発見
静寂を破る、冷ややかな声だった。
「報告いたします。遠征隊が未知の大陸と沿岸部に村を発見いたしました」
その一言で、俺の午後は夜明けのように開かれた。遠征を命じてから丸ひと月――海の霧を越え、ようやく大陸の影を捕らえたらしい。だが、玉座の間ではなく俺の居室で聞かされたこの報告が、怠惰に侵された脳髄を一瞬だけ覚醒させる。
(まったく……一か月も放置しておいて、それを真っ先にここで伝えるか?)
最初の緊張と使命感は、今や思い出の砂に埋もれた。規律と威厳を装って一週間、俺はすぐに堕落した。夜更かし、金貨風呂、定期会議の欠席――すべてが楽で、すべてが側近の手厚い奉仕のおかげだった。
(さて……どう返事しようか)
かつてのゲームでは、大陸を征服するのが目的だった。しかし目の前の村人が我らより強大だったら? 想像するだけで背筋が凍る。だが、彼らの出方を待つのも戦略の一つ。“攻撃は最大の防御”というしな。
俺は気だるげに体を起こし、側近へ声をかけた。
「聞け。各使徒に告げよ。──一時間後、会議の間で緊急会議を開く。必ず出席せよ。大陸については引き続き監視を行い、手出し無用。その間の指揮系統は第一隊副使徒に委ねる」
側近は深く一礼し、すぐさま去っていった。
(……これでいい。だが、俺自身が何を言うか、まだ決めていないんだよな)
窓外の霧は相変わらず厚く垂れ込め、未知への期待と不安が混じり合う。その呟きすら、自分で聞き取れないほど微かだった。