草原で
この世界での最初の目覚めは唯何も考えずにゆっくりと目を開けたことであった。周りにいるよくわからないが見慣れた気がする人達が騒いでいたことも、俺の周りを人が取り囲んでいた事も、俺の顔を太陽が照らしていた事も何もかも俺の目覚めの原因とはなりえなかった。
本当に本当に唯、朝自然に目が覚めるように覚めたのだ。ただそれだけであった。目を開けると、俺は朦朧とする意識のなかで、周囲が自分が見慣れた光景でないことに、一瞬心臓がドキッとした。なぜなら俺の周りをたくさんの白い人が囲っていたからだ。頭をぶつけた事は覚えているので、救急隊員に介抱されていたのかと思い、すぐに体を起こして周囲を確認するとともに礼を言おうとすると、周りから
「目を覚まされたぞ」
という大きな声が聞こえ、周りにいた人が一斉に跪き、一番近くにいた人に
「ご容態はいかかでしょうか?」
と聞かれたので、
「大丈夫です」
と言おうとすると、まだ体が覚醒しきっていないのか、口がうまく動かず、もごもごと
「大sdf夫」
というよくわからない言葉を喋ってしまった。恥ずかしくて穴に入りたいと思っていると、しばらくの静寂の後に、先の男?が
「それは何よりでございます」
と少し震えながら答えた。笑っているのかと不愉快になりながら、ジトっと眺めていると、男はまた震えながら
「我々はいかがすればよいでしょうか、何なりとご命令くださいませ」
いうと深く頭を下げた。その瞬間俺は頭が真っ白になった。こいつは何を言ってるんだろうか。こいつも頭を打ったのだろうか。そう思ってまじまじと相手を見ると、そいつは人間ではなかった。頭に輪があり、白い衣を身にまとっていた。よく考えれば太陽がまぶしいせいで、相手をよく見ていなかった。しかも何故気が付かなかったのだろうか。こいつは俺が部屋に飾っていた天使軍団の軍団長ノエルではないか。顔は見えなくても、よく見るとわかるこの肩の筋肉、薄ピンク色の輪、真っ白の羽、耳から下がる東洋風のイヤリング、すべて俺が毎日愛でていたノエルにピッタリである。思わず、
「ノエル」
と言ってしまった。その瞬間、その瞬間、男は顔をあげ
「ハハッ、如何されました」
と答えた。何もないと言うと、また、頭を下げたが、これで直観的に理解をした。俺はよくわからん世界に頭をぶつけて俺の部屋に飾っている天使軍団と転生したのだと。なら、俺は一体何者なんだ。そうおもうより早く自分の白と黒のが入り混じった色の手が見えた。この色は。わかる。そう見なくても。
そう、この色の手を持つのは、ノアだ。ノアしかいない。未知の体験に対する恐怖、驚きよりも激しい喜びが沸き上がった。心の中で何回も神様に礼を言った。
しばらくして、落ち着いてから、いや体感十分以上が過ぎているが、周りをゆっくりと見渡した。改め見ると、周りにいる天使が俺に対して従っているのだと確認するまでもなく、わかる、いや体に刻まれている感覚だ。
しかし、ここは一体どこなのだろう。俺が集めていた天使軍団、正しい呼び名はエリュシオンに住まう天使たちであるが、長いのでそう呼んでいるだけだが、設定では空に浮かぶ天空城に住んでいたはずだ。