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選定都市

 選定都市ビアスは帝国と王国の間に存在する港を持つ街である。ビアスの特徴は分厚い壁で外と内を分けているところだ。最も、城塞と分厚い城壁をも持つこの都市を単なる町として扱ってよいかは不明である。外では市民権を持たない貧しい民が露店を開き、いくつものスラムを形成している。スラムの大きさは内の三倍もあり、外側だけで大きな経済圏を形成している。内はこの町を収める選定商人達や市民権を持つ市民達が暮らしている。また、港には多くの船が停泊しており、王国や帝国、果ては違う大陸を目指して航海をしているようだ。輸入された商品がそのまま売られることもあるので、商店街ではよく珍しいものが売られている。ある店では今、ドワーフの国で作られた腕輪を買うか迷っている青年がいる。


そんな青年がハッと何かに気が付いたように道を開ける。露天商達も目を合わせないようにそっぽを向く。その者は鍛え上げ、日焼けした体に何種類もの宝石を身にまとい、すべての指にはかが行く指輪をはめている。その後には屈強な傭兵崩れの護衛が崩れかけた整列でついていく。彼らは高級住宅が並ぶ中心街の中でも、最も大きな邸宅の門をくぐり、入っていく。


「さっきの宝石売りの女、可愛くなったか?、ちょっと後でみにいかねえか。」


「いいぜ、可愛がってやろうぜ、でも前見たいに可愛がりすぎには注意しないとな、ハハハハハっ!!」


「かわいがるのもいいが、ほどほどにしとけよ。そいつも俺様の大切な納税者の内の一人なんだからな。それとわかってると思うが、足はつけるなよ。俺の評判に疵をつけると、わあかってるよな?」


そんな下卑た笑いと話をする傭兵たちも、雇い主である選定商人であるザークの鶴の声で静かになるのだ。ザークはこの町に三人しかいない選定商人の一人である。対立してきた商人は今まで脅迫、殺人、打ちこわし、どんな手を使おうと消してきた。更に売っている商品も武器関係であるのもあり、”死の商人”と恐れられていた。だが、そんな二つ名はむしろ仕事をする上でも、色々と便利である。商売敵は恐れてその業界から次ぐ次と撤退するし、道を歩くと、自然に皆、道を開けてくれる。かつて外のスラム外で生活していた、人目を気にして生きてきたころとは対比され、常に己の中で満たされている気がする。


彼の最近の悩みは金の使い道である。金をしこたま稼いできたのはいいが、使って減っていく額に反比例するように、自分の身が切られていくような気がする。そのため、毎日金庫にある大量の金貨を詰めた風呂に入ってから、それをまき散らす事で、自分のけち臭さの憂さを晴らして、一枚残らず正確に数えて、戻す事がすっかり日課になってしまった。






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