会議2
玉座の間に集う使徒たちを見渡し、俺は重く口を開いた。
「よくぞ参じた。これより緊急会議を始める。まず最重要課題、発見された村への対応だ。だがその前に問う――村や付近に我らを監視する気配、あるいは不穏な動きがあったか?」
ノエルが答えようとした刹那、コニーが中央に進み出る。
「遠征隊の指揮を執るコニーがお答えいたします。現時点、主君の懸念に関わる異常動作、敵対勢力の気配は一切確認できておりません。なお、村を監視中の部隊には使徒筆頭の空間断絶を施し、探知系魔法でも発見困難と存じます」
コニーの翼がかすかに震え、遠征隊報告の成果を喜ぶ様子が見えた。俺は気怠げな表情を浮かべつつ、声を引き締める。
「上々だ。ただし慢心は禁物、警戒を緩めるな。それでは、村の様子を報告せよ」
再びノエルが口を開く前に、コニーが続ける。
「村の沿岸部を遠望したところ、有力者と見られる者は確認できませんでした。男性は農作業に従事し、女性は家事や家畜の世話に勤しんでおります。文明水準は低く、我ら歩天使(※注:一般天使)にも劣ると考えられます。攻撃準備は整えておりますが、主君の御意を仰ぎますか?」
コニーの口調には慎重さよりも自信が漂い、ノエルの顔色がわずかに険しくなるのを俺は見逃さない。深呼吸して言葉を選ぶ。
「甘い。コニー、お前は自己の探知能力を過信しすぎている。可能性は無限大だ――強者かもしれぬ相手を、拙速に断じてはならぬ」
コニーは驚きの表情から、真っ赤な顔で頭を垂れた。
「申し訳ありません。私の愚見に過信がありました……」
そこまで謝る必要はないと心の中で思いながらも、王としての寛容を示す。
「よかろう。だが、このままでは情報が不足する。誰か秘かに、村の者を一人攫い、天空城にて尋問せよ。意を決して答えよ、ヒュー」
第六使徒ヒューが一歩前へ。
「主君の采配、畏れ多くも否とは申しません。もし対象を得た際には、私が確実に情報を引き出しましょう」
その返答に、会場は静かな肯定の空気に包まれた。
「よし、作戦はこれで決定だ。ノエル、お前に総指揮を任ずる。速やかに準備を整え、行動に移せ」
七人の使徒は一致団結の頷きを返し、玉座の間は切迫した緊張感のまま、その幕を閉じた。