ってから3日目
相変わらずフェイは夜は確かに同じベッドで寝ていても
朝には必ず床で寝ている状態だった。
さすがに2日連続でそのような状態だったので
3日目の夜は寝たフリをしてしばらく待っていると・・・
「ごめんなさいご主人様・・・フェイにこんな贅沢は・・・」と一言残し
ベッドから出て床で寝てしまった。
だがこの日はかなり冷え込んだため翌日にフェイは体調を崩した。
朝から体調の悪いフェイは足取りがおぼつかない
俺の目から見ても体調不調は一目瞭然だったので
フェイに家事や料理を止めさせて、ベッドで休むように伝えたが
「こ、これくらい何でもないですから・・・!」と強がるので
「ベッドで休め」と命令すると、耳を垂らして従った。
夕方には体調が良くなったが、それでも家事はやらせなかった。
そして、フェイになぜ床で寝るのかを聞いてみた。
実際に俺は夜中にフェイが言っているのを聞いているのだが
フェイ自身から俺に話させようと思った。
「なぁ、フェイは俺のことはやっぱり嫌いか?」
「そんなことないです!!だ、大好きですよ///」
「(ストレートに言うなぁ・・・///)じゃあどうして夜は一緒に寝たのに朝には床で寝てるんだ?」
「それは・・・奴隷のフェイがご主人様の布団で一緒に寝るなんて・・・
そんなご褒美もらえるほどフェイは頑張れていないから・・・」
「本当にそれだけ?」
「はい・・・だって、服を買って貰ったご褒美の分だってまだ頑張れてないですし・・・」
「いや、あれは・・・」
と言葉にしようと思ったのだが
そもそもこの世界の常識は現実の常識とは違う事を思い出す。
多くの家庭で獣人族の奴隷が家の中で家事をしいているような世界だ
ある意味ではフェイが語っている事こそがこの世界の奴隷の常識なのだろう。
かといって体調を崩されてしまっても困るというもので・・・
うーん・・・と悩んで今回は少し強行作戦で行くことにした。
「フェイ、体調崩したら家事も料理もできないよ?」
「だ、大丈夫です!ちゃんと家事も料理も頑張りますから!」
「でも体調崩したら良くなるまでベッドで休んでもらうよ?
だから体調崩したら家事も料理もできないよ?」
「うぅ・・・で、でも・・・」
「次床で寝てたら捨てちゃうよ?」
「い、嫌・・・お願いご主人様・・・フェイのこと捨てないで・・・」
「じゃあちゃんとベッドで一緒に寝るんだよ?」
「は、はい!」
その後にフェイから語られたのは
フェイは長年売れ残っていた獣人族の奴隷だった。
主人に仕える事に幸福を感じるにも関わらず
今まで誰にも仕える事ができないまま売れ残っていたことで
フェイ自身も私は誰にも買ってもらえないと考えていたこと。
そこでようやく自分を買ってくれる人が現れたからこそ
"この人に捨てられたら絶対に次は無い"と思っていた
だからこそ良い子でいたい。頑張って役に立ちたいと思っていたようだ。
・・・俺も長年売れ残ってたというのは奴隷商人から聞いていたし
冒険者ギルドでこの世界の種族を学ぶ際に、獣人族の事も学んだので
主人に仕える事に幸福を感じる種族が長年檻の中に・・・という点から見ても
多分そうじゃないかなぁとは薄々感づいてはいた。
が、あえてフェイに語らせる事にしたのだ。ごめんねフェイw
その日もフェイと一緒にベッドで寝たが
この日からフェイが床で寝ることはなくなった。
それから約3ヶ月
あれからCランクの魔物でみっちりスキルを設定し
冒険者ライセンスもBランクに上昇
何よりCランクでみっちり基礎の基礎から学んできたので
Bランクの魔物も苦にしない状態となった。
住まいもギルドの簡易宿屋から王都の一角の小さな家を借りている
2人で寝ているとはいえ流石にベッドが小さいし
流石に報酬も良くなってきたし、
いつまでも簡易宿屋というわけにもいかなかったというのもあった。
フェイは朝まで一緒の布団で寝る日から格段に笑顔が増えた
俺はフェイに対して"自身が勇者としてこの世界に転移してきた事"を伝えていない
そのためフェイは俺の言う事がこの世界の常識から外れていると
たまに疑問に思ったり頭をかしげたりする事も何度かあった。
特にフェイが疑問を感じたのが奴隷に対する態度や考え方の違いだった。
獣人族は特に数が多いからこそ、悪く言えば使い捨てのような扱いを受ける事もある。
床で寝るのが当たり前であったり、服を与えて貰えない奴隷もいたりする。
だが俺は服を着せて一緒の布団で寝ることが当然のような考え方をしている。
しかしフェイは捨てられたくないと思っているせいなのか
「私のご主人様はそういう考えの方なのだ」と思ってくれたようで
この世界の常識は教えてもらいつつもフェイは俺の考えに従ってくれた。
そこで調子に乗った俺は1つフェイに教えてみたのだ。
帰宅するとフェイは玄関まで出迎えてくれるのだが・・・
「そこは『おかえりなさい!』って言って抱きつくんだよw」と言ってみる
言われた通りに抱きついて、顔をスリスリしてくる
流石に嫌々やってくれてるかなぁ・・・とも思ったのだが
尻尾を見ると感情がバレバレだったので良しとした
数日後
俺は玄関でフェイと話している
「それじゃ3日間 家のことはお願いね」
「任せてください!」
俺は遠征クエストに出発した。
読んでくれてありがとうございます。
以下ちょっと補足です。。
・フェイに関して
好感度はフェイに限らず獣人族は最初から高いです。
・Cランクのクエストで3ヶ月の間
剣術や魔法を徹底的にスキル設定する期間ですが
ずっとCランクのクエストをやり続けているわけではないです
フェイと日常を満喫したり
久しぶりにEランクのクエストを受注して
街中を歩いて会話を楽しんだりもしてます。
・王都の一角の家を借りてる状態とは
アパートもありますが
主人公は一軒家の賃貸みたいなものに住んでます