日常
最近、釣りにはまっている。転生前は何が面白いんだろうと感じていたが、やってみると意外と面白い。いや、それは片付けとか準備とかメンドクサイ事をすべて、部下がやってくれているからかもしれないなぁ。てかなんで俺、釣りしてるんだろう。でもよく考えてみると、そもそもゲームや漫画も当然のごとくあるはずがなく、今俺が出来るのは周囲にある海を有効活用する釣りぐらいしかない気もする。
ノエル達に命令を下して、早3日が経過した。そこからこの周りの海域にはあまり強い生物が存在していないことと、天空城を包む霧がかなり広範囲にわたっている事が分かってきた。そのため、遠征はまだ終わりが見えないし、城内の整備は整備でノエルがやけけに張り切っており、なにか親衛隊のようなものが俺につけられた。そこから先はいつもこまめに報告が来るが、報告が難しすぎてよくわからないので、もう「うむ」か「そうせい」としか言えなくなってしまった。
てか、一般サラリーマンに軍事とか政治が出来るはずがない。そして、これは俺が悪いんじゃないよぁ、と責任を何かに転嫁し、迫りくる先の不安と周囲からの期待に対して、今日も心の健康を保っている。そんなわけで俺は天空城の崖に腰かけ、今日も絶賛釣りをしている。釣り竿に関しては欲しいなぁと呟いてたら、しばらくして持ってきてくれた。恐らく、この城にはそんなものがあるはずないので、鍛冶師に作らせたに違いない。また労っておかねば。褒美もまた考えておかないと....。
今日のつれたものは、名前はよくわからないが、全部でマグロと大王イカのようなものが10匹ほど釣れた。初日は何もつれなかったけど、二日目、三日目からどういうわけかめちゃくちゃ釣れ始めた。でも不思議なのが「~が釣りたいなぁ」と部下と話してると、それが5分後ぐらいに釣れる事がよくある。そう思うと、部下の中に、釣りに対して運、引きがめっちゃいいやつがいるのかもしれない。
でも、現時点、唯一の趣味である釣りで、最もつらいのは、釣れた後に必ず親衛隊が拍手して褒めてくることである。いちいち、一回一回、拍手して褒めてくるが、最初は良かった。うれしかった。でもそれが毎回、毎日続くとさすがに嫌になってくるし、逆にバカにされているような気さえしてくる。かと言いて、部下が折角、善意で行っているのを腹が立つからやめろと言うのも、ちょっとなぁ。
ちなみに釣れた魚は、いつも夕食に美味しく調理されて出されるのがお決まりになっている。天使は原則食事の必要が一切ないが、味覚を感じる事が出来るので、こまめにとるようにしている。最初はとらなくて便利だと感じていたが、今ではこの味覚を感じるという事は、俺がかつて人間であった事を思い出させてくれる大切な要素になっている。でもそう思っているのは俺だけのようで、調理室、食堂はは存在するが、他の天使が食べているのを見たことがない。やはり生まれついての生粋の天使は一味違うな。