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無題

「それで、この聞いた情報は確かなのだな?、断っておくが、嘘は許されぬぞ。」


「そんな、神(ノア様)に誓って嘘はございませぬ。もし、心配されるなら、我らサンクタ村の村人全員の首を差し出しまして、我らの潔白を証明しとうございます」


そういって、村長は静かに平伏する。その言葉に、ノエルはオレの顔を伺い、オレが頷くことを確認して、


「よかろう、お前の言葉を信用しよう。では下がるがよい」


と下がらせる。村長が退出し、扉は閉まり、静かな沈黙が流れる。そう、オレの命令を待っているのだ。

そんなことはわかっている。オレは思案を続けているフリをするため、目を閉じ、玉座にもたれかかった。


状況を整理しよう。オレ達は、侵攻(洗脳)を怒涛の勢いで進め、あっという間に、王都の目と鼻の先まで迫ったのである。だが、村はすべて洗脳してあるから、王都にこの侵攻は気付かれていない。


そこまではいい。だが、そこからだ。


問題は王都の兵力が具体的にわからないことだ。話に聞いた限りでは、恐らく村人にすこし毛の生えた程度かもしれない。だが、敵はなにか切り札を持っているかもしれない。大体ゲームでもそうだった。敵国の滅亡前に、秘宝が発動したり、宗教国家では守護神が発生したりすることがある。今回ならば、王都ソルディアはかなり歴史ある王朝な事から、最悪の場合、強力なガーディアンや何等かのアーティファクトが発動することがあるかもしれない。力技で攻めることはあまりにも危険だ。だが、かといってオレのユニークスキル「洗脳」を発動させることもかなり難しい。このスキルは、いくつかの発動条件があるが、

その中でも達成が難しい条件、(エモーショナル・キャパシティ)を超えること、つまり、民の恐怖・不安・期待などの感情が一定値を越えると効果が発動する、がある。今までは、村だからそのエモーショナル・キャパシティが低いことに目をつけ、一気に使徒たちと出陣し、威圧感を出し、不安や恐怖を誘発させ、エモーショナル・キャパシティをあふれさせていたが、それが国ともなると、設定値がかなり高く、難しいのである。


どうしたものか。


目を閉じ、意識を沈めながら思考を巡らせる。

力攻めは危険、洗脳も現段階では不可能……ならば、次に取るべき手は一つしかない。


「――潜入だな」


低く呟いた声に、場がわずかに震えた。すぐさま、ノエルが静かに身を乗り出す。


「潜入……でございますか?」


「ああ。王都ソルディアが何を抱えているか、まだ何も知らなさすぎる。アーティファクトや秘宝、あるいは歴史の闇に眠る守護者がいる可能性は高い。王都の内部を調べ、必要なら奪う。そして同時に、他国の動向も把握せねばならぬ」


「他国……」と、第一使徒フィンが小声で繰り返す。「確かに、村人から得られる情報はほとんど断片ばかり。王都の外の大国や連合のことなど、まるで霧の中です」


「その霧を晴らさねばならぬ」

俺は玉座から身を起こし、顎に手を添えながら、さもそれっぽいことを言う。我ながら、王という役職もなかなか板についてきたかもしれないと、一瞬違うことを考えてしまったが、頭を振り、また、王っぽい喋り方と言葉を選んで大げさに、髭も生えてい顎をさそりつつ、


「王都の中には、必ず記録庫や学舎がある。公にはされていないが、古代の伝承や軍事情報、周辺諸国の地理などが眠っているはずだ。そこを探り出す」


と言葉を続ける。


「軍を待機させる必要はない」

俺はそう言い切った。


「兵を大軍として動かせば、さすがに王都も気づく。だが、使徒であれば話は別だ。数名で潜入し、影のように動けば、どれほどの警戒網でも目をすり抜けられる。」


「では、潜入する者を決める」

俺がそう口を開いた瞬間、空気がぴんと張りつめる。


最初に一歩踏み出したのはノエルだった。

「当然、私が行きます。ノア様のお傍を離れるなど、ありえません」

銀髪を揺らし、毅然とした声で言い放つ。


すかさずフィンが眉をひそめる。

「……ノエル、あなたは少し出しゃばりすぎだ。潜入は探索能力が要だろう。ならば、僕こそ適任じゃないか」


「探索? それがどうしたのです。私の魔法は万能。いかなる危険を前にしたときでも、その場に応じて適切な魔法を仕えるのは私しかいません」

ノエルの声にかすかな震え、それはこれから更にノア様の役に立てるという感情を感じて、が混じる。


「探索だなんて……それは僕の役割だ!」

フィンの鋭い言葉に、場の空気がきしむ。


そのやり取りを、ルークが苦々しく見守っていた。やがて大きく息を吐き、口を開く。

「……ノエルの言う通りだ。潜入は危険だ。だが、だからこそノエルが行くべきだと思う」


フィンが振り返り、驚いた顔をする。

「ルーク、君まで……!」


ルークは目を逸らし、心の奥で小さく呟いた。

(……約束だからな。あの時の警備の失敗を庇ってくれた礼は、一か月ノエルの発言を支持すること――そう誓ったのだ)


コニーが慌てて割り込む。あの失敗ですっかり自信を無くしてしまったのか、オドオドと

「あ、あの、私も行ったほうが……」


と発言するが、しかしノエルが冷ややかに言い放った。

「あなたはここに残りなさい。知恵役の務めは、情報の整理と後方支援でしょう?」


サーシャは静かに見守るだけだった。彼女は争いに関わることを避けるように、そっと視線を落とした。


ヒューは腕を組んだまま低く言う。

「俺は軍を守る。潜入の仕事ではない」


そのギスギスした雰囲気に嫌気がさしたオレは、


「もうよい」

俺は軽く手を振った。その一言に、使徒達全員が、息を呑むように口をつぐむ。


「お前たちの言い分は理解した。だが、俺の前で争うなど、愚かな真似は二度とするな。お前たちは俺の剣であり、盾である。互いに刃を向けるものではない」


静寂が広間を支配する。ノエルは悔しげに唇を噛み、フィンは視線を逸らした。


俺は続ける。

「今回の潜入には、フィンの探索能力が必要不可欠だ。そして、不測の事態に備え、ノエルが同行せよ。護衛にはルーク。三名で行け」


決定を告げると同時に、三人は胸に手を当てて頭を垂れた。だが、それとは裏腹に、それぞれの心中は嵐のように渦巻いていることなど、オレには微塵も気づけなかった。


ノエルは「ノア様に選ばれた」という喜びに酔い、フィンは「やはりノエルが邪魔だ」と唇を噛み、ルークは「この自分の判断が正しかったのか、しかし、約束は約束.....」と苦く胸中を押し隠している。

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