②初めてのDランククエスト
Eランクのクエストをこなしつつ
この世界の事を少しずつ学んでいくパートです。
この物語を楽しんでいただければ幸いです。
前回冒険者ギルドで冒険者として登録し
Eランクの冒険者となったワタルだったが
この街の事がさっぱりわからないので
Eランクのクエストを3つ受注して、街中を歩き回り
地図を頭に入れる事を最初の目標とした。
地図を見ながら目的地へ向かうのだが
道を間違えたのか思った場所へとなかなか向かうことができない
途中で散歩中のドワーフのお婆さんに聞いてみると
ご丁寧に道を教えてもらったりしながら
目的地へと到着
依頼自体はものの5分で終わるような内容だ。
最初のクエストはタンスの裏に落ちた写真を拾うというものだった。
次のクエストは庭にある鉢植えを屋内にしまってほしいというもの
このくらいのクエスト内容なら5個くらいまとめて受注しても問題ないな
というのが正直な感想だった。
だが内容は楽なのだが、現地に到達するまでが遥かに大変だった。
初日は5つほどEランクのクエストを完了
ギルドが用意した簡易宿に帰る
晩ご飯を作り、少し掃除をして小さなベッドで眠りにつく
朝起きたらまた冒険者ギルドへ向かい
昨日と同様にEランクのクエストを受注
冒険者ギルドの受付も「またEランクのクエスト3つですか?」
と言ってきたので、「えぇ、Eランクのクエストで街を覚えようかなと思って」と返す
「なるほど!」と受付が笑って昨日とは違うEランクのクエストを3つ用意してくれた。
一週間ほどEランクのクエストを完了させ続けてこの街の地図は覚えられた。
顔見知りのドワーフのお婆さんや、
気さくな八百屋のオークのおじさんとも仲良くなった。
Eランクのクエストをこなしながら冒険者ギルドでも話を聞いて
いろいろ学んだ事をまとめてみた。
【この街で暮らしている種族】
オーク
巨体を活かして力仕事しているのをよく見かけたが
普通に八百屋を営んでいるようなオークも少ないが見かけた。
また戦士のような戦闘スタイルで戦う冒険者も多いようだ
エルフ
その美貌から様々な店で働いているのを見かけたが
薬品を配合して販売している店でも見かけた。
弓を使う者が多いようだが
冒険者ギルドには短刀を使うエルフも少ないが見かけた。
ドワーフ
冒険者ギルドの中ではほとんど見かけないのだが
街に出るとアクセサリーを販売している商人の大半がドワーフだった。
おそらく装飾品の加工に優れているのかもしれない
獣人族
とにかく数が多い
冒険者ギルドで聞いた話だと
獣人族はどの種族とも交配ができるが
生まれてくるのは必ず獣人族になるらしい
主人に仕える事を幸福とし、従順でよく働くため
この世界では地位が低く奴隷として扱われている事が多い
もちろん普通に働いている獣人族もいるのだが
どこの家庭にも奴隷の獣人族がいて
家事や料理などを手伝ってくれているようだ。
奴隷自身は主人の役に立てて喜んでいるらしい。
扱いは家主の自由なのだが家主以外が奴隷に手を出すと打首になる
そのため、家主次第では雑な扱いをされている奴隷も見かけたが
本人は主人に仕えているので幸福だそうだ。本当にそうなのだろうか
人間
あまり見かけないのだが、
実は前の勇者の子孫達らしい
勇者が人間だったため
勇者の力を引き継いでいるのではと期待されていたが
誰一人として勇者の力を引き継いだ者はいなかったようで
そのせいか"ただ数の少ない種族"と認識されているらしい
とりあえず種族に関してはかなり学ぶことができた。
しかし1週間も経つと冒険者ギルドでも俺は少し噂になった。
「いつまでもEランクのクエストをやってる人間がいる」という残念な意味でだ。
現状俺はEランクの冒険者であるから
Eランクのクエストをこなすべきだろうと思っていた。
そしてゲームでよくあるパターンとしては、
ある程度Eランクのクエストを完了させることで
冒険者のランクが上がるような依頼が発生したりするものなのだ。
だが、そういった予兆は何も無い。
そして噂を耳にしたのか冒険者ギルドの受付が声をかけてくる
「ワタルさんはDランクのクエストはやらないんですか?」
「いや、俺まだEランクの冒険者なんで・・・」
「DランクのクエストはEランクの冒険者でも受注できますよ?」
「・・・え、そうなの?」
そうだったらしい
だからいつまでもEランクのクエストをやってると噂になっていたのか・・・
「あれ、説明しませんでしたっけ?」
「いや・・・聞いてないですね」
「説明し忘れたかもしれませんね!Dランクのクエストを受注されますか?」
「お願いします」
ちょっとイラッときたけど説明し忘れる事もあるか と
むしろ街の外に出る依頼なので、ワクワクもしていたので
説明が無かった事はすぐに気にならなくなった。
今回の依頼内容はスライム1匹の討伐だ
この世界に来て初めての戦闘となる。
目的地に到着すると水色のスライムが確かに存在していた。
現実世界から転移させられた俺はスライムなんて初めて見る存在だ。
正面から戦っても良いのかもしれないが・・・
どういった攻撃をしてくるのかも予想ができない
もしかしたらクリオネのバッカルコーンみたいな攻撃をしてくるのかも・・・
いろいろ予想をしつつ、俺は近くの木の影から様子を見ることにした。
特に何をするわけでもなく、体をぷるぷる揺らして移動するスライム
少し移動して、また体をぷるぷる揺らす
もはや前を向いているのかすらわからない
そこで、転移した際に用意されていた剣を抜く
だがいきなり接近戦は流石に俺も何をされるかわからないので慎重にいく
まずは足元にあった石を投げて様子を見ることにした
投げた石がスライムに当たった瞬間に
クエストクリア
「・・・え?」
正直意味がわからなかったが
一度冒険者ギルドに戻ってクエスト完了報告をする
再度Dランクのクエストを2つ受注して街の外へ向かう
今度は2つとも街の外でゴブリンを倒すクエストだ。
さっきの石は当たりどころが悪かったのかもしれない
そう思い、今度は手や足を狙って投げてみる
クエストクリア
そしてもう片方も石を投げると
クエストクリア
もはや何が起きているのかわからなかった。
実はこれ、俺自身は気付いていないのだが
勇者として召喚されたから強いのではなく
現実の人間がこの世界に来ると強く見えるというだけだった。
つまり、この世界が弱すぎるというだけだ
この世界に転移させられた際に
現実の能力がそのままこの世界の能力に合わせられる効果自体はあるが
この世界に元々住む人や魔物は、現実世界の人間の能力に置き換えると1/10ほどしか無い
そして前の勇者が強かった理由も
元々は現実の人間を転移させた者だったから強かった。
この世界から見れば強く見えたというだけの話であった。
そして石を投げた際には「投擲スキル」として認識されたせいで
石でもスライムやゴブリンを倒すことができたようなのだ。
これもこの時は本人が気付くことは無かった。
その反面、剣では何度斬っても倒すことができなかったのだ。
困ると足元の石に頼る 何とも複雑な気分である。
腰に剣をぶら下げているというのに、現状ではまるで使い物にならないのは気分的に辛い
俺だって剣や魔法の一つくらい撃ってみたいものだ
こうなると剣で敵を倒せなかった理由を知りたくなるものだ。
クエストはクリアしたのだが何とも悔しい思いをしたので
Dランクのクエストクリアの報告をした後に
俺は一度、剣術と魔法の基本を学ぶことにした。
読んでくれてありがとうございます。
以下ちょっと補足です。
・Eランクのクエスト中
端折ってますが、ここで仲良くなるキャラもいますし、よく通る道では雑談してたりもします。
その辺りは想像にお任せしてます。
・主人公の強さ
現実の身体能力をベースにこの世界の能力に当てはめられているので
自分が強くなったような実感はありません。
なので最初は魔物相手にビビります。